魔物の襲撃
ザクスが11歳の時、村に事件が起こった。
ローレム村の周辺では生息していない魔物。村の者も警備隊の者も見たことがない魔物が、村を襲った。
襲った魔物は1匹だった。
オオカミのような体躯をもち、口からは紫の息を吐き、尾は先半分が燃えていた。
その魔物は突然村にやってきて、警備隊を襲い、村の中に入って、老若男女の別なく数人を襲って食べて、被害を与えた。
1日目は警備隊の対応では倒すことも追い払うこともできなかった。
2日目の午前中は有効な手を打てず、被害がさらに増え、魔物を追い出せなかった。しかし昼過ぎから、村の中に異様な臭いが漂い始め、その臭いをかいだ魔物はくしゃみのような仕草をし、臭いを嫌ったかのように魔物が走り回った。警備隊の者は必死に追いかけたが、追いつけなかった。
その状況から被害がさらに増えるかと思えたのだが、追加の被害としての死者は出ることなく、魔物は村から走り去った。
そして魔物が草原を走っているときに上空から見たことない大きな魔物が急降下し、村を襲った魔物の半身を食いちぎって大空に消えていった。
その光景を見た警備隊の者は衝撃を受け、そして恐怖を覚えた。
村の周りの草原の脅威はこれまで以上に増しており、より強い警戒と細心の注意が必要な状況になっていると感じた。
村の中に漂った異様な臭いは数刻したら消え去り、誰が、臭いを発生させたのかわからないまま、魔物襲撃事件は終わりを迎えた。
脅威となる村を襲った魔物を追い返すことができたのは臭いのおかげであることは、村の者は大半が気付いていた。警備隊の者たちは自分たちの訓練の練度が低いことを痛感させられる結果になった。
この魔物の襲撃で村には死者が出た。
けが人も重症から軽傷までおり、半数近くの者が魔物から直接被害を受けた。
そのため、治癒魔法を使える大人から子供に至るまでの総出で重傷者を対象に手当を行っていた。
また、村の薬草や傷薬は軽傷者に使われ、その手当てをするために手の空いたものも対応に追われた。
村の1割の死が村人に伝えられた。




