主要案件
ザクスは救労院で集めた情報から東大陸の勇者による魔王国にいる魔王襲撃の支援についての方針を決定した後、この救労院を立ち上げた理由でもある呪いに関する情報と自身の能力制限とそれに伴う相手への能力付与に関する能力制限の身をとり除くことはできないかというスキルや能力に関する情報を聞き出して関係する物がないかまとめられた資料や本を開き、集まった話や情報に目を通す。
「ザクス様、この情報は御存じですか?」
各地の救労院で集められ、各院長が目を通し、精査された話や情報がさらに各院から集められ、所蔵されている。
そんな蔵で情報管理官の男がザクスに一つの話を提案する。
「どんな話だ?」
管理官の男はその話が記載されている資料を机に広げ、説明を始める。
「これは、力なき男がとあるきっかけを経て突然成長する話です」
「ふむ、突然か、何かを倒したとか、殺したとか、訓練を積んだことで、この世界でよくある成長段階が上がったという話ではないのか?」
「違うとは思われます。この話では、その男は訓練や戦闘などの経験は積み重ねていたそうですが、突然成長したきっかけは戦闘ではなかったとあります」
「遺物か呪物を得てその力がうまく作用したとか」
「成長後も道具を使っているというわけではないです。そういう話であればここには集められていません」
「そうか、情報の精度が上がっているということか。聞かせてもらえるだろうか」
「はい、お聞きください。話は単純ですがこのようになっております」
管理官は語り始めた。
あるところに一人の男がいた。
その男はとあるところで成長限界が来てしまったのか、特定の弱い魔物以外にはほとんど勝つことはできないような弱さだった。
その男はその弱さゆえに一族より嫌悪され、ついには追い出されてしまう。
その男は運よく一族の住む村から隣町までたどり着くことができたという。
たどり着いたその隣町には青き竜神の伝承があり、その竜神は相性が良いものに祝福をもたらすという神の気まぐれによる面白話がいくつか存在したという。
その男は隣町になじむにつれ、その竜神の話を耳にするが、昔に作られたおとぎ話かしつけのための教訓話か何かだと思っていたそうだ。
その男はなんの偶然か誰の導きか竜神と出会う。
しかし、その出会った竜神はその男には何も与えなかったという。
その男は竜神と出会ったことがうれしかったのか一人の知人にそのことを話したというが、何も得られなかったことを告げると知人の態度は一変し、一夜のうちに街の住民たちから嫌悪され街から追い出されることになったと言う。
街であがめられる竜神に出会った幸運はその男の運はよかったのかもしれないが、その竜神が相手にしない相手、つまりは街が祭る神から見放されたよそ者、それがいけなかったらしい。
男は悲しみながらも町を出て他の街に移り住む。
そして男は移り住むまちまちで先の竜神とような神に出会うも相手にされず、緑深き亀神、白き虎神、赤き鳥神、黒き狼神、山吹く色の蛇神、気高き紫色の鹿神、等との邂逅を経験したという。
出会い方も様々で、竜神は湖畔で一人でいるときに、ほかの神々は夢で現れたり、仕事中に複数人でいるときに会ったり、山、川、海、畑など様々な場所で、いろいろな時間帯に出会ったという。
その男は神々に相手にされず、街々の者達から嫌悪され、追い出されたことで神々を呪う言葉を口にし始めたという。
そのようになったところで彼を嫌う者達の差し金の暗殺者に襲われ、経験した命の危機に暗殺者に殺されるくらいならと追い込まれた崖から飛び降り、自分の意思で死を選ぶも奇跡的に生き延び、その臨死体験から、リミッターが外れたのか、力を得、その力を行使することで、彼を守護する神がいたことに気付き、和解したことでより力を得、伝説として語られることになった。
「という感じの話ですが、ザクス様はご自身を守護する神がいると感じられたことはありますか?」
「守護神か……神々と出会ったことすらないからな、その話はどこの話だ?」
「東大陸の伝説ですね。神々に嫌われた男とその男を守る守護神という逸話です。話に出てくる神々を祭る街々の一部はいまだに健在で、その地に住まう神々も一部は健在とのことです」
「街と神がそろっているところもあれば、神のみ残り、街が消えた場合と、街は残っているが、神が出てこなくなり、信仰が薄れたとこがあるというわけか……魔王討伐への協力について検討しないといけないが、神々に出会い、力を授かるか、その出会いを通して自身に神が宿っていないか確認することも一つの手なのかもしれないな」
ザクスは面白そうに笑みをこぼすのだった。
来訪感謝です。
誤字指摘ありがとうございます。
コメントもいただき嬉しく思います。
話の終わり方について最近は考えているのですが、主人公のザクスと魔王との関係は話の終わりには関係ないと感じ始めていたので、終わりに向けた本筋に話の主軸を移すことにしました。




