街攻め作戦立案中
ザクスは再び司令官代理として作戦会議の招集をかけた。次の戦略目標はギンガ―の街の占領と平定。攻略より占領が目的で、今回の砦の反省点を鑑みて作戦を立てることになった。
「この砦での反省点は虫の魔物をけしかけ続けてしまったことです」
とマルクス参謀は述べた。皆が頷く。
「虫の魔物の卵がどこに植え付けられ、それが、いつ孵化するかわからないのは大変で、孵化した虫による被害が、占領後に起きてしまえば街の平定なんて難しくなる一方ですから」
「街を機能させるには街への長期間の直接攻撃もしないほうがいいのではないでしょうか」
「そうですね。非戦闘員を攻撃することになりますから、そのあたりも注意が必要です。極力、非戦闘員は攻撃しないように」
「あとは、ザクス司令官代理は街に入らないほうがいいのではないでしょうか」
「な、なぜでしょうか?」
「今回の砦攻略において、ザクス司令官代理はアルムレイエットの『悪魔』と呼ばれているらしいですよ。そんな人が街に入ってしまったら、街の人が怯えてまともに街が機能しなくなります」
「えっ!?『悪魔』ですか!?」
「そうです。アルムレイエット王国では『魔女の弟子』。エンバルト皇国では『魔物使い』。ヘイレンアンク教信国には『悪魔』。二つ名付の英雄ってところですかね」
「特にヘイレンアンクの二つ名は英雄とは程遠い名前だと……」
「普通の人には二つ名は付きませんので」
「なら、僕の二つ名誰か貰ってくださいませんか。普通の人でいいです。村に帰りたくなってきました。……」
「何言ってるんですか。二つ名が付くぐらい活躍される方が、村に帰れるわけないじゃないですか」
「えっ!?帰れないのですか!?」
「無理だと思いますよ。優秀な人は貴族様か騎士様か軍の指揮官になって永久に国に仕えるために与えられた土地で働き続けるんですよ。その目的もある徴兵制度なので。まあ、貴族様や騎士様になる人は近年はいないみたいですが」
「……先日、貴族様にさせられそうになりました。……」
「「「おぉ~~~!!」」」
「ということは現実を見て、普通の人はあきらめてください」
「……平凡が良かったです。街にも入れてもらえないなんて」
「って、脱線している場合ではなく、作戦を決めないといけません」
「で、どうしましょう」
「街の防壁への魔物攻撃はしたほうがいいですね。頼みましたよザクス殿」
「防壁の耐久が落ちたころに、打って出ましょう」
「はぁ、魔物を嗾けるのにかなりの調合と材料が必要なのですが、それは…」
「材料調達もお願いします」
「僕、司令官代理ですよね……なんか下働きをする下級兵のように現場最前線でこき使われていると感じるのは気のせいではないと思うのですが」
「ただ、攻める軍事演習はこの砦ではほとんどできないですよね」
「あぁ、狭いから部隊を整列配置できないしな」
ザクスの呟きは他の会議参加者によって華麗にスルーされた。
「前回は1か月かけましたが、今回は10日たったら攻めますか」
「街の民を不安にさせないためにはもっと短いほうがいい。そのほうが平定しやすいのではないか?」
「誰か、軍事ではなく、市政に詳しい人はいますか?」
「街を治めた経験のある人なんてこの部隊には……」
「伯爵様は?…今と同じですよね。領土は持ってらっしゃっても優秀な部下に任せている」
「そう思いますよ。なら、この部隊にもいるはずなので、事前に集めておく必要がありますね」
と作戦会議が進み、次のようなことが決まった。
1.ザクス司令官代理は再び司令官に責任を返し、前線で立ち回る。
2.ザクス司令官代理は毎日、魔物を嗾け、街の防壁を攻撃する。
3.ザクス司令官代理は毎日の出兵の際、必要な材料を回収してくる。
4.ザクス司令官代理は回収してきた材料を部隊の者と共に薬の調合を行う。
5.3日後に街の攻略部隊は出兵。魔物の防壁攻撃の後、出兵部隊が突撃し、防壁を突破し、ギンガ―の街を攻め落とす。
6.街の占領の次の日に別部隊として待機させておいた街の平定を主とした部隊が街に入り、街を収める役割を果たす。
…ザクスは決定した内容を見て
「やっぱり、僕だけかなり酷使されているじゃないですか!?」
「でも決まったことだから仕方ないですよね」
「これで決まりですか!?今回は普通に攻めるだけでいいのでは!?それなら僕要らないですよね。ここを落とすのにもずっと僕は頑張ったんですよ。1日、2日の休養があってもいいじゃないですか!?」
「これで決定で、ほかの人に反対の意見はないですし」
「皆さんのすることは特に大差なくて、僕だけ扱い酷いじゃないですか。訂正を!再検討を要求します!!」
「もう諦めてくださいよ。これがこの会議で決まったことですし。ザクス殿の役割りが明確になってよかったじゃないですか」
「明確ではなく、酷使される内容が赤裸々に表現されただけです」
「では、また司令には司令部復帰してもらって、ザクス殿は森で頑張ってください」
「逃げる。逃げ出してやる!!」
ザクスは捨て台詞を吐いて、司令部を後にした。会議参加者は気の毒そうにザクスを見送った。




