想定外
エンベルの砦を攻略したアルムレイエット王国軍は砦の清掃、駆除、修復に時間を費やすことになった。砦攻略で、清掃、修復は普通のことだが、駆除については考えが及んでいなかった。と言うのも、攻略のために砦の壁に穴をあけ、突入し、攻め落とした時、砦の中の状況はかなりひどかった。一か月の間、毎日、鳥や虫に攻めさせたのが影響していた。処理しきれなかった魔物や人の死体、そして、襲撃の時に落とされた卵や排泄が砦内部をひどい状況にさせていた。その処理があり、そして、攻略であけた穴の補修が第一優先課題となった。ザクスは手持ちの消臭薬や、魔物除けそして、駆除の陣頭指揮を行った。清掃・修復は別の者達に任せていたが、思いのほか駆除に手間を取られた。まず見つかりにくく、見つかった時には遅かったことが何度もあり、戦闘になったり、追い出すことに徹したりと忙しくすることになった。
しかし、ザクスはその合間に司令部に再び呼び出されることになる。
「ザクス殿、司令部に集まっていただきたいと司令と参謀から連絡がありました」
「えっ?何の用でしょうか?」
「司令官代理の役割を果たすようにとのことです」
「司令官代理……誰がですか?」
「ザクス殿ですよ。皆で決めたではありませんか」
「……そ、そういえば。僕はそんな役職ここで持っていましたね。忘れていました」
「まぁ、ここ1か月は司令官が働いてくださっていたので、代理は不要でしたけどね」
「ならなんで今になって……あ、次の戦術作戦を決める必要があるのか……」
呼び出しの名目は司令官代理の招集だった。砦攻略前の野営地での司令官代理としての役割は果たし終えていたが、解任されていなかった。しかし、1か月もその役割を果たしていなかった。そして、再び司令官代理として働くために呼び出されるとも思っていなかった。
しかし、ザクスが理解したように、この砦を攻略するところまでは決めていたが、次の戦略目標のギンガ―の街の攻略について方針が何もなかった。前回の作戦では司令は任せると言ったうえでザクスと、新たに召した参謀のベールネスト・マルクス参謀と後、幾人かの指揮官とで作戦を決め、実行に移し、成果を得た。そこから考えると、次のギンガ―の街の攻略も同じことをしないといけないことは理解できた。ザクスは前線の部隊指揮官として活動していたため司令官代理はもう別の人が引き継いでいると思っていた。が、実際はそうなっていなかったようである。
「ザクス特権兵、招集に従い、参りました」
「ザクス司令官代理、いや、ザクス殿、この度はよく戻って来られました」
「バルバトーレ司令、マルクス参謀、この招集は何のための……」
「われの役割りはここまでだ。再び指揮権をザクス司令官代理に委譲する」
「なっ!?また、無責任な!?」
「そういわれても、もともと、われはぬしにこの地の指揮権を渡していたが、ぬしが作戦のため動けなくなるのが具合が悪く、作戦も決まっているから人や物資の手配の承認・確認をするだけだというので復帰したにすぎん。次の作戦を決める事は再びぬしらがすればよい。われもよく働いた。休暇とさせてもらう」
「そ、そんな…」
「諦めてください。ザクス殿」
「マルクス参謀、あなたまで…」
「当然です。バルバトーレ司令に復帰してもらうためにした会話ではこの砦攻略完了までという約束でお願いしましたので」
「僕、そんな話聞いていない」
「それも当然です。話していませんので」
「ぐっ。なんかはめられた気がするのは僕だけかな…」
と、ザクスが落ち込んでいる間にバルバトーレ司令は司令部より出て行った。
「ではザクス殿、作戦会議ですよ」
「はぁ、マルクス参謀、指揮官の人たちを集めてください」
「わかりました。そのように手配します」
とマルクス参謀は笑みを浮かべて、ザクスに対して受け答えをし、次の手配を始めた。




