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ザコの僕には無理だと思うのですが  作者: 柚穐
3章 代理
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戦術

戦略目標はエンドラント地方の森、エンドラントの森の中のエンベルの砦を攻略し、森を抜けた先のギンガ―の街を占領、平定し、街の先のゲンスト平原を越えた峠の入口のゲンストの砦の占拠である。


ザクスはこの戦略から、戦術としてのエンベルの砦の攻略をどうするべきかを色々なものに尋ねた。返ってきた多くの答えは魔物の襲撃に気を配りながら街道を通り砦を攻めるというものだった。しかしその戦術作戦は長い間成功せず、エンベルの砦にもたどり着けず撤退したことが幾度もあったそうだ。他の戦術作戦として、一つは森を通る作戦があり、それは殆ど森を進む事ができなかったらしい。そして、空から攻めようとしたが、数を揃える事も敵の大規模上位魔法攻撃を防ぎきる事もできなかったと聞いた。


どうするべきか。悩んだザクスは新しく召された参謀と会話した。出てきた案は正攻法か、ザクス頼みの森侵略のどちらかとなった。


正攻法は、魔物と敵の攻撃両方を防ぐ必要がある。そして、一度に攻めたくても街道がそれほど広くない事、砦からは丸見えで、攻撃され放題であるために攻めるには不向きな作戦ではあった。しかし、普通の人にはこの方法でしか、攻めるしかなかったようだ。

森からの侵略については、ドートロス地方とは異なるので、いくつかの相違点で時間が必要であることが分かった。魔物を(けしか)けるとしても、ドートロスの時は街の外に半数以上の部隊がいたため効果があったが、このエンベル砦では部隊はすべて砦の中にいる。魔物を嗾けても砦の壁が邪魔になる。壁に攻撃するような特殊な性癖を持っている魔物は少ない。ただ、少しはエンドラントの森にも存在するので、嗾けて壁の強度を下げることはできそうだ。壁を攻めるだけでではなく、敵を疲弊させる方法も考える。鳥系や虫系の魔物を空から攻めさせればその対処による疲労で軍による侵攻も攻めやすくなると決めた。しかし、この作戦では、ザクスの能力や、秘蔵の薬や、その調合技術を十分に発揮させなければならないため、司令官代理としての役割を果たしているとこの作戦は行えないと言う矛盾を孕んでしまった。攻めるには司令と言うより部隊指揮官として働く必要が出た。毎日森に入る必要がある。


「どうしましょうか?マルクス参謀」


ザクスは参謀になったベールネスト・マルクスに作戦遂行に関して、対応方法について相談した。作戦実行にはザクスが外回りするべきで、司令官代理としての役割は果たせない。司令官代理をするにはザクスは外回りに出る余裕はなくなる。


「バルバトーレ司令に司令として司令部での対応をしてもらいましょう」


「動いてくれるでしょうか」


「動いてもらうんですよ。もう戦術も決まっていて、後は承認可否のみですから」


「そ、そうですね」


「ザクス殿には作戦のために準備しておいてください。司令にお願いするのは僕の方から言っておきます」


「では、よろしくお願いします」


ザクスは参謀と調整をし、バルバトーレ司令をもう一度呼び出す。そう打ち合わせ別れた。これより、ザクスは司令官代理の役割を終え、戦術の歯車として働く準備を始めた。司令官代理として役割を果たしたのは10日前後だった。しかし、森には半分以上の日で入っていたので、司令官代理としてはあまり働かずにその期間を終えた。


この次の日より、エンベルの砦に休みなく魔物が押し寄せることになり、砦に在中していたヘイレンアンクの兵に休日が与えられなくなり、30日後にはエンベルの砦はアルムレイエット王国の手に落ちることになる。


この魔物の砦への襲撃によって次第にヘイレンアンクの兵たちの中で次のように噂されるようになる。「アルムレイエットには『悪魔』が存在し味方する」。ヘイレンアンク教の教えから、魔女や魔物を使うものは悪魔や悪魔の子と信じられ、教えられていた。その事が引き金となり、急速にエンドラント地方で広まっていった。


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