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ザコの僕には無理だと思うのですが  作者: 柚穐
1章 少年期
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少年と魔女

少年ザクスの質問に対して老齢の女性は優しく話しかけてきた。


「ザクスというのかい?よく来たねぇ。私はデロ。私を訪ねて人が来たのは何十年ぶりになるかな?何か願いことがあってここに来たのかな?」


「こんにちは、デロさん。僕は願い事があってこの小屋に来たんじゃないよ。面白そうな小屋があったので、僕の秘密の隠れ家にしようと思って入ってきたんだ」


「願い事のためではないのかい?秘密の隠れ家。どこの子だい?魔物の子には見えないが。子供が平気な顔してこの小屋に入り、私と会話ができるような場所じゃないと思うんだがのう」


「ローレムっていう村に住んでるよ」


「ローレムっていや、森の外の草原の先の村じゃないかい。てことは大人と一緒に森に入ってはぐれでもしたのかい?」


「ううん。違うよ。一人で来たし」


「一人で!?この小屋の周りの魔物は相当強いはずだろ。見たところ、魔物の血が匂いが付いているようにはみえないし、ザクスは魔法使いなのかい?」


「魔法使いじゃないよ。魔法は使えない」


「なら、剣士なのかい?魔物を倒せるくらいの…」


「剣士じゃないよ。村の男の子の中では、すごく弱いし」


デロはこのザクスという少年が嘘をついてはいないように見えたが、この場所にどうやって来たのか見当もつかなかった。しかし、扉の前で立ち話をしていても仕方がないので、扉の中に招き入れた。


「入っておいで、そこで少し話でもしようじゃないか」


そういってデロは扉を離れ、奥に入っていった。ザクスも「うん」と返事をして扉の中に入った。デロが椅子に座ったのを見て正面の床に座り込んだ。


それを見たデロは、指をさし、何事かをつぶやいた所、急に部屋が明るくなった。そして、その後、


「そっちに椅子があるから、それにでも座りなさい」


と話しかけてきた。部屋が明るくなったので、デロが指さしたほうを見てみるとその先には椅子があった。その椅子を担いでデロの正面に移動した後、ザクスはその椅子に座った。


「さっきの続きなんじゃが、魔法使いでも剣士でもないと返事していたな?」


「うん。そうだよ」


「なら、足がすごく早いのかい?」


「足も速くないよ」


「それじゃあ、王族かえらい貴族か商人の子供なのかい?」


「ただの、農夫の子供だよ」


その答えを聞いたデロはますます混乱した。聞いたところ何の特技もないのに子供一人で、危険な平原と森を抜け、この小屋までたどり着いていることになる。


「そのナイフとスコップはいつも持ち歩いているのかい?」


「違うよ。さっきからすべて間違いばっかりだね。この小屋に入るのに必要なものを順番に選んで繰り返したら、このナイフとスコップの二つになったんだよ」


「繰り返したのかい?ということはこの小屋の中は初めてでも小屋の前には何回も来ているというのかい?」


「あたり!え~と5回目かな。

初めての時は何も持ってなかったから、蔦が邪魔で入れなかったんだ。

2回目の時はナイフ持ってきて蔦を取り除いたんだけど、扉の下の土が邪魔で入れなかったの。

3回目はスコップで下の土を取り除いたのに蔦が伸びてて邪魔されて入れなくて、

4回目はナイフで蔦を切ったけど、また扉の下の土が邪魔で、

それで、5回目が今回で、蔦と土が扉の邪魔をしなくなったら入れたんだ」


とザクスは指を折りながら説明した。そこでデロは納得した。

実際、小屋の周りの蔦は危険感知のためにデロが魔法で張り巡らせたものだった。

その蔦が最近、傷付けられるのではなく、切られて取り除かれるという感覚を感じていた。


「最近2度ほど蔦が取り除かれたのはあんたがやったのかい?」


「蔦を切ったのは今回で3回目だから最近の2回っていうのは僕だと思う」


デロは目の前の少年に興味を持った。そして、そのまま、いろいろと少年の最近の話を聞いた。また、自分のことも少し話した。自分は魔女と呼ばれる存在で。この小屋を作って数百年、この小屋の外には出ていないことや、魔女と呼ばれる理由となっている魔法のことも話をした。


「また来るよ」


「わかった。またおいで」


デロはもう来ないかもしれないと思っていたが、ザクスはまた来てデロから話をいっぱい聞くつもりでいた。


「そういえば、次に来たときはまた、小屋の蔦や土が邪魔で入れないと思うんだ。また来た時に合図があったら入れるようになったりする?」


「あ~そうか、それなら、蔦の葉っぱにキスをして、その葉っぱを両手で挟み込むように叩いたら入り口が開くようにしてあげるよ。どの葉っぱでもかまわないから、帰る前に一度試してから帰るといいよ」


「わかった。ありがとう。デロさん」


と、ザクスは手を振ってデロと話をしていた部屋を出て、階段を上り、小屋を出て、扉を閉めた。そして、


「えーと、蔦の葉っぱにキスをして」


ザクスは一つの葉っぱに口づけをした。


「その葉っぱを両手で叩くんだよね」


パンッと葉っぱを挟み込んで拍手をした。すると蔦が、ざわざわと動き、扉が光ってから、扉が開いた。


「本当に開いた!これで次からはナイフとスコップを持ってこなくて済む」


開いた外側の扉だけを閉めてザクスは帰った。


それから、時々ザクスはデロのいる小屋を訪れた。そして、デロはザクスに昔話をいろいろ聞かせ、魔法や薬草や魔道具についてザクスに教えた。しかし、ザクスは攻撃の魔法も、身体能力向上の魔法も、治癒の魔法も使えるようにはならなかった。まじめに取り組んでいないわけではなく。いろいろと頑張っていることはわかった。そして、魔力がないわけでもなく、デロが、ザクスの体の魔力を使用してザクスの手から魔法や魔道具を使わせる事は出来たので魔法を使えない理由がわからず、お手上げだった。デロにとっては初めての教育失敗の経験となった。本当にいろいろと考えたが、どうしようもないという結果に終わった。そのため、デロはザクスに謝罪をしたが、ザクスは


「僕はザコだから仕方ないよ」


と苦笑しながら、そういった。それでも、ここに来たときは魔法の練習するといった。

魔法や魔道具の使用についてはだめだったが、ザクスは、薬草についての知識は少しずつ身に付けることができた。魔物除けの薬草や毒草、傷・病気の治療の薬草や身体に影響を及ぼす効果がある薬草などの知識を増やしていった。


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