表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ザコの僕には無理だと思うのですが  作者: 柚穐
2章 新兵
33/583

戦地

それから、ザクスを訪れ、助言をしに来たシンヤさん達や、顔も知らない立派な人達と遭わないように、接触しないように、注意を払い、日々を過ごした。

人を寄せ付けない雰囲気を纏い、周りに気付かれにくく行動した事によって助言の話も、同居人候補もない状態で訓練期間を終える事に成功した。

そのため、ザクスは特権でできることの先人の知恵を全く聞かずに厳しい戦地に備えた。


そして、ザクスの所属するゲーレスム兵長の部隊を含む新人の数部隊はエンバルト皇国の領土の深くに進軍し陣を構え、出陣するたびに敗走を繰り返している戦地ドートロスへ本来の配属より一か月早く、半年を待たずに兵の増員配属として着任した。


そして、司令官、参謀、部隊指揮官、兵長が顔を合わせて戦略会議を行う場に特権持ちの義務として、ザクスも呼び出され参加を強制させられた。


部隊指揮官や、兵長の名前の挨拶が一通り終わったところで、司令官がこの場を取りまとめ、参謀に戦地の現状を説明させた。


「ご苦労であった。我が司令官のハンデルト・ナーガレーディアン・ゲンベルツェン。

侯爵の爵位を持っている。ここでは、ゲンベルツェン侯爵、またはゲンベルツェン司令と呼ばれている。新しく来たものもそのように呼んでくれ。では、この戦地について参謀に説明させる」


「新しい部隊の方々もいますので、私もご挨拶をさせていただきます。参謀のドラゲベート・ハルトトライスト・フィアッツです。子爵の爵位を持っており、ここではフィアッツ子爵、またはフィアッツ参謀と呼ばれています。現在我軍の兵力は他の力の転属や、新人の配置などの増員によって1万5千まで戻りました。その分、他の地域の兵力を減らすことになっています。しかし、そうしてまでも意味のある戦がこの地にはあります。これから攻めるところは敵国の重要な拠点の街ドミアートレと言います。ドミアートレは現在のエンバルト皇国の軍備・商業のかなめとなっている街です。そして、町は重要拠点であるため、防壁が高く攻め難くなっており、この町を守るためにエンバルト皇国は約4万の兵を街の内外に待機させています。ここを攻め落とすことが現在のエンバルト皇国との戦争で重要な意味を持っている事を理解してもらいたい」


ザクスは状況を聞いて、攻略の糸口すらなさそうな状況で戦争をすることになり、なるほど厳しい戦地だと納得をした。そしてここまでよく攻め込めたなと感心もした。どうすればこんな深くに陣を構えられたか理解できなかった。270度より酷いこの陣を中心に300度の方向が敵陣地…簡単に囲まれれば攻め落とされると感じる状況だった。


「攻める戦略を伝える前に、新たに特権持ちとして国王に認められた傑物の兵力とアイデアをまずお聞きしたい」


皆の視線がザクスに向いた。


「えっ!?僕が話す必要があるのでしょうか?戦略をお持ちなんですよね。それに爵位を持っていない村人の僕が傑物なんて恐れ多い。そして、子爵様の戦略に口を挟むなんて」


「いや、これも特権持ちに対する必須事項です。戦地での独自行動や軍指揮などそういう能力に優れた人は特権持ちに選ばれやすいので。でもザクス殿は指揮や戦略等の駆け引きは得意ではなさそうですね」


と参謀の方はザクスとも会話から能力の探りをしているようだった。しかし、ザクスはそれにも気がつかずに会話を続けた。


「あ、なるほど、僕はそんな駆け引きや戦略は出来ませんし、戦闘能力は最低です。魔法も使えませんし、弓も並みか、ダメな方かもしれません。たまにはいいところに当たるんですけどね。一応薬の生成や調合と罠を仕掛けることは得意ですよ。あとは気配を感じること、なにかに敏感に反応する感じです。

生き残ることに重きを置いて戦いたいと思っています」


「生き残る。……後方支援か工作部隊を希望という感じですか。で、ザクス殿の取り巻きは何人ぐらいいらっしゃいますか?」


「取り巻き?………あ、ああ。0人です。僕だけです」


「えっ!?取り巻きはいないのですか?これまでの特権持ちは同じ能力を持つ取り巻きや、特権持ちの盾となって戦う取り巻きが居たのですが………ゲーレスム男爵。ザクス殿が言われていることは本当ですか?本当に取り巻きはいないと?」


「残念ながら、ザクスの言っていることは正しいです。誰も囲っていないので、取り巻きはいません」


ゲーレスム男爵は囲い込みをしないザクスに対して女の一人か二人くらい手を出すように何度か薦めたがそれすらもザクスはしなかった。なので、ザクスの取り巻きがだれもいない状態で戦地に連れてきたことでとても気まずい思いをしていた。


「ふむ。そうですか。一人なのですね。なら、ザクス殿のここで希望することは何ですか?戦略とは関係なく、ザクス殿が戦地・戦場でほしい権利です」


「えっ!?ここでも権利を!?それも特権持ち故ですか?」


「そうです。そして、ザクス殿は戦略提案もなく、指揮権について希望もなく、取り巻きもいないので、権利は何もいらないという回答は却下します」


「え!?何か考えろという事ですか!?」


「そうです。そしてこの場ですぐにです。考える時間は与えられません」


「なら、撤退するときは真っ先に先頭を切って逃げさせてください。足も速くないので、撤退の陣形をとったり、集団の中でともに逃げると、追撃してくる敵軍の攻撃に巻き込まれたり、味方の足を引っ張ったりするので。この戦場はよく撤退するとお聞きしましたので、その権利をいただけたらと。可能であれば、状況によっては勝手に逃げさせてもらえると嬉しいのですが」


「ふむ。撤退の先頭をいく。撤退行軍の先陣を切っていただけるのですか。………わかりました。ザクス殿には撤退を決断する権利と撤退行軍時の指揮権を与えることにします。なので、勝手に逃げることは許可できません。なお、撤退の決定権は司令、部隊長、兵長も持っており、それぞれの指揮下の兵士に対してのみ有効ですが、ザクス殿の撤退の決定権は全軍に対して有効とします。ザクス殿が撤退の判断をした場合は全軍撤退です。そして、撤退時はザクス殿に全指揮権が移譲され、ザクス殿は先頭を進み、退路を確保しつつ帰還してください。いいですね。司令」


「わかった。いいだろう。任せる」


「ということで、この場にいる部隊指揮官、兵長はこのことをしっかり兵士たちにも伝えておくように」


「えっ!?なんでそんなことに!?」


ザクスは生き残るために逃げやすくさせてほしいといっただけだったはずの意見が、フィアッツ参謀によって、撤退を指示し、全兵の指揮権まで持つことを要望していると曲解され、その場で決定してしまった。ザクスはそれ以上口を出す勇気も反発できる気概もなかったので、諦めて腰を下ろし、


「なんで…なんで…」


と繰り返すことになった。そして、2日後に1万5千の兵のうちの5千の兵が、エンバルト皇国のドミアートレの街を牽制するために出陣することに決まった。そしてその5千のの兵の中にゲーレスム男爵の部隊も含まれ、一番爵位が高かったゲーレスム男爵はこの行軍の全軍指揮者として攻めることとなった。そして、ゲーレスム男爵の部隊に属しているザクスも同様に出陣することになる。


敵のエンバルト皇国としては守るだけの戦の上、兵は4万。5千の兵でどうにかできるものではないのは誰の目にも明らかであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1章、2章のサイドストーリーが別のページに存在します。
時間があるなら、ご覧ください。
ザコの僕には無理だと思うのですが1章~サイドストーリ~
ザコの僕には無理だと思うのですが2章~サイドストーリ~
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ