特権持ち
ザクスはフーネルに、いや、フーネルの仲間たちに良い感情を持っていなかった。そのため、素直な態度も、普通の接し方もできず、傍目からはふてくされているように見える態度を示した。
「ふむ、ザクスは特権の権利を有効利用はしていないみたいね」
「こんなもの、貰っても、僕にどうしろっていうんですか。もともと、一村人ですよ」
「一村人ねぇ。普通の村人は一人で林や森、山を歩いたりしないわよ。それにその年で、特殊な薬を作ったりもできない」
「で、特権の有効利用って何なんですか?」
ザクスは話がそれて会話時間が長くなりそうになったので、元の話にぶっきらぼうな態度で、強引に戻した。
「あ、そうそう、有効利用の話だったね」
「わかりやすくお願いしますよ。僕は戦闘能力が低いだけでなく、賢くもないし、理解力が高いわけでもないので」
「わかった。わかった。このおねーさんがザクスでもわかるように頑張って話すから。…で、過去の特権持ちについてザクスは調べたり聞いたりしたの?」
「いいえ、3年ぶりに僕が特権持ちになったことくらいしか」
「てことは、さっきのケイトちゃんの囲い込みの話も、送られる戦地についても知らなかったってことよね」
「はい、知りませんよ。誰も教えてくれないし」
「…特権持ちができることと、一般の軍人がするべきことの規則の書かれている法規は読んだの?」
「一通りは一応。でも、さっき言ったように僕はそこまで頭がいいわけでもないので、一般の軍人がするべきことの規則は周りも守っているし、行動しているので理解はできますが、特権でできることはまだまだ」
「やっぱりね。さっきの話で、この部屋は依頼すれば資材や部屋区切りはしてもらえるでしょ。この部屋は単純な間仕切りなどで普通に取り巻きを10名くらいは住むことができるのよ。それに、この部屋に最大だと30~40くらいの人数は住めるらしいわよ」
「そうなんですか」
「それに、国益の戦績がある人は戦場では、一点突破の破壊力を持つ能力による現状打破が期待されている。特権兵の能力で窮地を脱したり、戦況をひっくり返したりしてほしいと国の王や大臣、軍指令部、長官はその期待を込めて、特権持ちを選ぶのよ。だから、その功績がより大きくなるように難しい戦地、厳しい戦地に送り出して、そこを切り抜けて、変化を起こしてくれることを望んでいるのよ」
「そんな、無茶苦茶な…」
「でもね、4年前とその前とその前の特権持ちは2年の徴兵期間を生き残れなかったんだって。だから、3年間特権持ちを選ばなかったって」
「「えっ!?」」
ザクスと一緒にいたケイトはともにその事実に驚いた。
「今年も本当は誰も選ぶつもりもなかったみたいなの。でも、王の子が二人も徴兵されるし、その子たちを抑え込むこという理由と、現状の戦争の打開が本当に必要になり始めているため特権持ちになることができそうな人を探したところ、ある人達の進言で、今回の特権持ちが選ばれたのよ」
「ある人たちって、他人のように言わなくても」
「で、今回の特権持ちは期待されているし、より、厳しい戦地を転戦させられる。その備えを十分にしないと生き残れないし、この国も危なくなるから。助言をするために、私たちや、周りから、戦地や戦う相手、特権を使用しての準備などを説明しにいろんな人がザクスを訪れると思うのよ」
「いろんな人が来るんですか。ってことはフーネルさん以外も来るんですか?」
「うん、そうだよ。ザクス君がこの徴兵期間を乗り切れるように助言を与えるためにね」
「………そうですか」
「私からはこんなところかな。ひとまずは。わかりやすくって言ってたし、たくさん伝えても混乱するだろうし」
「はぁ。ありがとうございました。参考になりました。もうほかの人はいいです。そう伝えてください」
「えっ?助言は?聞いてたよね?」
「はい、聞きました。もういいです」
「なら、確認なんだけど、だれか囲い込みをする人を探すのよね」
「いいえ、人は探しません。そちらの思惑通りには動きません。僕は生き残ることだけに集中することに決めています。戦うことはあまり考えていません。戦況をひっくり返すような戦いはするつもりはないですし、できないので。難しい戦地という事さえわかれば、生き残ることだけ考えて残りの戦地出発までの期間を過ごします。もう助言はいりません。ありがとうございました。引き取りいただけますか」
強めにザクスは拒絶して、フーネルを部屋から追い出した。そして、扉を閉めて部屋を見ると……ケイトがまだ部屋にいた。
「ザクス君、私を囲い込んでいただけない?ザクス君が探せないのでしたら、私が、10人くらいなら役に立ちそうな人を連れてくるわよ」
「ごめんなさい。ご提案ありがとうございますが、そういうのはしません」
「わ、私が、ザクス君を守りたいと思っていたもダメですの?」
「……ダメです。ケイトさんの次の戦地が僕の戦地と同じではないと思いますし、無理に危険なところに連れて行く気もないので」
「そう、ですの」
「ごめんなさい。心配してくださりありがとうございます。後、1年ケイトさんも頑張ってください」
「……わかったわ。ザクス君も徴兵期間と戦地の1年半、生き残ってくださいね」
そういって、ケイトはザクスの部屋を立ち去った。そのケイトの姿は寂しさと悲しさがにじみ出ているようだった。
「生き残りますよ」
とだれに聞こえるでもない声でザクスは呟いた。




