騒動
ザクスは自分が割り当てられた部屋を出るとまず、副指令のいる場所を探し始めた。そのため、軍宿舎をでて、軍施設の入り口へ入ろうとしたのだが……入り口で番をしていた兵士に止められた。
「何者だ」
「ザクスと言います。徴兵召集状を受けて、本日王都にやってきました。副指令とお話ししたくてこちらまで来たのですが」
「徴兵召集で王都に来たのか?」
「そうです」
「なら、これ以上入ることはできん。入るには軍の指定の身なりを整えてやって来い。召集を受けて王都に来たからには軍宿舎以外は私服での往来は禁止される」
「そ、そうなんですか」
「そうだ。出直してこい」
「……わかりました」
ザクスは兵士に言い伏せられて軍施設へ入ることはできなかった。
軍宿舎に戻ったザクスは軍指定の身なりをする方法を知るためにどうするべきか、誰かに教えてもらわなければわからない。誰に聞こうか考えて宿舎の中を歩いていると扉に『宿舎長室』というルームプレートがついているのを見つけた。
「ここなら何かわかるかな」
ザクスは『宿舎長室』の扉をノックした。
「どちら様ですか?」
「ローレム村のザクスと言います。尋ねたいことがあってやってきました」
「どうぞ」
「失礼します」
招き入れる声が聞こえたので、扉を開け、部屋に入った。入るとたくさんの人が中にいた。
「なぜあなたは関係ない人をこの話し合いの最中に招き入れるんですか!?」
「あなた方の要求は正当性がない。割り振られた部屋で、徴兵集合式の準備でもしていなさい」
と、この部屋で一番年上に見える人が話したところ、その中から2人がその年上に見える人に詰め寄って、そろって声を上げた。
「我の話を聞きなさい!」
「私の話を聞きなさい!」
「はい、はい、もう一度だけ聞いてあげるよ」
「私はこの国の王女 アンフィリエット・ヴィラ・アルムレイエットですわ。
それなのになぜ、普通の相部屋なのですか。しかも普通の貴族と変わらない部屋に割り振られているのかしら。この宿舎には特権部屋があることは知っています。私をその部屋に割り振りなさい。無礼ですわ!」
「我もだ。我も王子 ヴァーリエル・ガイエル・アンダ・アルムレイエットだ。
なぜ、一般の貴族と同じ部屋に割り振られる。王女のアンフィより王位継承権は上なんだ。特権部屋に割り振られるのは僕のほうだ。何とかしろ!」
「わかりました。王女のアンフィ様、王子のヴァーリ様の主張はお聞きしました。では、お引き取りお願いします。扉はこちらになりますので」
「お前、失礼だぞ!!ヴァーリ様は王子様なのだぞ、その態度無礼だぞ」
「王女のアンフィ様に対しても同じですわ。ちゃんと話を聞くべきですわ」
王子様と王女様の取り巻きの者が非難の声をあげた。
「ここに、国王様からの指示書が3枚あります。そのうち2枚が、王子様と王女様のこの宿舎での対応についてです。読み上げましょうか?」
王子様と王女様そして取り巻きたちが黙して息をのむ。そして、一番年上に見える人は続けた。
「一枚目についてはこう書かれています。
軍宿舎長殿。
わが息子ヴァーリエル・ガイエル・アンダ・アルムレイエットについて、
軍宿舎長に異議を申し立てたとしても聞いてはならぬ。
特権部屋は国に対して益となる功績・働き・戦果を齎した者に与えられるものである。
息子ヴァーリは城にとどまり、ただ無為に時を過ごしたのみである。
国の益となる働きはしていない。特権を得られる資格はない。
軍役の期間中は他のものと同じ貴族、民と同じ相部屋で軍役に服するべきである。
以上である。
アルムレイエット王国国王
カイザードレム・フェン・ヴァン・アウス・アルムレイエット
とあります。これがその手紙で、サインと印付です」
と一枚目の手紙を見せた。するとヴァーリ王子は悔しそうな顔をし、こぶしを握り締め震えていた。そして、続けられた。
「二枚目についてはこう書かれています。
軍宿舎長殿。
わが娘アンフィリエット・ヴィラ・アルムレイエットについて、
軍宿舎長に異議を申し立てたとしても聞いてはならぬ。
特権部屋は国に対して益となる功績・働き・戦果を齎した者に与えられるものである。
娘アンフィは城にとどまり、ただ無為に時を過ごしたのみである。
国の益となる働きはしていない。特権を得られる資格はない。
軍役の期間中は他のものと同じ貴族、民と同じ相部屋で軍役に服するべきである。
以上である。
アルムレイエット王国国王
カイザードレム・フェン・ヴァン・アウス・アルムレイエット
とあります。これがその手紙で、サインと印付です」
と二枚目の手紙を見せた。するとアンフィ王女も悔しそうな顔をし、唇を噛みしめて震えていた。そして、続けた。
「この二つの王からの指示命令書に従い、王子と王女の申し立てをお聞きしても言われるとおりに対応できません。割り振られた部屋でお過ごしください」
「ぬぬぬ、そうだ、3枚目、3枚目に我らについて先の命令書の撤回の内容が書かれているのではないか?内容を教えろ」
「そうよ、3枚目に撤回されて、私たちが優遇されるように王は文を出してくださったのよ」
と、王子と王女は3枚目にすがるように内容を読むように促した。すると一番年上に見える人、これまでの話からすると軍宿舎長であると思われるが、3枚目を読み上げた。
「わかりました。ちょうどザクス君も来てくれたことだし、読みます」
と軍宿舎長は僕に向かって話しかけたので、王子や王女、取り巻き達は僕を一度にらみつけてから、軍宿舎長のほうに視線を向けなおした。
「3枚目にはこう書かれています。
軍宿舎長殿。
今年、軍役に服す一人の者について以下のように対応するように。
国王の命令である。
ローレム村出身のザクスという若者に軍役期間中、特権部屋へ住むことを命じなさい。
同居人については、彼に選ばせるように。
彼が選び、相手が同意した場合は特権部屋への同居を認めるものとする。
ただし、同居人が特権部屋の使用や特権について誇り、ローレム村のザクスを虐げるのを見つけるものがいた場合、その同居人は独房で3か月以上過ごすことを厳命されるものとする。
これは国王の命令である。
命令を取り下げることはない。
ローレム村のザクスが特権部屋を使用できない場合は以下のとおりである。
・出兵により軍宿舎に帰ることができない場合。
・何かの罰・罪により独房・牢に入れられている場合。
特権部屋は国に対して益となる功績・働き・戦果を齎した者に与えられるものである。
ローレム村のザクスは以下の戦果を果たしている。
・ランクSSSの魔物、災厄魔獣ガルフレイムによる疫病の予防薬と特効薬の生成方法を見つけ、世に広めるきっかけを作った。
・王国最重要人物である『森の魔女』の住む場所を発見し、国が派遣した冒険者を案内した。
・ランクSSの魔物、怪鳥ゲルーに攫われた騎士や国民を救出した。
ローレム村のザクスは個人の能力とは関係なく重要人物とし、特権部屋を使用させるものとする。
以上である。
アルムレイエット王国国王
カイザードレム・フェン・ヴァン・アウス・アルムレイエット
とあります。これがその手紙で、サインと印付です」
僕は驚いて、聞き直してしまった。
「ちょ、ちょっと待ってください。僕の特権部屋の割り当てが、国王様の命令なのですか?僕、国王様と面識は全くないのですが」
「そうです。ザクス君。君は村人だからあの広い部屋と違う部屋を希望しに来たのでしょう?同じ手紙が、軍司令部にも届いていますよ。国王様の命令です。別の部屋への移動は許可されません。受け入れてください。そして、同居人は慎重に選ぶべきです。同居人は不注意などで簡単に3か月の独房入りが発生しますので。助言としては貴族や王族の人と同居人になることはお勧めしません。これまでの人生での考え方や生き方から、村人のザクス君と自分たち貴族、王族は立ち位置が上なので見下すような会話などは普通の行いですが、その行いは、国王の命令によって、軍の指導者や、私たちから見ると独房決定の行いに見えますので」
その話を聞きザクスはめまいを覚えた。ザクスはその場にいた王子や王女とその取り巻きに視線を向けたが、目があった時には忌々し気に一度睨むが、皆に視線を外された。
ザクスはそもそも特権部屋のある意味を知らない。
そのため、その詳細も聞く必要があると思った。
案内の人は僕がその意味を知っているかのように説明したので、全く理解していない。
なので、問いかけようとしたところで
「王子様と王女様そして、ともにいらした皆さまは退室をお願いします。これからここにいるザクス君と話をしなければならないので」
と王子様たちに話しかけたので、彼らは忌々し気に睨みつけてから、皆、退室した。
するとこちらがまだ、閉まった扉を見ていたにもかかわらず、話しかけられた。




