第2話 「そもそも大天使様ってなんですか」
読んでいて「ん?」と思っても気にしない
俺も書いていて「ん?」ってなるから
☆☆☆
部室を出た俺は、とりあえず一番近い家庭科室を目指していた。
放課後の家庭科室は料理部の部室として使われている。そしてそこには、弥生から貰った紙に書いてあった5人のうちの1人、料理部所属の『理想の嫁』五十嵐睦がいるはず。
ここで二つ名について説明しておこう。二つ名、というのはよく漫画とかでも見る、周りから付けられたあだ名、通り名みたいなモノのことだ。この学校では、生徒たちの間で二つ名をつけるのが流行っていて、それなりに名の知れた生徒には二つ名がつけられている。
一見適当につけているかのように思われる二つ名だが、ちゃんと理由があるらしい。『理想の嫁』は、五十嵐睦が海外でもかなり有名な料理人と数々の本も出している料理研究家の間に生まれた子供で、五十嵐自体も絶品の料理を作る才能があり、それに加えその可愛さから「毎朝お味噌汁を作って欲しい」という意味を含めて『理想の嫁』と呼ばれている。
と、弥生から貰った紙に書いてあった。つまり、嫁にしたいという願望から生まれた二つ名ということだ。……ちゃんとした理由か、これ?
疑問に思うこともあるが、そもそも生徒たちが勝手につけた二つ名だし、深い理由を期待するほうが間違っているのだろう。
「お、いい匂いが」
そんなことを考えている間に、家庭科室についた。中からは嗅ぐだけでお腹が空いてきそうな、いい香りが漂ってくる。……この匂いは、カレーか?
いきなり中に入るのも邪魔かな。とりあえずまずは様子見ということで、ドアをほんの少しだけ開けてその隙間から中を覗いてみる。
「流石五十嵐さん! 俺たちと同じ材料で作ったはずなのに輝いてるよ!」
「輝いてるなんて、気のせいだよ」
「何度食べても睦ちゃんの料理は美味しい!」
「そう言ってもらえると、作ってよかったな」
「あー、毎日でも五十嵐の料理食いてぇー!」
「ありがとう。そんなに喜んでもらえるなら、毎日でも作るよ」
「ま、マジで!?」
「うん。あ、土曜日と日曜日は部活ないから無理だけど……」
「あ、やっぱりそういう意味だよね……」
「ど、どうして急に落ち込んじゃったの?」
「あはは、睦ちゃんは気にしなくていいのよ。それより、睦ちゃん私の嫁にならない?」
「えぇえ! そ、そんな冗談はやめてよぅ」
「照れちゃって、可愛いんだから」
「本当に五十嵐さんは『理想の嫁』だよな!」
「だから、その呼び方は恥ずかしいって」
何人かの生徒に囲まれ鍋の前に立っている、ポニーテールの女の子。手元の写真と比べてみるが、どうやらあの子が五十嵐睦で間違いなさそうだ。
しかし、『理想の嫁』と言われているだけあって、料理部に所属している男子生徒は皆五十嵐に好意を寄せているように見える。それだけならまだしも、女子生徒にもなかなか人気があるようで、『理想の嫁』と言っているのは男女ともになのかもしれない。
身長は弥生より少し高いくらいか? まあ五十嵐は弥生と同じ1年生だし、一般的な身長と言えるだろう。体型は……ここからじゃよく見えないな。顔写真でも判断できないし、弥生はもっと、スリーサイズとかそういう情報を書いといてくれればよかったのに。
まあここで文句を言ってもしょうがない。気になるのなら中に入って、この目で確認すればいいだけの話だ。
「…………」
中からは楽しそうな声が聞こえてくる。……どうやって中に入ればいいんだ。
いや、ドアからに決まってるんだけど、そうじゃなくて、特に理由があるわけでもないのに、部活中の、しかもめっちゃ楽しそうな空間にどうやって入り込めばいいというのだ。
生徒玄関前で歌った時は、『揺さぶりくん』の力があれば大丈夫だろうというのと、変なテンションになってたおかげであんな行動ができたが、本来俺はあまり人の輪の中に入るのが得意じゃない。高校に入ってから、特に部長の発明品のせいで散々な目にあうようになってからはだいぶましになったけど、中学の時の俺は結構人見知りというかコミュ障だったのだ。
「…………」
中からは絶えず笑い声が聞こえてくる。とても楽しそうだ。五十嵐もみんなの会話に律儀に反応していて、楽しそうな雰囲気は五十嵐が醸し出しているのかもしれないと思うくらいだ。
ああ、確かに五十嵐みたいなのが自分のお嫁さんになってくれれば、楽しい日々が送れそうだ。なるほど、『理想の嫁』だな確かに。
――ただ、その五十嵐の雰囲気に接する距離まで近づくのは、今の俺には厳しいようで。
「……ここからなら、裏庭が近いな」
俺はそっとドアを閉めると、次の女の子の場所へ向かうことにした。
今更ながら「これで俺、ハーレムとか作れるのか?」という致命的な問題に気がついたが、まあ、やるしかないよな。だってモテモテハーレムを作りたいし。
☆☆☆☆
俺は今、学校の裏庭にいる。裏庭というのは建物の裏側にある庭のことを指すのだが、周りを校舎で囲まれたこの空間を果たして裏庭と定義してもいいのかという疑問が浮かぶ。が、学校がそこを正式に「裏庭」としているのだからここは裏庭なのだろう。
そして俺が何故裏庭にいるのかといえば、それはもちろん女の子に会うためだ。裏庭は周りが校舎に囲まれているため、大きな音を出しても校外にほとんど漏れない。そのためここでは応援団と呼ばれる組織が昼休みや放課後、太鼓を鳴らしながら応援の練習をしている。
ちなみにこの学校には「応援部」と呼ばれる、応援団とは違う公認の部活動があるが、そこは名ばかりの不真面目な生徒が屯している組織になってしまっていて、今や部活棟の端に小さな部室があるだけだ。活動はしていない。
そうだとは知らずに「応援部」に入ったけど、余りにも不真面目すぎて退部するが、それでも応援がしたいという人たちが集まって出来たのが「応援団」という非公認組織だ。――というのを、前に弥生から聞いた。
非公認だと言われているものの、学校側から裏庭で練習することを許されているのだから、果たしてそれは非公認なのかという疑問が浮かぶ。が、学校が「非公認」だと言っているのだから非公認なのだろう。実際には「応援部」と内容が被るが、「応援部」は過去にそれなりの成績を残している由緒ある部なので潰すわけには行かず、それでも「応援団」を部として認めると色々と面倒だ。という事情があるというのも前に弥生から聞いたことだ。
「フレー! フレー!」
そんな複雑な組織である応援団の一行は、今日もそんなことを感じさせない大きな声で、元気ややる気を与えるような応援をしていた。ああやって気持ちのいい応援をしてくれる応援団が非公認だなんて、やっぱり理不尽さを感じるが先程のような事情があるし、関係者ですらない俺が口を出すようなことではないか。
さて、少しばかり応援団の説明が長くなってしまったが、そろそろ女の子の方の説明というか紹介に入ろう。
「頑張れー! 頑張れー!」
応援団、と聞いてイメージするのは学ランを着たバリバリ体育会系の男どもだろう。少なくとも俺はそうイメージするし、実際にそのイメージはほぼ正解だった。ただ違うところがあるとすれば、そんな男どもの中に紛れて一人だけいる女の子の姿だろう。
何列かになって並んでいる応援団の、その一番前の列にいて、周りの男どもが大きいせいかやけに小さく見える銀色の髪の短い女の子。頭にはハチマキをしていてちょっとブカブカの学ランを羽織っているその女の子こそ、弥生から貰った紙に書いてあった5人のうちの1人、応援団の一員で『目覚まし』の二つ名を持つ和流心如だ。
親は両方とも日本人で、ハーフでもクォーターでもないのだが日本人とは思えないほど美しい銀髪の持ち主。親も兄弟も黒髪なのに一人だけ銀髪なので養子とかなのではという噂もあるが、そこは未だ調査中。と紙には書いてあった。
確かにあれは日本人とは思えないほどの銀髪だ。太陽の光でキラキラと輝いていて、一瞬天使という言葉が頭によぎったほどだ。……そういえば、和流が『目覚まし』と呼ばれている理由やなぜ女子一人応援団に所属しているのかという情報は書いてなかったな。
弥生のデータは肝心な気になる部分が書かれていない。これはその情報を弥生が手に入れていないのか、それとも「気になるなら自分で直接聞け」という、それくらい聞き出せないと攻略は無理だという弥生からの挑戦か?
――いいだろう。どっちかは知らないけど、どっちにしたって俺は自分で気になる情報を本人から聞き出してみせる! そしてもしその情報を弥生が手に入れてなかったら高く売りつけてやるぜ!
「頑張れー! フレー!」
だが聞き出すのはまた今度にしよう。
いや、無理っすよ。あんなに人がいるのに聞きに行けませんって。そもそも練習の邪魔しちゃ悪いですし。練習が終わるのを待つのもだるいですし。
ということで、和流心如の攻略も後回し。まだ2人残ってますし、そっちで頑張ればいいでわけですし。
そう心の中で言い訳しながら、俺は裏庭を後にした。
☆☆☆☆★
弥生から貰った紙に書いてあった5人のうちの1人にして、この学校の3人の「華」の1人でもある『冷血の華』天野文に会うために生徒会室を訪れていた。
天野は3年生の女子生徒で、この学校の生徒会室の主。役職は生徒会長なのだが、役職名ではなく「生徒会室の主」と表現したのには理由がある。というのも、この学校の生徒会のメンバーは天野ただ1人という、生徒会としてそれで機能するのか不安が残る現状なのだ。なぜ天野しかいないのかは弥生の紙にも書いてなかったので分からないが、実際それで問題は起きていないらしい。それで、ただ1人の生徒会で、ほぼ生徒会室は天野の部屋みたいなものになっているので「生徒会室の主」と表現した。
これは弥生の情報ではなく、俺が聞いた噂だが、この学校には「特例生徒」と呼ばれる生徒がいるらしい。「特例生徒」とは学校に登校さえすれば授業に出席せずに、好きなことをしていていいという特別な生徒のことだそうだ。そして天野もその「特例生徒」の1人らしく、いつも登校してから下校するまで生徒会室にこもりっぱなしらしい。
そういう意味でも生徒会室は自宅以外のもうひとつの天野の部屋みたいなもので、「生徒会室の主」と言っても問題ないだろう。問題ないといえば、生徒会が1人きりなのに問題がないのは天野が1日中生徒会室にこもって仕事をしているからかもなの知れない。
さて、なんで天野文の見た目の描写もなしに説明ばかりをしているのかといえば、それは
「……開かねぇ」
生徒会室には鍵が掛かっているのか、開く気配はない。
中に人がいれば鍵が掛かっているなんてことはないだろうし、登校から下校まで生徒会室には天野がこもっているはずなので、鍵が掛かっているということは、それはつまり天野がいないということだ。
携帯をポケットから取り出し時間を確認。現在の時刻は17時57分。部活などの終了時間は18時30分で、生徒の完全下校時間は19時となっている。生徒会の終了時刻は他の委員会活動と同じ、部活動が終わる18時30分のはずだ。
この時間に鍵が掛かっているのは早すぎないか? もしかしたらトイレに行っているのかもしれない。天野はたった1人の生徒会役員、自分がいない時は鍵をかけるのが普通だろう。
そう考えた俺はしばらくドアの前で待つことにした。
「…………」
……暇だ。こういう時に弥生がいれば、いい感じの話し相手になってくれるんだけど、弥生は今頃校内を走り回って『学園の華』の情報を集めているだろうし、わざわざ呼び出すのも悪いな。
仕方がないのでスマホでもいじって暇を潰すか。
………………
…………
……
キーンコーンカーンコーン
「……結局、戻ってこなかった」
部活の終了時間を知らせる学校のチャイムを聞きながら、俺は呟いた。
あれからここを一歩も動かず天野を待っていたのだが、天野は姿を現さなかった。
そういえば、この学校の七不思議は実在する生徒やこの学校で起きた事件をモチーフに、これまた生徒たちが勝手に考えたものなのだが、その中のひとつに天野がモチーフになったものがあった。『生徒会室の幽霊』というど直球な、ひねりの欠片もないネーミングで、内容も「誰も姿を見たことがない役員が放課後の生徒会で一人活動している」というよくあるものだ。そしてモチーフが天野だというのは、生徒会で一人活動しているという部分――ではなく、誰もその姿を見たことがないという部分。
天野文という人間を、実は誰も見たことがないと言われている。天野は確かに学校に登校してきていて、生徒会室にこもって仕事をしている。「特例生徒」も必ず出席しなければならない行事ごとには天野ももちろん出席していて、行事の写真なんかを見ればちゃんと天野が写っていたりする。
しかし、写真や動画などの媒体を通してではなく、ちゃんと自分の目で、生天野を見たという生徒が全くいないのだ。……あ、嘘ついたわ。ちゃんと天野を見たというやつはいたわ。それも結構。ただ、そのどれもが遠くから黙々と作業している姿で、誰も間近では見たことないのだ。近くで見てやろうと近づくと、いつの間にか天野の姿が見えなくなってしまっている。だから天野をちゃんと見たことある人はいなくて、それを七不思議のモチーフにしたのだ。
なんで俺がいきなりこんなことを言いだしたのかといえば、それは
「誰も見たことのない天野と簡単に接触できると思ったのが間違いだった」
ということだ。
生徒会室に訪れて、鍵が掛かっていた時点で諦めるのが正解だったのだ。
今更思えば、「特例生徒」である天野がわざわざ時間を守って生徒会室に残る必要は無く、というか時間なんてものはあくまで目安であって、それよりも前に帰宅していてもおかしくはない。だから、やっぱり、俺はここに来て会えないとわかった時点で諦めていれば、無駄に時間を過ごすこともなかったということだ。
「はぁ……何やってんだろ、俺」
太陽も結構沈んできて、窓から夕日が差し込む廊下で一人、俺はふと我に返り虚しくなっていた。
☆☆☆☆★☆
「……開かねぇ」
校舎から出る前に部室に置きっぱなしだったカバンを取りに戻ってきたのだが、部室には鍵が掛かっていた。
30分前にもこんな光景を見た気がする。今日は本当、色々とひどい目にあってるな。
「どうすっかな」
カバンと一緒に帰宅できればそれが一番いいに決まっているのだが、携帯や財布はポケットに入ってるし、カバンの中にはそこまで貴重なものも必要なものも入っていなので、最悪このままここに置いて帰ってしまおうか。
鍵のかかった部室なら誰かに盗られるという心配もないし。というか盗られて困るものなんか入ってないし。せいぜい学生手帳くらいか? あれに住所とか書いてあるし。まあでもやっぱり置いて帰っても問題ないな。うん。
そう結論を出し、明日の朝一番に部室に取りに来ようと回れ右をしたところで
「古田、お前まだいたのか」
誰かに声をかけられる。そういえばやけに声もかけられる日だったなと、どうでもいいことを思いながら声がした方を向くと、そこには女性が立っていた。
俺は大体明らかに自分より年下に見える子を少女、同年代くらいを女の子、年上を女性と呼び分けている。今俺の目の前にいるのは明らかに生徒ではない、大人の女性。……まあ、ぶっちゃけ教師だ。
「……涼月先生、今日は学校にいたんですね」
「なんでそんなに驚いた顔をしているんだ。私はいつでも学校にいるぞ」
「その割には、普段全く見かけませんけど」
涼月紅葉。この学校の教師で、なかなかスタイルのいいピンク色のロングヘアーな女性だ。おそらくその髪は染めているんだろうけど、教師が髪を染めてしまっていいのだろうかといつも疑問に思っている。
涼月先生の担当教科は不明。ただどの教科も教えることができ、本来の担当の先生が急用で休んだ際などに代わりに授業に出て教えている。教え方はなかなかうまく、性格も親しみやすいフレンドリーな感じなので多くの生徒から人気。ただ、休み時間などに涼月先生と生徒が会話しているかといえばそうではない。そもそも、授業が終わるとすぐにどこかに消えてしまって、学校中を探しても出会えない。そんな低エンカウントモンスターみたいな存在である。――これも弥生から聞いた話だ。
確かにその通りで、実際授業以外ではなかなかお目にかかれない人物である。まあ、俺はそれ以外でも出会う場所があるんだが――というのは、実は涼月先生は我が発明科学部の顧問だったりする。だから部室に現れる時があるのだけど、それもごくたまになのでやっぱりなかなか会える人ではない。
そんな涼月先生に、部室前で偶然出会ってしまったのだから、そりゃあ驚くだろう。
「私も色々やることがあるんでな。それで、お前は部室の前で何やってるんだ? 中に入らないのか?」
「もう部活終わったみたいで、鍵がかかってるんす」
「そういえばさっきチャイムが鳴ってたな。なら早く帰ればいいだろう」
「そうしたいのはやまやまなんすが、まだ中にカバンがあって。でも鍵かかってるからどうしようかなーっと思っていたところで先生が来たんす」
「そうだったのか。……では、また明日な」
俺の話を聞いた先生は、そのまま立ち去ろうと――
「って、ちょっと待ってくださいよ!」
「なんだ古田。私も暇ではないんだぞ」
「いやいやいや。生徒が困ってるって言ってんのに無視しないでくださいよ!」
「無視はしてないだろう。一応声をかけてやった」
「声をかけたなら、最後まで助けてくださいよ! なんで話を聞いただけで行こうとするんすか!」
「正直に言おう。面倒くさい」
「あんた教師以前に人として最低だな!」
「大丈夫だ古田。私は人じゃないので最低ではない」
「何が大丈夫なんですか!? 確かにやってることは人じゃなくて鬼とか悪魔の所業っすけど!」
「おいおい私を悪魔なんかと一緒にするなよ。怒るぞ?」
「えぇ!? なんか理不尽すぎませんかその怒りは!」
「……はぁ。古田はキモイ――じゃなくて、うるさいな。仕方ないから助けてあげよう」
「なんでキモイって貶されたのかはわからないっすけど、まあ助けてくれるならいいっす」
とても疲れるやり取りの末、先生は渋々といった感じでポケットから鍵を取り出し、部室の鍵を開ける。
「ほら、さっさとカバンを取ってこい」
「ありがとうございます。けど――鍵持ってたなら最初から開けてくださいよ!」
「なんだ。せっかくこの大天使様が助けてやったのに感謝もなしに文句か」
「いや、お礼は言いましたよね!?」
「いいか。感謝というのはだな、まず土下座して」
「土下座を求めてたのかよ……」
「土下座して」
「はい、土下座して?」
「いや、土下座して」
「……は?」
先生が床を指さしている。……あれか、土下座しての「して」は「~して、」ではなく「~しろ」って意味の方か。後ろに言葉を続けるんじゃなくて。
「土下座して」
「……はい」
何故だかわからないけど、先生の言葉に逆らえずに土下座してしまう。
「『この人間ごときのために大天使様の労力を割いていただき、誠にありがたき幸せです。これからは大天使様にこの身を捧げる所存でございます』と言いながら三回頭を下げる」
「この人間ごときのために大天使様の――ってなにやらすんですか!」
「ちっ」
土下座したあたりから体の制御が効かなくなり、先生の言葉を復唱していたが、途中で頭に何かが入り来るような感覚がし、正気を取り戻す。
一体何をしようとしていたのか自分でも分からないが、何かが入り込んでくるあの感覚は「妄想病」が発病するときの感覚。よくわからないとよくわからないがぶつかり合い相殺されたのだろう。……いや、何言ってんだろう俺。
「そもそも大天使様ってなんですか」
「ほら、こんなことしてないでさっさとカバン取ってこい」
「やらせたのは先生なんすけどね」
今日一日色々ありすぎて疲れているのかもしれない。もう何がまともな事で何がおかしいことなのか自分でもわからなくなっている。
…………。
早く家に帰ってゆっくり休むか。
「カバンあったか?」
ぼーっとした頭で部室に入り、そこで立ち止まっていた俺は先生の言葉でハッとし、急いでカバンを持って外に出る。
「ありました」
「そうか。じゃあ気をつけて帰れよ」
「はい、さようなら」
先生は鍵をかけると去っていき、そして姿が見えなくなる。
「……?」
そういえば先生に出会うなんて珍しいな、なんて思いながら俺は部室を後にした。
最近ばっちゃの暴走が酷くて悩んでいる、木葉っす
第2話にして既にシナリオが崩壊寸前っす
おかしいっすね。なんでこうなったんすかね
前半部分、だいたい「☆4」あたりまで個人的に順調だったんすよ
しかし「☆5」の途中あたりで「ん?」ってなって、「☆6」では完全に崩壊寸前になっちまいやした
完全に崩壊寸前ってなんか日本語的に微妙な表現っすが、まあ語彙力の問題なので気にしないでくだされ。割と本編でもそういう部分が目立ちますが気にしないでくだされ
無駄に伏線貼ろうとしたり説明しようとしたりするからいけないんすが、まあ人には限界があって、俺の限界がここまでだったということで勘弁してくだせぇ
次の第3話では多少はマシに……マシに……ならないっすね。そんな簡単にマシになったら苦労しないわけですし、次回もこんな感じっす




