せかいのはんぶん(解答編)
(´・ω・`)いきなり最終回
「う、う~ん、光圀定食、ライス大盛りで…。」
霧島女子の膝枕の上でゴトウ君は意識を取り戻した。
「ゆういち、大丈夫?」
「はっ、ここは?テーブル席は?」
「未だ魔王城よ、終わったのよ。」
「えっ魔王城。」
「そうよ、負けちゃったの。」
「ああ、先輩が剣を避けて…。」
「そう、先輩に負けちゃったの。魔王はもう既に先輩が倒した後で。平和な国になっているって。」
「平和?トートリみたいな?」
「そう、トートリも帝国の一部で、周りの他の魔王は先輩が制圧済みか、友好国で少なくともニンゲンの町に攻め込む気はないみたい。みんなも無事だし。」
「ああ、みんな無事なのか。お姫さまは?」
「今、先輩と話し合い中、国境を決めるんだって。」
うむ、どうやら、ゴトウ君に後遺症は無いようだ。
王女との話し合いは実務者による交渉を行うコトで決着した。
しかし、随分とニンゲン族はコチラとの交渉を嫌がっている様にみえた。
何らかのニンゲン族内での密約か方針が在るのだろう。
大河の国境が決まったら、取水権や漁業権の決定を行わなければならない。
何とか通商交渉まで持って行きたいが。
ニンゲン側は、旧ブッチ領と魔王領の森に随分と執着している様子だ。
ニンゲンが領土的野心を捨てなければ、恐らく近い将来に戦争になるであろう。
不機嫌そうな王女を尻目に後輩たちに声をかける。
「大丈夫か?ゴトウ君、霧島さん。」
「あ、先輩。はい、大丈夫です。」
「随分と苦労したようだな。」
「もう、ほんと!日本に帰りたいわ。」
霧島女子の口ぶりでは異世界での生活にウンザリしている様子だ。
「おお、そうか、実はコチラでも日本に帰る手段を探すように部下に命令してある。」
「え?帰れるの?やった!」
「あの?先輩?ソレって”世界の半分”とかいう話じゃないですよね?」
何を言っているのか良く解からないゴトウ君を尻目に帝国側の女性陣に向かって悪魔を呼ぶ。
「ジズ。こちらに。」
「は。は、はい。」
緊張しているのかゆっくりオドオドしながら歩くジズ。
うむ。魔王以下、帝国女性陣からの視線がジズに集まっている。
「ジズ、日本に帰る方法はどうなっておる?」
「え?あ、はい、実は…。その…。」
うん、口が重い様子だ。未だ、良い結果が無いのであろう。
「まあ、良い、今すぐで無くても構わない。」
後輩たちに向き直り頭を下げる。
「すまない、霧島さん。ゴトウ君、未だ方法は確立していない様だ。」
「え~、な~んだ。がっかり。」
「すいません先輩、みゆきちゃん、コレから、どうしよう。」
「あ、でも、」
ジズの発言で皆の視線が集まる。
特に帝国女性陣からの視線は謎のオーラをまとっている。ムー的なモノとは別のオーラだ。
「帰る、と言うだけならば、出来ます。」
「む?ソレは?」
「は、はい、コチラから大量の魔力を使い”次元の門”を開き、対象者を門から送り出します。送り先は対象者の”行きたい場所”又は”強い心のつながりのある場所”になります。」
「む?ソレは日本へ帰るのとどう違うのか?」
「は、はい、コチラからは正常に門を出たとしか解かりません。本当に行きたい場所に出たのか”向うから戻る手段が無い”場合、コチラからは解かりません。」
「うむ。ソレは危険だな。」
「はい、世界を越えない同じ世界への移動の場合は成功が確認出来ているのですが。異世界へ行った場合は確認できた事例はありません。」
「む?ソレでは”いしのなかにいる”とかイキナリ海の上とかは起きていないのか?」
「ええ、概ねは”行きたい場所”の近くに出るので、”危険は無い”と言うか。心の防衛反応で付近の安全な場所に出現するようです。」
「なるほど、強く日本に帰りたいと思えば帰れるのか?」
「え、え~っと、もっと、しっかりしたイメージが必要です、”あの日あの場所。”とか、”あの時あの町のあの噴水の前”とかです。」
「それ、スゴイじゃない!!帰れるじゃん!!」
興奮する霧島女子。勢いに少し後ずさる悪魔。
「え、でも。今まで成功したかが判らないんですよ。」
「イメージすれば良いんでしょ。簡単よ。」
「ああ、実際に二人で行った場所ならイメージは簡単だね。」
「そうよ!!二人で行った場所とか。」
「あ、はい、一度行った場所や、何度も訪れた場所はイメージし易いので成功率は跳ね上がります。」
二人で手を取り合って喜ぶ後輩たち。
「ジズよ、大量の魔力と言うのは問題無いのか?」
「え、はい、元々は悪魔国でドラゴンの被害を減らす為の手段の一つでした。あと、ドラゴンの居ない場所に町を移す計画も在ったそうですが。当時はかなり力を入れて実験していました。世界を超えた場合は何人も悪魔が行方不明になったそうです。その甲斐もあって魔法は確立しましたが、魔王クラスの魔力が必要だったので、次第に廃れていきました。」
「しかし、魔王クラスか…。魔王一人では身が心配だな。」
「あ、ハイ、当時は術者の補助の数を増やすコトで対応したそうです。魔王様や、エルムさん、シハルさん、リリンの補助が有れば術者の負担無く出来ると思います。」
なるほど、多くの悪魔が異世界に行ったのか。うーん、何匹か中世のヨーロッパとかに居そうだな。
「あの、ソレ、ワタシも手伝わせてクダサイ。」
部屋に通る魔法少女の声、固く握った杖を持つ手が震えている。
「うむ、それは助かる。」
優しく答える。そういえば召喚したのは、この娘だったな。
「魔法使い、裏切るのですか!!」
「魔法使い殿、それは王家への反逆です。」
咎める王女と低い声で柄に手を掛ける女騎士。
「わ、ワタシ!!帝国に亡命シマッしゅ!!」
震える声で叫ぶ魔法少女。ちょっと噛んだ。
「くっ、させん!!」
素早く動く女騎士。剣を振りぬく。しかし、剣は虚空をすり抜けた。
魔法少女の前には肉切り包丁を持ったネコミミ女中と短剣を抜いたダークエルフ嬢が居た。
どうやら、魔法少女を助けたらしい。
「魔法使い、今なら聞かなかったコトにします。戻って来なさい。」
酷く冷淡な声でささやく王女。
「イヤです!、サムソン王国に帰っても、召喚魔法の維持の為ダケに、あのブタの様な男と結婚させられるだけです。」
「叔父様、ヨーク大公爵は骨太なだけでデブでは無いのですよ。」
「あれで骨太ならSAN値偽装もイイ所です、どう見ても毛ダルマコッテリデブです、あんな男の子供を生むなんてタエラレマセン。」
「っく(笑)、ソレは同意できるが、魔族に下っても、ソコの筋肉ハゲダルマに蹂躙されるだけだぞ!!」
剣をコチラに向ける女騎士、ツボにハマッタようで、剣先が震えて口を押さえて笑いを堪えている。
「ソレコソバッチコイデス!!」
「俺は剃っているダケでハゲではないぞ?」
内輪もめが変な方向に向かいそうなので停める。
興奮して息の荒い魔法少女に向き直り。答える。
「そのほうの願いを聞き入れよう。」
「アリガトウゴザイマス!!ワタシ!ニクドレイトシテガンバリマス…。」
「いや、亡命の方の話だ。もちろん悪いようには扱わない。」
「ふっふっふ、二番奴隷たる、このエルム様の言うことを聞けば皇帝陛下のお情けを受けるコトなど容易いにゃ。」
「ハイ!オネガイシマス先輩!!」
「おい、」
「あ、デモ、イタイコト、トカ、キタナイコトハ、ヤメテクダサイ。」
「ふっふっふ、ソレこそ肉奴隷最上級者の魔王様レベルにゃ。」
「おい!」
「ふっふっふ、魔王様はすごいにゃ。あんなの壊れちゃうにゃ。(ハアハア)」(・ω・)☆>(-_-;)バシッ!
「エッ!ソンナニ…スゴイ…。(ハアハア)」 (;-_-)<☆(のヮの)バシッ!
発情魔法少女と壊れネコミミ女中を正常に戻す。”痛いですにゃ…。”、”ああ、コレガダメージトイフモノカ…。イイ…。”
この道具はホントに正常に動作しているのだろうか?
剣呑な王女と女騎士に国境まで送ろうと提案したが、勇者さまの帰還を見届けるまで帰らないと固辞された。
早速、ジズと魔法使いに命じて帰還の為の準備を始めた。
三日目には動作テストも良好で、四日目の昼前に帰還することになった。
ソレまで勇者一行は軟禁状態だった。正直、すまん。
「あの、先輩、良いのですか?コチラに残って。」
「ああ、すまないなゴトウ君、もう、俺には家族と家が在るんだ。学問を半ばで止めるのは恥ずかしいが、もう既に身を立てている様な物だ。之からは時間の空いたときにしか学問を許されない身だ。」
「あ、あの、何か向うで伝えたい人とか居ますか?」
手を差し出したゴトウ君と固い握手をする。初めて握手した時より固い男の手になっている。
「家族に…。いや、止めておこう。こんな話は向うでは到底信じてくれないだろう。もし万が一、俺の家族に聞かれるコトが起きたら。”不肖、江頭三郎は男としてやる事があり、帰還することは有りません。”と言っておいてくれ。きっと親父なら解かってくれる。」
「エガシラよ…。ホントに良いのか?向うには家族が居るのだろう?」
心配そうに話す、魔王、魔物の女たちは皆、一様に不安げな表情だ。
「俺の家族はココにいる。ゴトウ君達で帰還場所が決まっているのに、俺が入ったら目的地がズレてしまうだろう。」
霧島女子も手を差し出した。
「センパイ、キモイとか言ってごめんなさい。いろいろありがとうございました。」
「いや、至らないところも在ったが、何とか帰還の目処が立って良かった。君たちならコレからどんな困難でも乗り越えて行けるだろう。相手の気持ちになって考えるのだ。」
やらわかい手と握手をする。彼女と握手したのは何時だったか…。思い出せない。
魔方陣の中に進む後輩たち。
きっとコレから学問に励み。社会の役に立つコトを覚え。家族を作って。次世代を育んで往くのであろう。
俺はもう、日本では役に立てないが、進む道は同じである。
「そ、それでは始めます。」
準備完了のジズの合図に頷くと、魔物の女達の両手からムー的怪光線が発せられ。
魔方陣が眩く光ると後輩達の姿形は無くなった。
「じ、魔方陣正常に動作しました、次元門は正常に動作したようです。」
悪魔の言葉に皆、安堵する。
いや、不機嫌そうに眺める人間達には面白く無いのであろう。
「さあ、後輩達は無事に帰ったぞ。君達も無事に送り届けよう。」
「…。」
「さあ、王女様…。」
女騎士に促され部屋を出る王女、ホルス将軍の警護の元。サムソン王国の王都まで送り届ける予定だ。
実務者協議はホルス将軍に丸投げした。
将軍には”ニンゲン族はコチラと戦争をしたがっているが、相手の挑発に乗らず、冷静に紳士的かつ対等な交渉に留意せよ。”と伝えた。
将軍の表情はいつか見た深い溜息を思い出した。
”もし、決裂して戦争になった場合は?”と聞かれたが、”防衛戦なら苦戦するが国境まで押し返せる。和平が十年以上続けば相手を蹂躙できる。”と答えた。
将軍は晴れた顔になって”必ずやご要望にお答えします。”と言ったので。まあ、任せても問題無いだろう。
さあ、次の戦争の準備をしなければ…。
領民を鍛え将兵を揃えなければ。
徴兵制にしても良いかもしれない。
広く聖道を広めるためだ。
拳を握り締め心に決める。
「作り上げてみせるぞ、精強無比な兵、正しい選択が出来る士官、理想の筋肉軍団をな…。」
ぼくたちは魔方陣の中央で向かい合って両手を握った。
もう、何が在っても離さない。
みゆきちゃんの瞳に写るぼくの顔に、ぼくは、強く心に誓った。
「そ、それでは始めます。」
声がかかり先輩が無言で頷く。
魔方陣が激しく光って…。
眩しく目がくらみ急に暗くなり目眩で一瞬目が見えなくなった。
序所に目が慣れてくるが、ソレと共に騒がしい雑音、低い改造トラックのマフラーから出る音とブレーキから発する高い音、無数のタイヤがアスファルトを斬り付ける音。
懐かしい音が溢れた。
そして、ケミカルな排気ガスの香り。
こんな物がうれしく感じたことなんか今まで無かった。
目が慣れると目の前にはみゆきちゃん。
つないだ手の感触も本物だ。
ああ。ぼくは帰って来たんだ。
「ゆういち、だいじょうぶ?」
「ああ、ごめん、みゆきちゃん、まだ、目が慣れて無いんだ。でも、帰ってきたね。」
「ええ、帰って来たわ、でも、ここ…。」
「ここは・・・。」
目の前に車が走っている道があり、足の感触は懐かしいアスファルトの地面だ、周りを見渡すと日本の何処かの街。
懐かしい、見知ったチェーン店看板が光っている、今は夜なのか?星は見えない夜空だ。あの世界の満天の星空ではない。
今はドコだ?腕時計を見る。
腕時計にはなつかしい、電波受信中表示が出ている。
「ああ、みゆきちゃん、あれから12時間も経ってない!!まだ、あの日だ!!」
「ええ?うそ、」
あわててスマホを取り出すみゆきちゃん、しかし、みゆきちゃんのスマホは電池切れのままだ。
腕時計を見せる、日付が戻っている。
二人で見つめ合う。
みゆきちゃん、ニヤニヤしている。いや、ぼくもしているのだろう。
思わず抱合いぐるぐるとその場で回る。
興奮で息が上がり落ち着くと回りを観察する。
ドコかで…。いや、思い出した、大学の近くの中華チェーン店だ、二人で合格発表を見た帰りにココで昼ごはんを食べた。
あの、自動扉の風除室内で、席が空くのを二人で待っていた、”大学生活でナニが必要か?”とか”何を持って来よう”とか、”あのサンプル本物かな?”とか。
ああ、二人の想いでの場所だ、間違いない。
店内に入ると、ヌルヌルする床に、イマイチ意味の解からない店員の掛け声。
ああ、ぼくは日本に帰って来た!!
”コーティール、ソーハン、エンザーキー”
『おはようございます。朝のニュースです、昨夜、名路鵜県名路鵜市の中華料理店に少年A(18)と少女B(18)が現金を持っていないのに商品を注文して補導されました。店員の通報により駆けつけた警官が補導したところ。長さ90cmを越える刃物を所持していた為。銃刀法違反の現行犯逮捕しました。その際の言動が不明瞭であったため、任意で薬物検査を行った所。少年Aの尿から薬物反応が出た為、県警は使用薬物と入手経路を詳しく調べています…。』
流れる町を、電車の窓から見ている、ああ、次のお客さんの約束まで余り時間が無い。
前のお客さんとのトラブルで時間を喰ってしまった。
ぼくは、アレから大学に戻った、12時間での2年間はなんとか取り戻すことは出来たと思っていた。
教員免許を取ることは出来た。良いところまで行ったが、なかなか教員採用が取れなかった。
結局、中小企業で、腰を落ち着けて教員採用を狙ったがダメだった。
後から解かったが、未成年の薬物と銃刀法違反の補導履歴がいけなかったらしい。
まさか、回復薬で薬物反応が出るなんて思わなかったんだ。
ぼくは、結局、二年の夏にみゆきちゃんとは別れた。
二年の春からみゆきちゃんは、自己啓発サークルにのめり込み。
意見が合わなくなり、ケンカが多くなったので疎遠になってしまった。
手をかざすコトで傷が治るのでサークルの中心になっていた。(治癒魔法を使っていた。)
以前は駅裏等でビラを配って会員を集めていたのに。
今では教団の顔としてTVにも出ている。
雑誌でも広告記事に水晶や壷、お札の通販で紙面を飾っている。
電車がトンネルに入った、真っ暗の窓に映るぼくの姿はくたびれた様に見える。
そのぼくが問いかける。
「ああ、センパイ。ぼくの家族はドコに居るんでしょう。見つかりません。」
あとがき
やあ、(´・ω・`)ようこそ、スローターハウスへ。
この話はサービスだから、まず読んで 落ち着いて欲しい。
じつはこの話も、「魔王のくせに生意気だ(にゃ)」って言いたかったダケで書いた話なんだ。
ギャグを多めにしたつもりだったんだよ!!
最終話は出来ていたのに、途中のリア充を書くのが大変で大変でモウ・・・どうしようか?と。
対照的にネコミミ女中の会話は進む進むw
モウ全部ケダモノだったらイイのにね~♪
結論∴王石はリア充には拒否反応がスゴイがリア獣はOK。リア充爆発しろ。リア獣もふらせろ。
次のお話は…。
夏なので卯田君を片付ける。
新作のプロットが…。
追伸
なお、江頭君には続きのネタが在りますが、全部戦争なので気が向いたら番外編を書く!!




