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永久の輪廻  作者: 大野 幸村
第一章
6/7

告白の後に

伝えたいことがあるという輪廻の言葉と思い詰めた顔を見て、オルガはふっと力を抜いて笑みをこぼした。


「それは神の呪いの事かな?」


(!!!!!)


輪廻は驚愕の表情を浮かべ狼狽えた。


「知ってたのですか?一体どうやって?何時からですか?」


オルガに続けざまに質問を投げ掛ける。


「そんなに慌てなくても大丈夫じゃよ。一つづつ答えていこうかのぅ。」


そう言ってオルガは目で促し、街道を外れて森へと歩いた。黙ってついていくと、木が斬り倒され広くなった場所に出た。

二人は切り株の上に腰を下ろした。そして、オルガが話を切り出した。


「まず、どこから話をしようかのぅ。」


「一体何時から知っていたのですか?」


輪廻が慌てないように気を付けながら質問

を出す。そして、オルガはそれに答えるかたちで話し出した。


「うむ、まずその質問じゃが、わしは初めてお主を見たときから知っておった。まあ、知っておったというよりは気付いたというべきかな。

輪廻や、その左腕にはまっている腕輪は、神の呪いを受けた者にしかはめられる事の無い代物じゃ。それは、一度はめられると、呪いを解くか装備者が死なない限りは外れない。まあ、ギルドのブレスレットと似たような物じゃな。」


輪廻は、右手の手首にはめられているブレスレットと左手の二の腕辺りにはまっている腕輪の感覚を確かめた。


「そしてその腕輪はSランク以上の冒険者なら実物は見たことが無いにしても文献等で知識としては知っておるはずじゃ。」


「そうだったんですね。」


ここである事実に気付いた。


「と言うことはオルガさんはSランク以上の冒険者だったんですか?」


「昔の事じゃよ。当時わしはダブルSにランク付けされておった。だが実力的には、Sランクと大して変わりはしなかったよ。

ただ魔法剣士というスタイルが当時では、有効な場面が多かったというだけじゃった。今では魔道具等が増えたせいもあり、そこまで優位なスタイルではないがのぅ。」


その話を聞いて輪廻は驚きを隠せなかった。

いつの時代でもSランクは少ないながらもそこそこの人数がいるのに対し、ダブルS、トリプルSにランク付けされていたのは世界中で10人から多くて15人前後。今現在は、歴史的にもかなり少ない状況で9人だけのはずだった。


「そんな凄い人に訓練していただいていたなんて光栄です。」


「いやいや、今ではロギンスも言っていたようにただのじじいじゃよ。

それで、話の続きじゃが腕輪にはまっておる宝石は色で対応した呪いが分かるようになっておる。まあ神のかける呪いじゃから全ての種類が分かっておる訳では無いがのぅ。

確か輪廻の腕輪には、琥珀色と青色の宝石がはめられておったのぅ。琥珀色の宝石は、堕天の呪いじゃろう? もう一つの青い宝石の色は、初めて見るものじゃが。」


目で促された気がして輪廻は左腕の腕輪が見えるようにコートを脱ぎ、腕捲りをした。


「対応している色は初めて知りましたが、その通りです。僕のかけられた呪いは、堕天の呪いともう一つは、時戻りの呪いというものです。」


ここで輪廻の告白を受け、今度は逆にオルガが驚愕した表情を見せる。


「なんと時戻りの呪いとは。あれは、かけられた人間の記憶が転生の時に全て失われてしまう為に、今まではっきりと分かっていなかったはずじゃが、どうやってそれを知ったのじゃ?」


「覚えていたんです。僕は今回が初めての転生でしたが、前の人生の時から記憶力が人並み以上だったんです。完全記憶と呼ばれるような映像とか場面の風景までは覚えていられないですけど、一度読んだものや人から聞いた話等は、物心ついた時から全て覚えています。」


「なんと、わしは、冒険者時代この大陸を活動拠点にしておったのじゃが、そんな凄い能力聞いた事がない。輪廻の生まれはどの国だったのじゃ?」


この質問に輪廻は、少しの間考えを巡らせるがはっきりと告げた。


「僕は、この世界の人間では無いと思います。異世界からやってきて訳が分からないうちに呪いをかけられ、今ここにいます。」


この告白に今までで一番のおどろきを見せるオルガに事の経緯を説明した。


元の世界は説明しづらかった為、こちらの世界に偶然来てしまった事、神界の森を燃やしてしまった事、女神との話の内容、呪いをかけられた事、そして気が付いたらコンエアの修道院の前にいた事をゆっくりと話した。オルガは、口を挟むことなく頷きながら話を聞いていた。


「そうじゃったのか。ふむ、と言うことは輪廻に呪いをかけたのは、時の女神シアリスじゃな。ここ数十年の間に堕ちた女神は15年前のシアリスだけじゃからな。」


「あの人はシアリスという名前だったんですね。堕ちた女神と言うことは、男性の神様は他にも堕ちた人がいるんですか?」


「そうじゃ。本来神は、数千年から数万年単位でしか死ぬ事はない。死ぬと言うよりは、転生に入るという感じじゃのぅ。そして数百年かけて転生し直し、また神の座に座るのじゃ。本来なら輪廻がかけられたような呪いにしてもかけると死ぬと言うことは無いはずじゃ。シアリスがそれほど弱っておったということかのぅ。

しかし、ここ数百年の間に堕ちた神は20以上おる。これは、通常ではあり得ない事なのじゃ。だが、原因は未だに掴みきれておらん。後数十年の間には、最初に堕ちた神が転生してくるはずじゃから原因が分かる可能性があるというところじゃ。」


「そうだったんですね。じゃああの人は、僕に呪いをかけたから死んじゃったんですね。」


「いや、そうではない。普段の神の力であれば神界の森を復活させる事や呪いをかけるだけでは、死ぬまでの力の消耗にはならないはずじゃ。何か他に原因があったように思うのぅ。

それにしても、2つ呪いを重ねてかけられるのも稀な事なのじゃが、時戻りの呪いと堕天の呪いとはのぅ。」


「その2つはどういう呪い何ですか?」


「そこなんじゃが、堕天の呪いは数ある呪いの中でも効果があまり分かっていないものなのじゃ。

分かっている範囲では、時戻りの呪いは死ぬことも出来ず、何らかのタイミングで記憶と身に付けた魔法等の能力を失い、この世界のどこかに転生するというものじゃ。転生場所は修道院や教会等が多いらしい。それは、神の最後の慈悲なのかもしれんがのぅ。

しかし、この呪いに関しても本人が転生してしまうのと記憶を無くしてしまうことで正確なことまでは分かっておらん。消えてしまうタイミングも人それぞれらしいからのぅ。わしのように気づく人間は少ないはずじゃ。だから、普通の捨て子として育てられる事が多いらしいのぅ。」


「そうなんですか。堕天の呪いで分かってることは何かあるんでしょうか?」


「堕天の呪いに関しては、死ぬときに何かが起こるということしかわかっておらん。それにこの組み合わせは、死ななくなる呪いと死ぬときに起こる呪いが合わさっておるから、どういう効果が生まれるのかはわからんのぅ。」


「そうですか。」


「うむ。それに本来なら時戻りの呪いは、記憶が必ず失われるはずなのじゃが、輪廻の持つ記憶力の高さが原因なのか、輪廻が異世界人という事が原因なのかは分からぬが呪いがねじ曲がっている可能性が高いのぅ。だから神すらも予想していなかった効果を生んでおるかもしれん。」


「そうですか。神の呪いを解く方法は分かっているんですか?」


「うーむ。それもわしが冒険者だった頃には、はっきりとしておらんかった。今ならあの頃よりは分かっておるかと思うが。しかし、情報を得る為には、輪廻がSランク以上にならねばいかん。神の呪いは基本的には極秘事項じゃからのぅ。」


「そうなんですか。Sランクですか。」


「輪廻、わしはお主なら出来ると信じておるよ。わしが教えられることは、全て教えたつもりじゃ。」


ハードルの高さに暗い表情をしている輪廻に、オルガはしっかりとした口調でそう告げた。


「ありがとうございます。いつまでこの体でいられるか分かりませんが、精一杯やってみます。」


「うむ。わしもついていってやりたいところじゃが、今のわしでは足手まといになることの方が多くなりそうじゃからのぅ。」


「大丈夫です。自分なりにやれるところまでやってみようと思います。それにオルガさんは修道院を守っていかないといけないですし。」


「すまんのぅ。頑張れとしか言えんが、決して無理はするんではないぞぃ。」


「はい。そうします。本当に今までありがとうございました。」


そう言って輪廻は、深々と頭を下げた。


「よいのじゃよ。わしもお主と出会えて本当に楽しかった。」


お辞儀をしている輪廻の頭をくしゃくしゃと撫でた。輪廻が頭を起こすと、オルガは続けて話しかけた。


「さて、これからの予定は何か考えているのかのぅ? もし具体的に決まってないのであれば、王都ビザラスに行ってみてはどうかのぅ。あそこはこの国どころかこのケーキース大陸でも一番の都じゃから、Sランクでなくとも何かしらの情報がつかめるかもしれん。ギルドも大きく、ビザラスを拠点にしておる冒険者も多い。

腕を磨きながら、情報を得るには一番近道じゃと思うのじゃが。」


「一度は行ってみようと思ってましたので、まずはビザラスを目指す事にします。」


「うむ。そうしてみなさい。わしの渡した御守り袋を出してみてくれんか?」


輪廻は、促されるままポケットから御守り袋を取り出した。


「それは、わしが昔『時のダンジョン』で手に入れたアーティファクトじゃ。見た目はただの小さな巾着袋じゃがのぅ。10個までなら、どんな大きさの物でも入れておける。じゃから冒険で必要だと思うものを入れておいた。テントなんかも入れておいたからのぅ。お金を節約したいときなんかには使っておくれ。」


「遠慮なく、使わせていただきます。」


「うむ。ビザラスまでは、普通の人間の足で3週間ぐらいじゃ。輪廻ならもう少し短くなると思うが、焦らず体調に気を付けながらいくのじゃぞ。」


「はい、ありがとうございます。では、そろそろ行こうと思います。」


「旅の無事を祈っておるよ。また元気な姿を見せておくれ。」


「必ず誕生日には帰ってきます。ではオルガさんもお元気で。」


「またのぅ。気を付けてな。」


そう言い合って二人は別れを告げた。

旅立つ輪廻の背中を、オルガはいつまでも見つめていた。







コンエアの街を出発してから、2週間がたっていた。

輪廻の初めての旅は、概ね順調に進んでいた。輪廻は、ここまで最短ルートで王都ビザラスへ向かっていた。

通常であれば、街道の近辺にある村に寄って体を休めたり、食糧を調達しなければならないのだが、オルガに貰った巾着の中にはテントや食糧等が入っていた。更には、日本で言うゴエモン風呂まで入っていたので街に寄る必要がなかったのだ。

食糧も巾着袋の中に入っている間は、腐ったりしないようだった。

ビザラスまでは、ゆっくり歩いても明日の夕方までには着ける距離だった。


森の木を切って作った薪に、火を着けながら巾着袋から取り出した風呂を設置する。

辺りに風の魔法を使い結界を張り、ゆっくり風呂に浸かって一日の疲れを癒した。

簡単なスープを作り、食べていると背後に何となく生き物の気配を感じた。

振り返り、耳を澄まし音と気配を探ってみるとどうやらモンスターではなく、人間のようだった。気配は一つではなさそうだった。

徐々に、近づいてくる気配に警戒を怠らず森の木々の間を凝視していると、声をかけられた。


「すまないが、食べ物を持っていたら分けてもらえないだろうか?」


その声の持ち主は、かなり衰弱しているようで足を引きずるように、輪廻の前に現れた。



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