なんと、シリーズ2作目以降の登場です!!
気がつけばいつの間にか、話が妙な方向へ流れていたというか……。
支倉が連れと一緒に姿を消した?
有給休暇を予定より早く切り上げて戻ってきた和泉と駿河から、あのヤクザが行方不明になったと聞いた時、友永はすぐには信じられなかった。だが。
2人から聞いたいろいろな話を考えている内に、納得して来た。
あの男がいろいろと表にできない悪事をやらかしているのは、もはや動かし難い事実である。
元は法に精通している弁護士だけある。どうやって網目をくぐればいいかぐらい、熟知しているだろう。
その支倉が失踪したということは……何かよほど、決定的な物証でも出たに違いない。
即日公開指名手配かと思いきや、どういう訳が極秘裏に探し出せ、との上からのお達しだ。
まぁ、今となっては正直どうでもいい。
それよりも。友永にはどうしても気になって仕方ないことがあった。
智哉の顔を見るなり『蓮』と呼びかけたホステスのことだ。
小橋は「関わるな」と言っていたが、もし何か息子に危険が及ぶようなことでもあれば……と、気が気でない。
そこで浮かんだのが、かつての同僚だった。
久しぶりに連絡を取ってみると、意外にも向こうもこちらを覚えていた。
訊きたいことがあるからどこかで会えないか。
これもまた意外に、すぐに相手も了承してくれた。
その日は当番ではなかったので、友永は早めに仕事を切り上げて退庁しようとした。
「友永さん、今日はずいぶん早いんですねぇ」
刑事部屋を出ようとしたところ、後ろから和泉に声をかけられた。
「智哉君とデートですか?」
「……ま、そんなところだ」
じゃあな、と立ち去ろうとしたのだが、
「友永さん。何を調べてるのか知りませんが……一人では危ないですよ?」
驚いて振り返る。
和泉は真剣な顔をしていた。
「事件化していないから動けないっていうのもわかりますけど、単独行動はやめた方がいいです。せめて、聡さんに報告してから……」
それは済んでいる。
しかし、今友永が彼に一番言いたいことは、
『お前が言うな』
「……てめぇ、まさか俺のパソコン覗いたのか?!」
和泉はにこっと笑うと、
「そんな悪趣味なこと、していませんよ。なんか友永さんが面白そうな動きをしてるって言いだしたの、あの北条警視ですから。それで僕もつい、興味を魅かれて……」
あのオカマ警視か。
奇妙なしゃべり方と独特のキャラに騙されやすいが、実はあれこれと県警内外の情報を探っているらしい。油断のならない男である。
それこそ監察官か、とツッコみたくなるぐらいだ。
「なんかありゃ、すぐ連絡するからよ」
※※※※※※※※※
待ち合わせ場所は流川のとある喫茶店。
相変わらず濃い顔だ。久しぶりに会う元同僚が同じ日本人とは未だに信じがたい。
「久しぶり、元気だった?!」
「お前は元気そうだな」
「なんか友永ちゃん、顔つき変わったよね」
濃い顔の元同僚は注文を取りに来た店員にオレンジジュース、と言いながら着席した。
「そうか?」
「それより、久しぶりに連絡くれたのはいったいどういう事情?」
三枝大和。
去年春の異動で、共に捜査1課高岡班に配属になったものの、やっぱり刑事は無理だと、元いた生活安全課に戻ったかつての仲間だ。
「お前は今、どこの署にいるんだ?」
すると三枝は目を丸くして、
「あれ、聞いてない?僕、警察辞めたんだ」
「なんだって?!」
「今はね、流川でキャバクラのオーナーをやってるんだ。そうだ、今度2号店をオープンするから遊びにきてよ。これ、クーポン券」
かつての人脈を駆使して、ということだろう。やはりこいつはこういう男だったか。
「それより友永ちゃんの用事は?」
「……こいつのことを教えて欲しい」
友永は智哉の写真を見せた。
「あ、蓮じゃない。懐かしいなぁ」
さすがに三枝だ。一目見てわかったらしい。
「どういう人間だ?」
オレンジジュースが運ばれてきて、彼はストローをさして一口啜ると、
「いい子だよ? よく気がきくし、聞き上手だし。なんていうかなぁ~例えるなら子犬みたいな感じ。可愛くって、ずっと撫でても飽きないんだよね」
「お前……その手の趣味もあったのか?」
「ないよ! 例えばの話じゃないか!!」
「……亡くなったらしいが、原因は何だ?」
すると三枝は妙な表情でこちらを見つめてきた。
「え、資料が残ってるんじゃないの? 確か自殺したって……」
「自殺? 原因はなんだ」
かつての同僚は面倒くさそうに顔の前で手を振ると、
「そこは僕にもよくわからないけど、何かいろいろあったみたい。まぁ、夜の商売してるとね、トラブルに巻き込まれる危険性も高い訳だよ」
「んなこたぁ、わかってるんだよ! どうして自殺なんか……」
我知らず声が大きくなっていたらしい。まわりの客が妙な目でこちらを見ている。
友永は気まずいのを誤魔化す為、熱い紅茶を啜った。
「噂だけどね……」
三枝は濃い顔をこちらに近付けて、小声で囁く。
「いろいろなこと、知り過ぎたらしいよ。何か探ってた気配もあったみたいだし」
「なんだよ、いろいろって」
「さぁ? さすがにそこまでは……」
「誰か、特別な相手はいたのか?」
すると。三枝はニヤリと笑う。
「たぶん、大っぴらにできない相手だと思うよ。ひた隠しに隠してたみたいだから」
「なんだそれ。政治家の奥さんとか、そういうのか?」
違う、と彼は首を横に振った。
「詳しくは知らないけど……もしかして男だったりして」
「……ちなみにそれは、何年前の話だ?」
「3、4年前ぐらいかな? ていうか、なんで今頃になって蓮のこと調べてんの」
部外者には話さねぇよ、と言い残して友永は自分の分だけきっちりと代金を残し、店を出て行った。




