と、言う訳で今日も胃が痛いのです。
部下達は全員、大人しくデスクワークにとりかかっている……ように見えた。
が。
和泉の後ろにさりげなく回り込むと、彼は業務とは関係のない外部サイト、どこかの旅館のホームページを見ていた。
背後に聡介がいることに気付かないほど集中しているようで、何やらブツブツ言いながら、手元にある写真と画面を見比べている。
「……何をやってるんだ?」
「現場検証ですよ」
「何のだ?」
「ですから……例の旅館の事件現場です」
「大人しくしてろ、って言っただろ」
和泉の頭を乱暴にかきまわしておいて、聡介は自席に戻った。
本当は気になっている。
ただ課長の手前、好き勝手に動くことは許されない。
それなのに。
聡さん、と和泉が近くにやってきた。
「なんだ?」
「あのDVDに入っていた動画の背景ですが、確認できました。白鴎館の離れです。一番値の張る……」
つい、深い溜め息が漏れた。
「お前な……」
「何か怪しいと思っていましたけど、これで完全にクロです。大麻の栽培にしろ、麻薬取引にしろ、挙げ句の果てには恐らく……殺しです。この件は噂にもなっています。火のないところに煙は立ちませんからね」
息子は真剣な顔をしている。
「お前の気持ちも、言いたいこともわかる」
聡介は机に肘をついて両手を組み、顎を乗せた。
「こんなことは言いたくないが、所詮俺達刑事は死体が出てからじゃないと動けないんだよ。行方不明で捜索願いが出てるだけじゃ、帳場は立たない……」
すると和泉は、出会ったばかりの頃にいつも見せていた、威嚇するような目付きでこちらを見つめてくる。
思わず聡介は身構えた。
「捜査1課にこの人ありと言われた、高岡警部ともあろう人が、らしくないですね。そんな官僚みたいな言い方」
「……俺は公務員だ」
だったら、と和泉は勝手に聡介の引出しを開けた。
「ちょっと待て!! お前は何をやって……!?」
「しばらくお休みをいただきます。有休とって、好き勝手します」
彼はなぜか有給休暇の申請書を2枚とって行った。
そして、
「はい、葵ちゃん」
「……葵まで巻き込むつもりか?!」
常に無口で無表情な若い刑事はしかし、無言でそれを受け取った。
どうやら巻き込まれるというよりは自発的のようだ。
「死体が出ればいいんですよね?」
「……」
「ご心配なく。新規作成したり、墓場を掘り起こすような真似はしませんから」
当たり前だし、止めても無駄だ。
そう悟った聡介は、机の引出しからそっと頭痛薬を取り出した。




