ゲームセンターの定番ですよね
ああして課長が自分から文句を言いにわざわざ降りて来るということは、相手は比較的大物と考えていい。
聡介は息子から聞いた報告を頭の中でいろいろと整理していた。
大麻を栽培している畑の話。そして、番人のようにそこを守っている男。
そして、持ち主は地元で素封家として知られる斉木家。
政治家でこそないものの、その権力に関しては侮れない。
和泉に足りないのは『政治』と『外交』だ。
もちろん、そんなものを身につけろと聡介だって言いたくはないのだが。
今後、どうやって進めようか。
原田節子が殺害された原因は、あの動画にあるのだろうか。
それとも。友永が聞いてきたように、カラーギャングが医療関係者ばかりを襲撃する事件現場にたまたま居合わせ、巻き込まれただけなのだろうか。
後者なら、あの動画のことは何もなかったことにして、このまま有耶無耶にできたらどんなに楽だろう……。
ぼんやり考え事をしていて、聡介はふと気がつけばなぜか鑑識課の部屋の前にいた。
特に用事があった訳ではない。
「よぅ、聡さん」
ちょうど部屋から出てきた相原が声をかけてきた。
「なんじゃ、シケた顔しとるのぅ。茶でも飲んでいかんか?」
聡介は思わず微笑んで、鑑識課の部屋に入った。
鑑識員達は相変わらず忙しそうに動き回っている。
「のぅ、あれ、何じゃ言うたかのぅ?」
「……何が?」
「ほら、昔で言うところの愚連隊じゃ。何でも色分けしとるみたいな……」
「カラーギャングですよ」と、向こうから相原の部下が言った。
「そうそう。今の若いもんはまったく……」
鑑識の長は温かい緑茶を2人分淹れて、机の上に置いた。
「ウチの娘が……市民病院で受付やっとるんよ。心配でのぅ」彼はそう言ってお茶を啜った。
「まぁ、身内じゃけん優先的に警護してくれ、なんて言えんわな。ワシが一緒に帰ってやれればええんじゃが……そうなると娘をかなり待たせるしのぅ」
そうだな、と聡介も緑茶を一口飲んだ。渋い。
「で、捕まえられそうなんか?」
「……」
実を言うと目撃情報は多数あるのだが、尻尾を捕まえることができずにいる。
部下達も所轄の刑事達も頑張っているのだが。
「聞いとるで。モグラ叩きみたいなもんじゃって」
「モグラ叩き?」
「次はこの場所にあらわれるって予測して、待ち構えるじゃろ? そしたら反対方向で事件を起こしよる」
上手い例えかもしれないが、笑えない。
「モグラを殲滅するには、強い臭いを撒くことじゃ。あと、奴らは光に弱い。明るい場所に出てくるとパニックになって動けなくなる」
「明るい場所か……確かに、奴らは常に日が暮れてからしか行動しないもんな」
聡介は苦笑するしかなかった。
それから相原はお茶を一気飲みして、深い息をついてから呟いた。
「まさかとは思うがのぅ……誰か、情報を漏らしとる奴がおるんじゃないか?」
相原の台詞にはた、と思い出したことがあった。
少し前に扱った事件の折り、捜査情報を漏らし、上に圧力をかけた原因となったのは……捜査に参加していた現職警官だった。
まさか……。
「もし、そうだったとしたら……」
「そのあたりは監察の仕事じゃけどのぅ」
気が重い。
ご馳走様、と聡介は空のカップを机の上に置いた。
するとその時、平林郁美と目が合った。
ものすごく何か言いたそうだ。
確か去年の年末あたり、念願かなって和泉とデートできたと聞いたが?
いや待て……なんだかものすごく不本意な出来事があったとも。
ねぇちょっと、泣きそうな顔でこっちを見ないで。
逃げるようにして聡介は刑事部屋に戻った。




