思ったことを口に出すのと出さないのとでは、大違いだ。
「他の動画が上書きされていた……?」
「はい。映っていたのは白鴎館の女将で、斉木輝子という女性です」
「その女性は今……?」
「長い間、行方不明となっています。気になったので調べたのですが、家族から捜索願は出されていますが、未だに発見されていません」
和泉からの報告を聞いた聡介は、驚きを隠すことができなかった。
見てください、と和泉が言って聡介のパソコンにソフトを入れると、部下達全員が集まってくる。
再生された動画には確かに、どう見ても何か大きな事件があったとしか思えない場面が映っている。
「……それで、行方不明になった経緯や何かはわかるか?」
「それはまだ、調べてみないことには」
思いがけない情報が出てきた。
聡介自身は、あの白鴎館という旅館の経営者に会ったのは過去に一度か二度ぐらいだ。
なよなよして気持ち悪い……という印象だったが。
「で、彰ちゃんは何をどう考えている訳?」
いきなり目の前が暗くなったかと思えば、すぐ目の前に北条警視の背中があった。
どうでもいいけど人の机の上に腰かけるのやめて。
それには答えず、和泉は黙って彼を見つめた。
なんだ?
聡介は気になって、2人の遣り取りをしばらく見つめた。
もしかして目と目だけで会話をしているのではないだろうか。
そうだ、この2人はかつて特殊捜査班で一緒だった時期がある。彼らは言葉ではなく、ジェスチャーや視線だけで会話する能力がある。
敵に作戦や思惑を知られることがないように、ハンドサインと視線だけで意志の疎通ができなければならないのだ。
それからしばらくして、2人の間にやや白けたような空気が流れているように聡介には思えた。
「……あのバァさんなら、何か知ってるかも」
和泉が突然、そう言いだした。
「バァさん?」
「島の中で起きたことならなんでも知ってるって豪語している、棺桶に片足突っ込んだお婆さんです」
何か私怨でもあるのか、こいつは。
「じゃ、そう言うわけで。今からちょっと宮島まで行ってきますね!」
和泉は自分の席を立つと同時に、駿河の腕をつかむ。
「葵ちゃん、レッツゴー」
そうしてスタスタと刑事部屋を出て行ってしまう。
アタシも行く~とか、言いだすのかな?
そう思って聡介は少し様子を見ていたが、北条は何も言わないで机の上から降りた。
「おい、彰彦!!」
止めても無駄か。
聡介は深い溜め息をついた。
それからふと、すぐ隣にいる北条警視の顔を見ると、少し不機嫌そうだった。
「あいつと、何かありましたか?」
別に、と素っ気ない返事の後に、彼はやや後悔したような表情を見せた。
「……あの子、どうやらなるべく、アタシの顔を見ていたくないみたいね」
彼を見ていると昔のことを思い出してしまうのだろうか。
だとしたら、その心中はいかばかりか……。
そんなこちらの胸の内を見透かしたかのように、
「やだ、そんな顔しないでよ」
北条は笑う。
「逃げられたら追えばいいの。それが、男の本能ってやつよ」
オカマの本能じゃないんだ……なんて、胸の内で思ったことだけは、絶対口にしないでおこう。




