時々、夕方のニュース番組で特集組んでるやつでしょ?
扉を開けてまず最初に感じたのが、ひどい悪臭だった。
どうやら被害者は【片付けられない】女だったらしい。
足の踏み場もないほど散らかっていて、ゴミが玄関先にまで溢れかえっていた。
これは……。
和泉は思わず、ハンカチで口を抑えた。
これは罰だろうか。
地取りの方を頑張ります、とか上官達の手前で言っておきながら、上手いこと他の仲間にその役目を押し付け……いや、めずらしいことに友永の方が自分から申し出たのだ……これは本当。
彼は被害者を檀家にしていた。
別にそのせいでどうこう、ということはないだろうが、彼なりに責任のようなものを感じていたに違いない。
日頃はやる気があるのかないのかわからない刑事だが、それはあくまで表向きの顔だということは知っている。
それにしても……これはひどい。
しかし。なぜか美咲の伯父である寒河江俊幸は、ズンズンと中に入って行き、ゴミの山をひっくり返し始めた。
「社長?!」
女将は驚いている。
和泉も驚いたが、聡介も驚いていた。
そして彼はどうやら、何かを探している様子である。
和泉は美咲の伯父と接触したことはないし、その人となりについて詳しくは知らない。が。典型的な中間管理職タイプであることだけはすぐにわかった。
さて。その中間管理職が何を探しているのか。
自分は他人に口出しするだけで、指一本動かそうとしないタイプと思われるこの男性が、こんな悪臭漂う部屋で何かを必死に探している。
と、なれば導き出される結論はただ一つ。
警察に知られてはマズい情報を、被害者が握っていた……。
和泉は年末年始にかけて聞いた黒い噂のことを思い出した。
いやしかし、あれはこの旅館ではなく、ライバルの別旅館だったはずだ。
暴力団とつるみ、麻薬取引だけでなく……大麻を栽培しているという。案外、この社長もおこぼれに与っているのではないか。
和泉はそんなことを考えた。
「……勝手に触らないでいただけますか?」
和泉がわざとそう言うと、彼は顔を真っ赤にした。恐らく子供の頃から「長男だから」という理由で、何をしても大人達に許されてきたのだろう。
「な、な、なんじゃお前は?!」
「警察です」
白々と答え、警察手帳を示してみせる。
「……」
「何をお探しか知りませんが、我々の邪魔をすると【公務執行妨害】で逮捕されることになりますよ?」
和泉がにっこり笑って言うと、相手の顔からすーっと血の気が引いた。
冗談だったのだが。寒河江俊幸はそそくさとその場を離れた。
そんな夫の様子を無表情に見守る、里美の姿が興味深いと和泉は思った。
しかし、これは絶対にゴキブリが出るな……。
和泉はマスクを持って来なかったことを後悔しつつ、作業に取り掛かった。




