Q:そ、村長。貴方まさか? A:ふっふっふ
アビゲイルさんのおかげで泉の水位という犠牲と引き換えに、思った以上に馬車の清掃が速やかに終わった。三人の村人と言う尊い犠牲は自宅に運ばれて寝かしておいた。変わりに俺が働きましたよ? 家が付近にある魔族を連れて来てよかった良かった
マールさんと村長が半乾きだけど、ほっておけばすぐに乾くでしょ。馬車の前に村長が立ちアビゲイルさんにいった
「清掃が終わりましたので、いつもの宿に向かいましょう。中を濡らしてはいけないので私は歩きます。後ほど伺います」
「そうか。レティ。馬車を頼むボクも歩いてくから、先に最低限の荷物降ろしといて。出来たら昼食の用意も頼むよ」
「畏まりました」
またかいアビゲイルさん。いい魔族だという事は解ったけどもう少し威厳のある行動をしようよ。出来た方だとは思うけれども
「いやいや! アビゲイル様はどうぞお乗りください。もっと威厳のある。気高い行動をお選びください」
「ボクだって足濡れてるぞ。ブーツも履いてないし。気高いとか解らん。はっはっは! 気にするなよ久々にこの村を歩きたいんだ。少年も馬車で先に言ってていいぞ」
あ、村長と仲良くなれるかもしれない。最初のちんちくりん発言で嫌な人かもと思ったけど、似た思考の魔族と仲良くなりたい。もちろんこの場で俺が先に宿に向かったら反感を買うと間違いないので歩きます
「いえ、産まれた村以外の土地にも触れてみたいので俺も歩きます」
「そうか? 気まずいからとか子供らしからぬ事考えてないだろうな」
そういって豪快に笑うアビゲイルさんの横で俺は冷や汗をかく
え、なに。読心系スキルでも持ってんの。勘弁してくれよ。俺の知り合う魔族は自動的に読心スキル持ってるのか? アダフさんだけでお腹いっぱいだよ
結局アビゲイルさんは引かず、コレットさんを宿に先に行かせて歩いていく事になった。俺にアビゲイルさん、マールさんに村長。このメンツで格下って俺だけなのかな? なあ、全魔眼よ。村長強い? 鑑定眼で見てくれよ
〈了解です。ええ、そうですね。……はい、結構強いと思いますよ。レアスキルの身体能力強化スキル持ちです。主の予想した魔王と同系統の力ですね
あ〜あ、この手の直接的な攻撃系スキルがあったら良かったですね〉
随分とトゲのある言い方だな
えっと、もしかして根に持ってんのか? さっきから口数があんまり多くなかったのって、怒ってるから? 悪かったって、確かに言い過ぎたよ。お前程優秀なスキルはそうない。ちょっと五月蝿いが。まあ、賑やかになって寂しい気持ちにはならんしな。くそ、なんか恥ずかしいな。なんの罰ゲームだよ
〈ふっふーん! 解ればいいんですよ。これからも私が主の為だけに、出来るだけの力を費やしましょう!〉
はっは、調子のいい奴だ。入れ墨入れたろうか。目に
〈……あの、黒くするヤツですか? た、確かに今回は起こり過ぎましたね。お互いこの事は水に流しましょう。涙みたいに〉
え、俺より出来たギャグを取り入れるの?
〈ええええ!! そこはちょっとめんどくさいですよ!?〉
冗談だ。それよりもさ。この村って、何か違和感ないか? 何か物足りない様な。ちょっと静かっていうか。何かは解らないんだけどさ
髪のつややかな女性に、筋肉むきむきの男性。蝶を追いかける犬に、屋根で寝ている猫。う〜ん、なんだろうな
これといって何ともない。ガチムチが多い村ってだけなんだけどなあ
〈気のせいでは? 私は特になんとも思いません。よければ私が辺りを見て考えておきましょうか?〉
いや、そこまでしなくてもいいよ。その内気がつくかもしれないしな。ああ、お腹減ったな
そいえば全魔眼ってお腹空かないの?
〈私は特にそういうのありませんね。滑液とかから供給される栄養は美味しいと思いますけど。感覚的に〉
感覚的に美味しいって何?
全魔眼とのくだらのない会話をしていると、いつの間にか村長が俺の右隣を歩いていた。意識をアビゲイルさんに向けると、フラフラと村を歩き回っている。この状況と、さっきアビゲイルさんが言ってたことから察するに、来なれた村に案内なんて必要ないと言われたに一票
〈実は男色家に一票〉
恐ろしい事考えてんじゃねええ! 何俺の貞操の危機予想してんだ。今はそういう所じゃないでしょ?
「どうしたんですか村長」
「ふむ、アビゲイル様もあの調子だしな。小僧と話をしてみたくなったんだ」
oh……
「話ですか?」
「アビゲイル様から聞いたぞ。どこから着たか解らないとか、将来有望そうだとか、婚約を迫られたとか」
あ、最後の部分ものそい殺気が籠っとる。この魔族アレだ。多分、コレットさんと同じタイプの魔族。アビゲイルさんを敬愛してるファン。話しにくいんだよなあ。この手の魔族って
ガッチリとパテで固めたんじゃないかというレベルの力で肩を掴まれる
痛い痛い。折れる。本日二度目の骨折するからやめて。マールさんも見てないで止めて助けて!
俺の視線が伝わったのか。俺の左側にいたマールさんは一歩だけこっちにより耳元で呟いた
「……安心しろ。オレは結婚の話応援してるつもりだ」
そういって元の位置に戻る。何事もなかったかの様にアビゲイルさんを目で追い始めた。なんでだあああ! 貴女もアビゲイルさんの従者としてそこは反発する所では? どんだけ俺の事信用してるの。なんもしてないよ? 応援はありがたいけれどもさ
何も解決してないから、肩潰れそうだから!
もう一度こっちを見てもらおうと強い視線を向けたりしてみるがまるで無視された。ひどい
三度視線を送ろうとした所で、村長か俺の肩を引き寄せる。顔近、ガン飛ばし過ぎじゃね? 平和主義をモットーにしている俺にそんな目しないで
濃い影が掛かった様な顔が俺の耳元でこう呟いた
「アビゲイル様のどこを好きになったんだ?」
その顔で恋バナ!?
はっ! 違う。これはテストだ。変な回答をしたら問答無用で砂(リンチと同義)にされる気がする
〈これは回答を間違えられませんね。無難に一目惚れといっておきましょう〉
「やっぱり腹筋ですね。筋肉女子って世界共通のアイドルだと思います。アイラブ女子筋!」
〈死んだわ
じゃないじゃない。え、馬鹿なんですか? 本当に、何キメ顔作ってそんな事いってるんですか!〉
いけね。本音が出ちゃった。仕方ないじゃん
Q:アビゲイルさんのどこに惚れましたか
A:顔見て一目惚れです
アビゲイルさんの顔見ていってみろ。ただのイケメンじゃん。顔だけで判断したら同性愛者の仲間入りだもの。悪いとは思わないけど、俺はノーマルだ
あと、ひっさびさに筋肉のお話ししたかった!
〈主、後ろ後ろ〉
後ろ?
俯いて震えている村長がいるね。あ、死ぬかも
その時、視界の済みで何かが微かに見えた。その次に感じたのは背中への強い衝撃だったのだが、前に吹っ飛んでいく事もせず二、三歩前につんのめるだけ
痛い。骨折程じゃないけど、赤くなってるんじゃないの。これ
「小僧。名前は?」
「いてて、キリルですけど」
「キリル。今日俺の部屋で語り合わないか」
〈はあ?〉
こ、これは、まさか! 筋肉好き!?
俺は無意識に村長と握手をしていた
「村長。十三歳でもお酒は飲めますか」
「国の法律的には十五だが、気にするな。俺は九歳から飲んでた。あとアイドルってなんだ」
「女神です」
「キリル。お前はやっぱり同士だ」
この世界初の話の分かる男仲間が出来た瞬間である。肩を組み、俺たちは高笑いをあげる
「ん? 少年に村長。どうかしたのか」
〈っは、なんだこれ〉
明日テストなんだって、筋肉の事考えてて忘れてた
ちなみに私は持たざる者です
皆筋肉好きでしょ?
〈押し付けしないでください。嫌いな人もいます〉




