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Q:旅は楽しいですか? A:今日村についてなければ嫌いになってる所でした


 生臭さ香る車内。大規模な魔物の群に襲われるというハプニングを乗り切り、俺たちは遠くに見え始めた村へと向かっている。六日目でやっとの事村についた。振り返れば短かったな。おもに脱がされた記憶しかないけど


 地平線にヒョッコリと盛り上がるシルエット。千里眼で先を確認

 申し訳ないばかりの木で出来た柵に、木造の小屋が並ぶ。へんぴな所に立っているしなびれた村って印象だ。しかし、貧困。という印象は受けない。小屋も綺麗だし、なにより馬車の存在に気がついた村人達が柵の外に並ぶ姿はどこか鮮麗された物を感じさせた

 並ぶ男達のガタイもよく、女達の髪は艶がある


「やっとついた。魔物どもの血を速く落としたい。乾いてきて、鬱陶しくて仕方がない」


 マールさんの嘆く声が聞こえる。そりゃそうだろう。オオカミ達の体液という体液をもろに被ったのだから


「そうですね。馬車についた血液は早々に落としたいです。木が傷みますし」

「姉さん? オレにも血が掛かってるんだけど?」

「私は角度の都合で掛かりませんでしたし、あまり関係ありません」

「そりゃあんまりだろ。仮にも二十分間慣れない投擲で魔物を追い払ってたんだぜ? 可愛い妹に労いの言葉くらいあってもいいだろ」

「どこら編に可愛い要素があるのか私が納得できたら言いましょう」


 うんうん。仲のいい姉妹だ


〈え、どこがですか〉

「それにしても、キリル様はお疲れではありませんか? アレだけのナイフを作り出したんですから相当疲労が溜まっていてもおかしくありませんが?」

「いえ、全然平気ですよ」


 言い方は柔らかいが、どこか警戒心が増した気がする。寧ろ緩めて欲しいくらいだ


〈強くなっても不思議じゃありませんけどね。どこからともなく現れた少年が、魔王の旅に同行し、襲撃の際には常識はずれな事をしでかしたら。あるじはどう思います?〉


 ヒャッハー。コイツ使えるぜ。ボクの配下にしてやろう

 かな


〈馬鹿なんですか? いや、馬鹿でしたね〉


 この眼球、ついに言い切ったよ。主と呼ぶ者に対して馬鹿と言い切りました!


〈事実です。確固たる自信があります〉


 はっ! いい度胸だ全魔眼。お前、毛様体筋を自分の意志だけで動かしてみろよ。そしたら俺を馬鹿と呼ぶ事を許してやる


〈いや、無理でしょ。平滑筋ですよ。解ってていってますよね?〉


 眼球の王様でしょ。わがまま言わないの


〈眼球の王様!? ちょっとシックリ来ないんで、世界最高の補助スキルと言ってもらいたいです!〉


 補助スキルを自称ですか。そういえば俺って攻撃機スキル持ってないなあ

 電気系統のスキルとか手に入らないだろうか? 火でも可。大体、努力次第で手に入るスキルですら俺は持ってないんだ


 今思ったんだけど、レアスキルって才能があれば手に入るんだろ? ノーマルスキルは努力次第

 殆ど変わんなくね? 言ってしまえばノーマルだって才能がなければ手に入らないってことだろ。生まれ変わって十年。最悪だあ。最悪すぎる


 指パッチンで炎とか出したかった! 掌から電気を放ちたかった! 念動力で矢とか受け止めたかった!


〈アレですね。色んなアニメ化と思ったら、ゲームの方ですか〉


 ああ、異世界で前世ネタが通じるって素晴らしい

 お、全魔眼と対話していたら大分村が近づいて来た


「主様。キリル様は先ほどから黙って、どうしたんでしょうか?」

「随分と大人びた話し方をするから忘れがちだけど、まだまだ子供だからな。眷属のミンチは強烈だったか」

「ああ、あまりのキモさに子供だって忘れてました」


 聞こえてる聞こえてる。全魔眼と話してる時は確かに黙り込むけどさ。これからは全魔眼との会話中も辺りの事気にしとこうかな?

 ……そんな器用な事できる気がしない


 しばらくして馬車は村の入り口まで着た。村人達が馬車を見てざわめく。まあ、結構豪華な装飾とかがされている乗り物が赤い血で染まってたらそら、騒ぎにもなりますよ。本当、生臭いなあ

 入り口手前で止まる馬車に一人の男が近づいてくる。ガチムチの多いこの村の中では一回り小さな男だが、筋肉と脂肪の程よいバランス。前世だったら、いいラガーマンに慣れただろう。ポジションはフッカーが妥当か。大きめのハーフでも可


「あ、アビゲイル様!? ご無事ですか!」


 そんなラガーマンが馬車の前で片膝をつき頭を垂れながら声を上げる。直ぐさま入って来ない。しかし、今にも車内に飛び込んできそうな程、戸を睨んでいるのがわかった

 最も大丈夫に見えないマールさんは、彼の目には見えていないらしい。因みに彼のタイプは人型だ。どのタイプが一番多いのかな? 今のところ一番少ないと思われるのはアビゲイルさんの角持ちだけど


 アビゲイルさんは男に返事をするよりも先に馬車の戸を開けた

 村人達の列からは安堵の言葉が微かに聞こえる


「この通り何ともない」

「おお! よくぞご無事で。馬車が血に塗れているのを見て肝を冷やしました

 お久しゅうございます」

「久しぶりだね村長。出迎えありがとう。皆も出迎えご苦労! 各々やるべき事をしなさい」


 この六日間で聞いた事もない口調だ。大衆向けという奴だろうか? これもありだな! ギャップはあまりないが、見た事もない一面というのがグッと来る


〈それをギャップ萌えというのでは? 惚れた晴れただのはよく解りませんが、盲目的になっている様に見えますよ〉


 恋は盲目って言葉がまさにぴったりだな。きっと一目惚れなんだ。腹筋。おへそ。うへへへ


〈いや、最初男って認識してたじゃないですか。主は、あの女を見てる時だけ、おかしくなりますよね〉


 元々こうだが?


 アビゲイルさんが戻って来た。その後ろには村長がおり、馬車に乗り込んでくる。近くで見ると結構迫力あり、顔は老け始めって感じで渋い。背筋も伸び、遠目で見たら若者と思ってしまうかもしれないな。黒髪の半ばから白髪が増え、メッシュにみえる

 戦える老人を形にした様な見た目をしている。そんな村長が俺を見て動きを止めた


「村長話はあとで聞こう。取り敢えず馬車を洗える所に案内頼むよ。……どした?」

「アビゲイル様。このちんちくりんのガキはなんですか」


 ち、ちんちくりん。子供だからいつかは言われるとは思っていたけど、実際に言われると結構傷つくなあ


〈失礼な男ですね〉


 まあ、事実だし。仕方ないよ泣きたい気持ちにはなってるけど。俺ってメンタルそこまで強くないんだから皆手加減してくれない?


〈獣に谷から落っことされて、そこから這い出て退治してやろうと思ってる主のどこら辺がメンタル弱いのか説明してくれませんかね?〉


 出てくるのに七年掛かった所かな


〈寧ろ七年も諦めなかった所に驚きを隠せないんですけどね〉

「この子は〜まあ、身柄拘束中の客人って所かな」

「領主様ってそんな目で俺を見てたんですね。流石にちょっと傷つきました」


 確かにアビゲイルさんの領地に突如現れた身元不明の男だけれども。もう少しいい印象は与えられなかったものか


〈下着を見て初めて性別に気がつき、そこからプロポーズ〉


 無理かもしれない


〈気がつけるまでに成長して私は今、猛烈に泣きたいです!〉


 誰かそろそろ俺ツラいから励まして! あ、このメンツじゃ誰も励ましてくれなさそう

 谷底にお住まいのアダフさん! 一緒に住んでた老エルフのアウグストさ〜ん! その他の子供達よ! フォロミー! 地上で精神的にやられそうだ


 笑って誤摩化すアビゲイルさん。その横に座る村長。背後で馬みたいなのに鞭を入れるコレットさん。右目の全魔眼

 ふっ、これが四面楚歌か


〈魔王も村長もそこまで毒を吐いてないと思うのですが〉


 お前、自分の部分否定しよ?


〈言わずとも私は主のお味方ですので〉


 今の言葉程薄っぺらく感じる事は、これから先もそうないな

 五分程馬車が揺れ、村の中心にある泉の側で止まる。湧き水で村の三分の一程になっている。随分と大きいな。泉から水路を引き、そこかしこに供給している

 見た目ボロボロの村がやるではないか


 泉について馬車にいたものは全員が外に出た。今日も地面が久しい。十二時間ぶりくらい。群の襲撃もあり、昼食をとらずにここまで着たのだ

 お腹減った。そんな事を思っていたら頭の誰かが手を置いた。振り返ると乾いた赤黒い血を全身をデコレーションしたマールさんだった


「屋根で話は聞いてたぞ。可哀想に」


 マールさんの株がうなぎのぼりです。生臭さと鉄臭さがなかったら、抱きついて泣いてた





 超! お久しぶりです


 苦行を脱した。その一言に限ります。まあ、来月頭にも確かテストあるんですけどね


 正直な話一月から三月のテストラッシュは大嫌いです


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