Q:死んで目が覚めると? A:天国でないのは確か
1361文字
ああ、どうしてこうなったんだろう
現在俺は、通り魔に刺されて倒れている。鳩尾から突き上げる様に刺さった刃物。コース的に心臓に突き刺さってるよコレ
今年高校を卒業した一つ下の後輩と歩いていると、いきなりグサリとやられた
二十歳になったばかりだというのにあんまりだ
俺を産む為に死んでしまった母に会うのも速すぎる。育児と仕事をこなし、男手一つで育ててくれた父親に親孝行する前に死んでしまうなんて
「ーーーーー先輩! ーーーーー先輩! 死なないでください!」
なんでか俺の名前が聞き取れない。高校で最も親しかった後輩に最期を看取られるんだ。わがままついでに遺言を残そう
「父さんに、ごめんて言っといて。あと、生きて欲しいとも」
「ーーーーー先輩! 滅多な事言わないでください。コレが最期みたいに」
「最期にもう一つ。俺の部屋の時計の裏にあるUSBメモリーあげる。有効に使えよ」
「僕と先輩の趣味違うの知ってていってますよね」
もう喋る気力がない。肯定の意味をかねて笑おう。ああ、なんだか温かい
俺はゆっくりと目を閉じた
主。お目覚めの時が来ました。おはようございます。今から三年間、私は活動できませんので、お暇を頂きます
…………中々死なないな。目を開けよう
知らない木造の屋根が見える。木造だ。ログハウスみたいな天井。固いベットで寝ている俺
もしかしてあの時死なないで、植物状態で寝てたとか? もの凄くラッキーだな俺。俺で死ななかったの?
「キリル。だいじょうぶ? あたまうたなかった?」
突然俺の顔を覗き込む様に金髪の幼女が現れた。もの凄く可愛い。俺は後輩の様にロリコンではないが、この子は凄い可愛い。将来絶対美人になる
肩甲骨辺りまでの金髪を一つの三つ編みにして右肩から垂らし、青空の様に青く大きな目は、ずっと見ていたくなる程綺麗だ。そして次に目がいったのは耳。俺を心配しているのか耳が足れている。とても長く尖っている耳はエルフを連想させる……ん?
耳が長くて、尖っている?
ちょっと待って凄くおかしい! 右の耳から左の耳までの長さと、顎から頭の先までの長さで、なんで耳側の方が長いのか説明お願いします!
あと、キリルって誰!?
「あれ? お父さ〜ん! お母さ〜ん! キリルの目が変だよ!」
お母さんだと? 俺の父さんはエルフと再婚したのか。んなわけあるかい!
あれはきっと動く付け耳だろう。父さんは再婚して、俺の妹が出来たんだろう。随分歳は離れてると思うが、可愛がろう。あと、父さんには妹に俺の呼び方を外人風にした事を後悔させてやる
植物状態が長かったのか身体が重い。動こうとした辺りで、お義母さんが来た。何かデカくね? 母親を見て立ち上がった幼女も、全然幼女とは思えないデカさになった
「キリルの目が変ってどういう事?」
お義母さんが二十歳を越える俺を、軽々と持ち上げた。え? なに。ギャビ・ガルシア並の腕力なの。父さんと俺の趣味は一緒だったって事か。ってお義母さんにまで付け耳さすなや!
「あれ、右目が黒くなってる」
「キリルがどうかしたのか?」
「アナタ、キリルの目を見て」
父さん。俺が目覚めたというのに、随分とさっぱりした反応だね
って! 誰だお前は!
赤い髪をした筋骨隆々の大男がお義母さんの肩から顔を覗かせた
俺の父さんはもっとホッソリしてて筋肉とは無縁の人だぞ!?
一体何が起きているんだ?
世界設定とかは前に書いた世界を参照ください。『愚者で結構』だけはローなので違いますが、もしかしたらいつの間にかハイになるかも
2017年4月25日。誤字脱字修正 他にもあればご報告を