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ガルダン  作者: 角筆夫
散歩
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散歩は楽し


 私は、段々、自分を見失いつつあるが、とにかく散歩をすることによって、そんな自分を繋ぎ止めることが必要なのだ。といっても、前にも書いたように、自分とは全体のうちの小である。本当に大切なのは全体なのであり、それはそうであろう。ヘタをすると、大切という概念というか価値観だって、全体の中に含まれてしまうものなのだ。

 

 何をしたって何かになるということは、そういうことであり、何かを書いてゆくことによって、私たちは全体を感じようとしている。その大きなうねりに対して、何かをするということが大切であり……いや、大切ではないのだ。大切とは近道であるが、時に人は回り道を選ばないといけないのである。多分。


 というわけで、次の日、少し曇っていたが、私は出かけることにした。コースは大体知っている。散歩コースは四つあるが、私は、今日は、東コースを取ろうと思っている。歩けばわかる。何かがあるさと思っている。だが、本当はその人の胸先三寸であり、あると思えばあるし、ないと思えばない。


 私は、アパートを降りて、すぐに自分が腹が減っていることがわかる。朝の六時であり、とても寝覚めが良かった。朝といえば、ハイドンが、「朝昼夜」という交響曲を三つ作っている。それではないが、ハイドンの音楽を思い出しながら……一番好きなのはトランペット協奏曲なのであるが、一番近い24時間やっているスーパーへと行く。


 60歳くらいの白髪のお婆さんがレジをやっていた。大変なものであるが、中を歩いているが、私は何を食べればいいだろうと思っていると、買い物をしている女性が現れた。


「おはようございます」

「あら。お久しぶりね」


A子さんは近所のスナックのママであった。私はそのスナックに一回だか二回だか行ったことがある。彼女は韓国人で、いや、台湾人だったかもしれない。


 やけに色気がある女性で、いつも「お父さん」と言っている老人と行動を共にしていたが、最近亡くなってしまったのであった。


 私は、前にコンビニで勤めていた時に、彼女はよくタバコをカートン買いしたのである。そこで、なんとなく顔を覚えて、ちょっとスナックに興味があったので行ってみたのである。


 そうしたら、そこの常連の68歳の女性に腿を撫でられながら、「私は歳をとっているけどね。エッチはできるよ」ということを言い出した。私は「エッチはできる、と言われましても」ということを答えたのであった。


 そこはもう少しオブラートに包んで返すのが、テクニックなんだよなあ、なんて私は思ったが、それよりもスナックというのは、自分には向いていなかった。あれはいかにダラダラ過ごすかということが、大切なのであろうが、そういう人間でもなかった。酒もそんなに飲まなかった。


「お元気ですか」

「ええ、まあ、元気よ」

「そうですか」

「あなたもたまには店に来なさいよ」

「ええ、行きます」


本当は行く気は一切ないが、私はそう答えると笑顔で分かれて、散歩道を歩くのであった。


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