有終のゴルダン
仲間たちが死んでゆくのを横目で見てゴルダンは、もともと筋骨隆々な割には弱虫であったから、逃げ帰りたくなっていた。しかし、目の前のグムが攻撃してくるから、かわなさいといけなかった。できるだけ距離をとって、前回二回とも落とされたのだから、今回こそはちゃんとしようと神経を隅から隅まで張り巡らせていたのであるが、その緊張の糸が千切れそうになる。
月面基地の暗雲に蠢く、鉄の群れ――それが量産型機動兵士「グム」である。異星人の超絶科学が齎した最高傑ラス「ガルダン」の骨格をベースにしながらも、地球側陣営が泥縄式の量産とコストカットを優先して鍛え上げた汎用前線機体だ。過剰な出力とサイキック追従性を極限まで削ぎ落とし、代わりに採用されたのは、武骨で無骨な重装甲と簡略化された火器管制システムであった。頭部のメインカメラは単眼式の無機質な光を放ち、荒野の泥を噛みながら愚直に泥泥と歩を進める。エース機のような華麗な機動力も、閃光のような踏み込みも望むべくもない。だが、数の一打で戦線を押し潰すその威容は、対峙する者に無言の圧迫感を与える。「量産型」という言葉の裏に隠されたのは、パイロットの命を消耗品として使い捨てる冷徹な設計思想に他ならない。散り際の手前まで、ただ愚直にビームライフルを連射し続ける、鉄の兵卒である。
天才少年オムロンの乗っているガルダンがこっちに向かっていることが確定した。二機を同時に倒さないといけないなんてほとんど自分の手に余ることであり、彼の頭に死がよぎった。けれでも奇跡は起きるかもしれない。援護射撃やら、戦闘機やらの支援が来るかもしれない。それまでに、巧く二機を引きつければ良いんだと、ジグザグに後退していたのであるが、とうとう、怒れるオムロンに捕まってしまう。
「そこかあ」
と信じられないスピードで近づいてくる。ゴルダンは目を閉じて出鱈目にビームライフルを発射した。どうせ狙ってもかわされる。それなら、近いところを考える前に撃つ。
「ドオオオオン」
信じられないことにそれが、グムに当たって撃墜してしまったのである。快哉を叫びたくなったが、オムロンの姿が見えない。あれ、どうしたんだろうと思ったら、地面に大きな影ができており、上だということがわかった。もちろん、次の瞬間には
「ズサッ」
っと真っ二つであり、ゴルダンの身体ごと両断されていた。彼は恐怖も悲しみも感じることがないままに即死してしまったのだ。




