会田鉄男の説教
「まあ、最近、ロシアがウクライナに攻めるんじゃないのか、あるいは、そうではないのか、色々、取り沙汰されているねえ」
(この小説が書かれたのが2021年ごろだったと思われる。ロシアがウクライナに攻める前の話である)
近所のガストで、友人である会田鉄夫はつぶやいた。私は、ウクライナ美人のことを思い出した。昔、酒場で一緒に、はしゃいだ記憶がある。しかし、逆にいうとそれくらいの記憶しかない。
「俺はもう自分のことで精一杯だよ」
「いや、それはわかる。わかるけど、自分のことばかりでは、ダメなんだよね」
会田鉄夫の目が怪しく輝いた。
「これからの時代は、自分だけ、とか、利己主義とか、通用しないよ。みんなで、どうやってこれから色々現れる危機に対応してゆくかってことが大切なのよね」
「そうか」
「もう、アメリカでは体にチップを入れている人が現れているよね。何を隠そう俺も……」
「えっ。チップ入れてんの?」
「いや、その話はやめよう。まだ、早いから……」
「何が早いんだよ」
「いいか、今、此処で俺たちがしている会話、これ!俺たちの間で完結していると思ってんの?」
「完結しているでしょ」
「これ情報がダダ漏れになっている、という事実に気づいた方がいいよね」
「ダダ漏れなのかい」
「ああ……もう、三年くらい前から、変なことを喋る人の言葉は記録されているよ」
「な……何だって?」
「お前はSNSで得意げに個人情報を垂れ流しているだろ」
「まあ、得意げではないけど」
「あれも、みんなわかっちゃっているよ。今、そういう時代なのよ、これ、本当にやばいけど、言わなきゃいけないことだから、今、話していますよ」
「そうなのか」
「ああ、そうだよ。ね?だから、俺から言いたいことは……変なことは喋るなよってこと」
「そうだね。俺は、なんだかんだ言って穏当なことしか書いていないから大丈夫か」
「まあ、大丈夫だとは思うけど、その上で、どうやって、ライフハックしてゆくか、それが大切ですよ。いいですか。これからの未来、近い未来に未曾有の危機が日本では起こりますよ。これ、動かしがたい事実ですよ」
「そうか。何が起こるんだい」
「開いちゃうんだよ」
「何が」
「決まっているだろ。パンドラの箱だよ」
会田鉄夫の勢いは止まらない。次回、日本に迫る危機についての熱い語りが始まる。これを読んでいるあなたは、歴史的予言の目撃者になるだろう……。




