表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
48/60

果てしなき修行


「うんしょ。うんしょ。うんしょ」


って今日はミルクを運んでいません。期待していた皆さん、ごめんなさい。今日は、栄町の片隅、スーパーフロンティア栄というアパートの前で立っています。ここに、静馬さんが絶賛していた、マンリキの達人がいるからです。私は、自分の命がたとえ燃焼しようとも、マンリキを覚えることにしました。そうしないと、私の生きている意味がないからです。


「ほほう。おねえちゃん。なるほど、歴はある程度、積んでいるようだね」


白髪で 枯れ木のような身体をしたシーちゃんは、あたしの身体を眺めて言いました。プロの人は体つきを見るだけで本職の人かわかるみたいです。まあ、風呂に入っている回数が異常ですから、見抜こうと思えば直ぐに見抜けますがね……。とにかく、シーちゃんは私を居間に招いてくれたのです。そこは、お世辞にも綺麗とは言えない、粗末な飾らない部屋でした。


「だが、マンリキの技を極めてどうしようと言うのかね」

「あたしの愛する人のために、マンリキを使いたいのです」

「バカモン!もし、その男が死んだらどうするのかね」

「ええ?」

「究極のマンリキを習得したら、恋人はそのマンリキに夢中になって、死ぬまで「やってくれ。やってくれ」と言ってくるだろう。それほど、あの技は恐ろしいものなんだよ。相手を殺してしまうかも知れないほどの気持ち良さなんだよ!」

「そんなオーバーな話、信じられますか!」


とあたしは、立ち上がってアパートを出ようとしたら、シーちゃんは、


「これを見ろ!」


というと、襖を開けた。寝室には、十人もの人間の遺影が壁にかかっているではないですか。ある者は痩身、ある者は四角い顔、ある者はおにぎりみたいな顔をしておりますが、全員に共通しているのは皆、幸福そうな死に顔をしている遺影でした、ピースサインをしている人もいます。


「あたしの代々の旦那様は、みんな死んだよ。あたしのマンリキに夢中になってな。おかげで、遺産を貰い放題だったよ」

「でも、何で、こんな粗末なアパートに住んでいるんですか」

「人を殺したお金さ……あたしは、慈善団体に寄付したんだよ。浄財ってやつさ」

「陰徳を積まれているんですね。なるほど、それは良いことです。でも、あたし、習いたい。もし、静馬さんが腹上死するんなら、あいつはそこまでの男です」

「何?」

「恋ってそう言うものじゃないですか?」

「え?」

「お互いの最上のものを空中でぶつけ合う。それが恋ってものでしょう!」

「ふっ。ならば、教えてあげるよ。死ぬほどの苦しみだぞ」

「はい。お師匠!」

読者よ。このマンリキ修行の光景を私は描写したいのですが、こいうことを拡散すると真似する人が現れ、終いには、日本政府に悪いような気がするのでやめておきます。


 なお、このマンリキという技は、江戸時代から「須磨」という言葉で、引き継がれている伝統的な技である、ということだけは断っておきます。決して、筆者の空想の産物ではないのです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ