たぶん、分岐点⑥
パアッと喜ぶユイは興奮を抑えられないまま、しかし何を教えてもらえるのか期待の目をカリナに向ける。
「良い話ではないわよ。……ルイス団長にもついでにお話するわ。けれど、どうか他言無用でお願いいたしますわ。」
ユイには悪いが、カリナの死亡フラグ回避に協力してもらうことにする。彼女の前ではカリーナとして存在するようにするから。
「詳細は分からないけれど、私、誰かに殺される予定なの。だから正直、貴女の申し出はとても魅力的だし、その力をお借りしたいわ。」
こちらが死を警戒していることを伝えられれば、より詳しく死因を話してくれるだろう。
そう思い口にしたが、それを皮切りに皆思い思いを次々と口にし始める。
「カリナ様が殺される……?先ほどから黙って聞いていましたが、貴女を死に追いやるような力の持ち主はこの世界にはいないのではないでしょうか。」
「分かります、ルイス団長。そう思いますよね。でもカリーナ様はこのままいくと収穫祭の二日目に、呪いで倒れてしまうんです。わざと受けたその呪いを解呪せずに……って、え?なんで殺されるって知っているんですか?」
「収穫祭の二日目?カリナ、呪いをわざと受けるのやめなよ。」
「なるほど、わざと……となるとどなたかを庇ったりされるのでしょうか。カリナ様であれば解呪なんて一瞬でしょうに。」
「そうなんです!カリーナ様は身を挺して呪いをお受けになるんです。その呪いは特殊なもので……解呪すると近くにいる別の人に移るんですよ。だからお優しいカリーナ様は……解呪、しなかったんです。」
ユイが話しながら泣き始める。
始めはぐす、ぐす、と泣いていたのに、気づけば、カリーナ様ぁ、死なないでください、と大きな声でえーん、えーん、と泣き始めた。
ユイを心配してオロオロするルイスを横目に、レヴシオンはカリナとレティに身体を向ける。
「呪いってことは、辻褄、合うよね?そこさえどうにかなればカリナは大丈夫だよね?」
「そうだね……。けど、私の代わりに誰かが犠牲になるのも避けたいな。収穫祭の二日目までに色々対策を練ろう。」
「ねえ、君ならカリナが死なない方法知ってるってことで合ってる?」
ヒック、ヒック、と、まだ落ち着いていないユイを気遣うこともなく、レヴシオンが声をかける。
「はい、知ってます。だからこそ、私が聖女でいなければならないんです。疑われないようなちゃんとした聖女として。」
「それってさ、カリナが聖女として素質があると認識されることがダメってことであってる?」
「はい、できればもう外ではあまり魔法を使わないで欲しいです。そして私に、エリアヒールを教えて欲しいです。」
まだ落ち着いていないユイが話した内容に、カリナは一つ疑問を覚える。
「……ねえ、貴女が聖女でいることは、私が聖女となることと何が違うのかしら?……つまり、呪いの対象が聖女であるならば、貴女が私の代わりに呪いを受けることになってしまわないかしら?」
一同がユイを見つめる。ルイスが唾を飲み込むごくり、という音が響き、ユイが笑って答える。
「大丈夫ですよ。このカリーナ様の死亡フラグのところ、私何回も何回もプレイしているので、どの場面よりしっかり覚えてるんです。どうしたら私が望むルートに辿り着けるのか、ちゃんと把握してます。選択を間違えたりしません。」
泣き腫らして、まだ瞳がうるっとしている少女が、自信満々にそう言い切った。
最善策を彼女が知っているのであれば、ひとまず収穫祭が終わるまでは彼女に従った方が良いだろう。
ユイを心配していたルイスとカリナは肩をおろし、大きく息を吐いた。
「ユイ様、どうかご無理はなさらず、私にできることがあれば何なりとお申し付けくださいね。」
「いつもありがとうございます!頼りにしてます!」
「分かったわ。貴女の言う通り、外での魔法は控えるわ。そしてエリアヒールだけど、うまく教えられる自信はないの。でも貴女の言うゲームのシナリオには私が教えている描写があるんでしょう?」
「はい!植物園で教わりたいです!」
「そう、それならまた予定を組ませるわ。」
ユイはにっこりして、ぺこりとお辞儀をした。
「ありがとうございます!カリーナ様!」
「いいえ、感謝するのは私の方だわ。苦労をかけるけれどよろしくね。困ったことがあれば些細なことでも相談して頂戴。」
その言葉にまた顔を明るくして、ユイが満面の笑みで答える。
「カリーナ様にそう言ってもらえて嬉しいです!もっと仲良くなれたら、ぜひ、私にも砕けた話し方してくださいね!」
ルイスに加えてまた一人、表情がコロコロ変わる人物を知って、犬が増えたな、とカリナは微笑んだ。




