たぶん、分岐点④
死亡フラグを回収してくれるって言った……?
そんなの願ったり叶ったりだ。
けれど、彼女が求めているのは「カリーナ」であって、「カリナのカリーナ」ではないことは明白。
協力を仰ぎたい気持ちは溢れるほどあるが、自分が転生者であることは明かさない方が良いように思う。
つまり彼女を騙したまま関係を築くしかない、ということ。
どうするか……深く考えるまでもない。カリーナのファンやら推しやら言っているこの子に、カリナを守ってなど、口が裂けても言えない。
そして彼女に転生者であることも伝えるべきではない、ともなれば。
「私の死亡フラグ、とは、一体どういうことかしら?貴女は私の命が近々尽きてしまうとそう言っているの?」
「えっと、それは……。」
「それに、貴女今、私のかわいい猫ちゃんのことを『魔獣』と、『生きてるなんて』と、そう言ったわね。」
やってしまった、という顔をしているユイに、カリナは畳みかける。
「仮にこの子が魔獣だとして、例えば瘴気にあてられて命がつきそうになってたとしましょう。この状況で、なんで生きているのか、なんて非情なことを言えるのはどんな立場の人かしらね?ねえ、ユイ様、この子はなんで苦しんでいたのかしら?ご存知?」
なんと答えればいいのか分からず、黙ってしまうユイを見かねて、ルイスが口を開く。
「カリナ様、私も先ほど知ったのですが、実はユイ様には先見の力があるのです。疑いたくなるお気持ちはよく分かりますが、どうか落ち着いてください。」
「あのさ、カリナのファンとかいう割には、カリナの気持ちを考えないで自分の気持ちの押し付けばっかりしてるから悪いんじゃないの?カリナの役に立つかもと思って我慢してたけど、自分のことしか考えてないんならもう話しかけないでよね。」
レヴシオンまで参戦する。
場はこう着状態である。
まずいかもしれない。私はそこまで怒ってないんだけどな。空気重くなってきちゃったな。
口元を扇で隠し、どうしようかな〜と考えあぐねていると、ユイが意を決したように話し始めた。
「……すみませんでした。確かに何も考えずに言いたいことだけ言ってしまいました。信じてもらえるか分かりませんが、少しだけ私の話を聞いてもらえませんか。」
その真剣な表情に、カリナはレティに人払いを指示する。おそらく転生のことを口にするのだろう。自分にも関係がある話なので、耳に入れる人数は減らしておいた方がいい。
「いいわ。夕食までの間、まだ時間がありますもの。お話ししてみて頂戴。」
レティが戻り、紅茶を入れ直す。
カリーナはチョコスコーンを口に入れながら話を聞くことにした。
「この話は、他言無用でお願いします。たぶん、あまり話さない方がいい内容なので。」
ユイはルイスにも言っていないようだった。ルイスの目を見て、お願いします、と頭を下げる。
「私はまだ、聖女になれるほどの力を持っていません。現状、カリーナ様以外に聖女の適任はいません。」
「謙遜しないでください。ユイ様はあの日、大勢の怪我を信じられないほどの力で回復させたではないですか。聖女として違わない力です。」
「……違うんです。……私はあの場にいただけです。おそらくあの場にはカリーナ様もいらっしゃった。」
ユイはカリーナをチラリと見た後、目を伏せながら続けた。
「カリーナ様を、聖女にしたくなくて。私はあの日、多量の魅了アイテムを使用して、自分の手柄としました。黒髪の君……というのも、レヴシオン様ですよね。桁違いのステータスが同じですもん。」
「ステータス?何の話?」
「私、イージーモードの主人公なので、みなさんのステータス……えっと、つまり、その人がどれくらい強いのかが見えるんですよね。」
驚きの情報が出てきて、カリナはただただ表情を変えないように努める。
多量の魅了アイテム!
イージーモードの主人公!!
ステータスが見える!!!
転生者かつ原作プレイヤーであることを疑う余地もない単語の羅列。
情報を公開しすぎだし、この場に悪いやつがいたらどうするのかこの子は……。
この世界がゲームの世界とは微塵も考えられないレヴシオン、ルイスが難色を示し始める。
「そりゃみんな自分が主人公だと思って生きてるでしょ。人生イージーモード?結局何が言いたいわけ?」
「ユイ様、魅了アイテムとはなんでしょう?そんなものであの場を掌握できたとでも仰るつもりですか……?」
「えっと、順を追って説明させてください。まずそもそも、私は転生者で、前世の記憶があります。前世で私は何度も、この世界を攻略したんです。」
この子話すのあんまり上手くないな〜と、カリナがいつ助け舟を出すか考えていると、前世の記憶というところに反応したのか、レヴシオンとレティの目の色が変わっていた。




