たぶん、規格外⑤
ニコニコするレティちゃんに聞き返す。
「け、契約?」
カリーナちゃんのスペックについて、もう驚いてはいけないような気がしつつも、驚かずにはいられない。
「はい、契約でございます。カリナ様はドラゴンについてどの程度ご存知なのですか?」
「えっと……。前の世界ではドラゴンは架空の生き物で存在はしてなかったの。だからパーティーの日に飛んでいたことに驚いてね、機会があれば見てみたいなって思ったの。」
そしたら契約してるなんて言うから、私は動揺中なのよ。動揺してどうよう。ほら、動揺してる。
「そうだったのですね。では少しだけご説明させていただきますね。」
レティはカリナを近くのガゼボへ誘導すると、設置されているベンチへ腰掛けるように促した。
「まず、ドラゴンと言っても一括りにできるような枠組みはございません。色や大きさ、特性も個々に異なりますし、生きている年数が長い個体になると、人知の及ばぬ力を持つものもいると言います。」
「パーティーで見た子は小さくて可愛らしかったんだけど、もっと大きい個体もたくさんいるってことね。」
「はい、ドラゴンの全容は把握できておらず、生態については分からないことも多いようです。」
「それでも契約?して身近にいさせることができるのね。」
「はい。召喚の儀式で応えてくれた友好的なドラゴンと契約することで、危険をおかさず共存しています。ただ、ドラゴンは誇り高い種族ですので、召喚の儀式に応えてくれるようなドラゴンは、小さい個体が多いようです。」
なるほどね。
この流れはもう決まってるよね。
カリーナちゃんのドラゴンは大きいんでしょ。
驚きませんよ。
さて姿を見させてもらいましょうか!
「レティちゃん、早速だけどカリーナちゃんのドラゴンってどうしたら見られるの?」
「そうですね。百聞は一見にしかず。早速会いにいきましょうか。」
「召喚!って呼べたりしないの?」
「呼べないこともありませんが、ドラゴンも生物ですので実体があります。召喚には魔力を消費しますので、実用的ではありません。カリーナ様のような魔力量の多い方であれば可能ですが、一般的には帯同させるか敷地に住まわせることが多いようです。」
なるほど。
カリーナちゃんの巨大ドラゴンを広い土地に住まわせるのは目立ってしまう。つまり放し飼いして必要な時だけ呼んでいるに一票。
話しながら屋敷を歩いていると、カリナの部屋の向かいの扉の前で、レティが立ち止まった。
コン、コン、コン。
「失礼致します。メイドのレティです。お嬢様をお連れいたしました。入室してもよろしいでしょうか。」
どうぞ〜。と少年の声がする。
レティちゃん相手に堂々とした態度だ。弟……?私に弟はいなかったけどな。それともこのタイミングでお客様のいるお部屋?
ガチャリ、と扉を開けると、しっかり整えられた部屋の中央の小さなテーブルにウィローバスケットが置かれ、中には小さな布団と、小さなドラゴンが収まっていた。
ど、ドラゴンだ!!!!!
小さい!すごく小さい!え、カリーナちゃんのドラゴン逆に小さいの!?
パーティーの日に見た個体よりも小さな、肩に乗せられるようなサイズの華奢な、それでも凛とした骨格のドラゴンがそこにいた。
そして、さきほどの少年の声で、ドラゴンが話し始める。
「カリーナ。倒れたって聞いたけど大丈夫だった?」
「喋った!!!?ドラゴンが喋った!!!?」
「……カリーナ、何ふざけたこと言ってるの?人語が話せるドラゴンなんて僕と数えるほどしかいないに決まってるでしょ。」
驚いてレティちゃんに目を向ける。
「お嬢様、普通、人間はドラゴンと会話できません。先ほど『生きている年数が長い個体になると、人知の及ばぬ力を持つ』と申し上げました通り、カリーナ様の契約されているドラゴンは人語を話す特殊な個体となります。」
再びドラゴンに目を向ける。
ドラゴンは「ふぅん」とカリナを見返すと、机の上に座り直し言った。
「ねえ、カリーナはどこ?」




