たぶん、規格外④
オコオコプラントは雄叫びを上げると蔦を素早く編み込み、ドリル状にしてこちらに向けてきた。
やったー!RPGだ!なんて思う暇もなく、顔をこわばらせ「防御魔法って……?」と呟くだけで精一杯だった。
目の前にドリルが迫る。
えーんまた死亡フラグだ〜と半べそをかきかけながら、必死に考える。
どう考えても規格外のカリーナちゃんならこれくらい防げるよな。冷静に考えて、ファイアでファイアジャベリンが出せるなら……。
「シールド」
手を前に出し呟くと、大きな透明の盾が現れた。
予想通り、カリーナちゃんの身体は魔法を使うことへの敷居がかなり低い。
イージーゲームだ。
カリナは魔法の使用も戦闘経験もなかったが、ゲームでは魔法を使って戦ったことが何度もある。どんな魔法が展開できるのか、考える必要もない。
もう一度口にする。
「シールド」
今度は自分とレティちゃんを包み込むようなドーム型の透明な防御膜を展開する。なんて自由で簡単で楽しい操作感なんだろう。
オコオコプラントはさらに憤怒し、ドリルだけでなく複数の蔦でシールドを攻撃する。
跳ね返った蔦が近くの植物に当たり、気の短い植物は戦闘に参加し始める。
混戦になるな。
放っておけば全ての植物が動き出すのではないだろうか。
それはそれでみてみたい気持ちはあるが、先ほどのレティちゃんの助言が気になる。
ーーピアスを外したってことは、火力が上がったってこと?
試さずにいられるだろうか。否。今すぐ試すべきである。
大きく息を吸って、吐いて、いざ。
「ファイア」
あたり一面が真っ赤に染まる。
イメージは先ほどと同じ炎の槍。炎の壁なんかも試したかったけれど、やはり同じ技で威力を確かめないと。
結果は想像以上だった。というか、槍なのに範囲が広すぎて壁でも作ったかのような錯覚を起こす。
ポカンとしていると、レティちゃんが自慢げに言う。
「カリーナお嬢様はとても優秀で力のある魔法使いなんです。」
「その通りだね……。初めてだったけど、違和感なく魔法を使えてびっくりしたよ。」
するとレティちゃんが少し驚いた声を上げる。
「ファイアジャベリンの魔法名についてご指摘されていたので、カリナ様も魔法経験があるのかと思っておりました。」
「魔法は使ったことがないけれど、知識だけはあるの。」
苦笑するカリナを前に、レティちゃんは不思議そうな顔をした。
ファイアウォール、もとい、ファイアジャベリン、もとい、ファイアの炎やら煙やらの影響で見えなくなっていた視界が開けてくると、辺りが消し炭になっているのが目に映る。
ピアスの有無でこんなに違うのか。
忘れないうちに、と思い付け直そうとすると、レティちゃんが「カリナ様」と声をかける。
「せっかくですから、回復魔法もお試しされてはいかがでしょうか?」
「回復……って、あの植物にってこと?」
「はい。ヒールで治ると思います。」
「この消し炭が?ヒールで?」
「はい。」
困惑するカリナを前にして、レティが楽しそうに笑う。
まさかね、と思いながらも、この流れはさぁ……と苦笑いしてしまう自分もいる。こんなチート性能あっていいのか。悪役令嬢ってこんなにチート積まれてるのか。
植物だった消し炭に向かって手をかざし。情けない声でボソッと呟く。
「ヒール」
すると一面に水色の魔法陣が広がり、キラキラと白い光が瞬く。
心地の良いあたたかな風が髪を揺らし、なんだか笑顔になる。
みるみるうちに消し炭は元の姿を取り戻し、目の前にはニコニコプラントが現れた。
「これが異世界転生ね……。」
ピアスをつけながら呟く。
とんでもない現実を目の当たりにした気分だ。
実のところ剣も魔法もまだ現実味がなかったけれど、自分がここまで力を行使できてしまうとやはり認めざるを得ない。
とんでもない現実といえば…….と、ふと婚約破棄イベントを思い出す。
視界が天井を捉えていたあの時、いたな、見覚えがあるのに初めて見た存在が。
好奇心しか湧かないこの世界に、この心臓は耐えられるだろうか。
ドキドキする胸を押さえながら口を開く。
「……ねえレティちゃん。」
「はい、カリナ様。」
「この世界には、いるね、ドラゴンが。」
「はい、おりますよ。」
……いるよねえ!!!逸る気持ちを隠せずに口に出す。
「見たい!!!!!近くで見るのは難しいのかな!?」
するとレティちゃんは微笑みながら答える。
「カリナ様、カリーナ様はドラゴンと契約されておりますよ。」




