第八十五話 援軍到来
山城歴157年 資源採集宙域 北山群補給所
警備隊所属の閃光型は無事に補給所に到着、先行して離脱していた工作艦と合流する。
部外者の観点からすれば船を失うも誰一人欠けることなく非常に困難な任務を達成したことになるのだが、本人たちはそうは思ってはいない。
疲労と喪失感を感じながら失った船と仲間の落とし前をつけるため、この最果ての補給所に到着するや否や行動を開始した。
その隊員数は少ないながらもキビキビとした無駄の少ない動きに、補給所で働く作業員などの職員は感嘆したようだった。
ここから不自由なく逆巻港に戻れる程度ではあるが物資を補給した二隻は出発する直前に逆巻市からの増援と出会う。
「御影隊長、聞こえますか? こちらは山城宇宙軍所属星彩、艦長AIの言花です。」
「お久しぶりです言花さん……すぐに最新の報告書を送ります。それから、すみません、こちらは急ぎ逆巻港に戻らないといけませんので――――」
「その必要はありません、これから市長からの指示をお伝えします。」
言葉を遮るように言花が逆巻港からの指示を口にする。
それは護達にとってその半分は朗報といえるものだった。
「今回発見された戦争中の遺物……敵艦隊の動向を監視し、動きがあれば対処するため、警備隊は私の指揮下に組み込まれます。必要な装備も預かって来ていますので二隻とも補給所のドックで改修と整備を行うように。」
「ふむ、つまりは逆巻港に戻らずこのまま敵艦隊を相手にしていいのか? 手間が省けたが。」
「監視が必要な救助者はどうすれば? 彼らを連絡船で運ぶのは危険では?」
「救助者については補給所の一室に移送してください。通信が繋がれば、そこで市長から説明があるでしょう。それと御影隊長。」
「はい?」
「今回は私が指揮官です。思うところもあるかもしれませんがこちらの命令に従って頂きます、よろしいですか?」
「……了解しました。」
相手がどう出るにしても御影率いる隊は独自に行動するつもりではあったが、共闘ならともかく上官として軍艦が送られてくるとは思わなかった。
彼らは自分達で仇を取るつもりで準備をしていただけに、そこに対して掣肘をうける可能性もあるため意外な障害にも思えてくる。
今までなら任務内では自由な行動ができた部隊がここにきて大きく行動を制限されてしまったのだった。
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逆巻市駐留艦隊に所属する巡航艦、星彩型。
逆巻市の前身である逆巻要塞に所属し続け最後まで多数の艦を残した駆逐艦、陽光型。
その戦争当時に示した性能とAIのサポート能力は破格であったため、終戦後のすぐの防衛戦力を一手に担い、なんと型落ちながら再生産までされながら広く配備されるほどの普及をみせる。
ただ、戦時中でさえ最新鋭が閃光型に変わろうとしていたさなかであり、すでに生産番号が古い順から老朽化の兆しが見えていた。
星彩型は陽光型と交代しその穴を埋めるべく次世代防衛を担う目的で開発、配備された軍艦である。
陽光型よりも広い管理宙域をカバーするため、長い航続距離と高い機動力を持ち、乗り手の操作量や作業量の削減を徹底し、AIなどをハード面からもサポートするソフトウェア面も充実し、整備以外なら艦長一人でも運用が可能という軍艦らしからぬ乗り手にとって非常に快適な船となっている。
もちろん、宇宙潮流など特殊な状況下では人員を必要とするが民間船と比べてそれらの対応能力はずば抜けている。
開発は多数のプロジェクトから選ばれ、軍人不足を解消するための一手とされたが、終戦後から持続されている平和な状況から軍事予算の方がカットされはじめ、開発期間中にも予定生産数が減っていき、現在の総数は15隻とかなり少ない。
余談だが、この結果余ったモデルAI達は予備役としてではあるが軍艦を降りることになり、軍での使用を反対する反AI団体などの目くらましのため、幾多の建前を駆使し公務員の補佐として外回りの基地に配備されるなどやはり人がやりたがらない宇宙勤務についているのであった。
本艦は必要人員が少ない、本来は責任者として艦長と数名が乗る予定だったが軍人不足はかなり深刻だったために、結局は逆巻市に限定されてはいるもののモデルAIだけでの運用試験を経て、そのまま陽光型のモデルAIを艦長として配備される。
その結果、稼働出来る非常に時間が長くなり軍に重宝される結果となり、配備から現在に至るまで補給や整備が必要になる限界まで酷使されているようだ。
このように広く三箇所の資源宙域をヘビーローテションで周り駐留軍として働いているが近年栄転した速川以降、やはり貴重な軍人は送られてきていない。
そのため、この艦は現地指揮官としての権限で市長の指揮下として存在しているものの軍の所有物でもあるという微妙な立場となっている。




