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第70話 カシュトの過去と新たな来訪者

イベントも終わりに近づいた夕方


僕はカシュトの兄であるエドワードさんと二人で散策


「このイベントは、あなたが企画したんだそうじゃないか。素晴らしい」

「いや、それほどでもないですよ。僕はただ、民たちの事を何とかしてやりたいという気持ちで行動したんです」

「その行動力も、すぐにできるということではないと俺は思う。あなたは、本当に領主に相応しい方だ」

ほめ過ぎじゃないかな・・・


「ご家族の方は?」

エドワードさんひとりっていうのも寂しい感じがするけど

「別行動だ。親父から、次期ラインシュタイン家当主になるお前が挨拶して来いって」

「はは・・・」


と、エドワードさんは立ち止まって

僕の方を振り向いて

「本当に申し訳ない!」

思い切り頭を下げる次期当主


「いやいや、顔を上げてください!」

「そうはいかない!SSSランクの相手になめたマネをして、素行の悪さも明るみに出たあの大馬鹿野郎が迷惑をかけた事。ラインシュタイン家にとって、恥さらしだ!だから、何卒平にご容赦を!」


頑なだな・・・

ちょっとため息をついて


「エドワードさん、そこまで思い詰めないでください。あなたがそこまで悩んでいる姿を領民たちに見られる方が、余計な恥さらしになると思いますよ?だからこそ、あの件を教訓にして、再発防止に努めるのが得策だと僕は思います」

「・・・すまない、少し興奮しすぎた・・・」

「いえ・・・」


また少し歩いて

ジェンティス広場付近のベンチに座る


「リーヴェルさん、あなたはあいつの事どれくらい知っている?」

「カシュトですか?そうですね・・・、僕が知っているのは、フィリオル魔法学校の前の担任の先生に集団で暴力をふるったり、罵声を浴びせたりしたという事ぐらいしか・・・」

「そうだったか・・・。あいつは、悪の塊みたいなもんだ。少しだけあなたに話そう」


エドワードさんは丁寧にカシュトの過去を話してくれた


彼が魔法の力に目覚めたのは、7歳の時

2つ上のエドワードさんは、彼よりも下のほうだった

おまけに、学力の方もカシュトが勝っていた

父ジークは、本来ならば兄エドワードが次期当主になるのが筋だが、魔法や学力のことを考えるとカシュトにしてもいいんじゃないかと検討していた

が、カシュトは魔法の力に頼り過ぎたせいか

素行が酷くなっていく

魔法で領民たちにけがをさせたり

自分の事が嫌いという領民には、罰金を徴収したり

酷い時には、準貴族を馬鹿にした罰として

拷問をさせたりなどを繰り返した


「何て言うか、呆れて言葉が出ませんね」

「本当のアホだ、あいつは」

「でも、何で今まで黙っていたんですか?」

「父はラインシュタイン家を守るためだと言ってたんだが、それだと民たちが不満を爆発してボイコットするかもしれないと俺は忠告したんだが、父は譲らなかった。それに、民たちも悪いのはカシュトで父は悪くないという意見も多くあって、結局、ボイコットにはならなかった。でも、そんなときにあなたがあいつが学校でも悪さをしていることが明るみに出て、父はようやく堪忍袋の緒が切れて、あのバカを勘当した」

「遅すぎる判断ですね」

「まったくだ・・・。俺が父の立場だったら、即刻勘当しているところだ」


話を聞いているうちに、日が暮れて

イベントも終わっていた


「俺の話で時間が過ぎてしまった」

「いえ、貴重な話をありがとうございました」

「それと、これはあくまでも忠告なんだが、あいつはやられたらやり返す質で、何をしてくるかは分からない。だから、念のために警戒をしておいた方がいいぞ」

やられたらやり返す

どこぞのドラマのセリフだ

「ご忠告ありがとうございます」

「では、また」


エドワードさんと別れて、シーナさんと合流


「ごめん」

「いいよ、片付けはみんながしてくれたから」

「そうか・・・」


僕の姿を見つけてか

民たちがどっと寄ってきて


「リーヴェル様、本当にありがとうございました!」

「あなたのおかげで、売っていた商品が全部売れました!」


売り切れになる店がほとんどだったという

初めてにして大成功を収めた


あと、セドリックさんの肉はどうなったんだろうか?


「あ、リーヴェル様」

「セドリックさん、どうでした?」

「はああ・・・」

「あ、あの、ため息なんかついて、どうされました?」

「もう、疲れました」

「え?」

「あ、勘違いなさらないでください。行列が途切れることは一切なく、焼いて焼いて焼きまくりました。その結果、売り上げが金貨50枚ほどになったんです!そのせいで、もう腕がパンパンで」

それで、“疲れた”のか


「金貨50枚ですか!?」

「凄過ぎ!」

「自分でも夢を見ているんじゃないかっていうほど驚いてます。それだけじゃなく、うちの肉をぜひとも料理の食材として使わせてくれって、王都のレストランのマスターがオーダーしてくれたんですよ!」

まさかのオファー!?


「これも、リーヴェル様の企画したイベントのおかげです!もう、何とお礼を言えばいいのか」

「お礼だなんて、僕はただ・・・」

「分かってます。でも、本当にそれくらいあなたには感謝してるんです」

ギュッと僕の手を握って

「また、このイベントをするならぜひ参加させてください!」

「はい、勿論です!!」


こうして、嬉しいことだらけのフリーマーケットは無事に成功


家に着いて早々

「だんな様、大変で御座います」

「どうしました!?」

「国王陛下からお手紙を頂戴しまして」

「陛下から・・・?」


手紙の内容は

「ジュリアナが失踪」

とある


・・・は?

姫様が、失踪!?


でも、何で・・・?


コンコン


ドアをノックする音に反応して

「まさか・・・」


オルスさんがそっとドアを開けると

そこには、たくさんの荷物を抱えてきた姫様の姿が


「ベル君、私をここに住ませて!」

「・・・はい?」

どうも、茂美坂 時治です

カシュト、本物の馬鹿です

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