第62話 服まみれの家 前編
最後に挨拶する人は、服に埋もれた家の主と聞いたけど、どんな家なのかちょっと想像がつかない
「あの家かな」
色々な石を積み上げて作った家
例えるなら、世界遺産のアルベロベッロみたいな
ノックをしても返事がない
「すみません、リーヴェル・ジェスナーです。挨拶回りに来ました」
それでも返事がない
「留守かしら?」
「いや、人の気配は感じるよ」
「どうする、マスター?」
「申し訳ないけど、入った方が早いかな」
ドアを開けた瞬間
ドサドサと大量の服が雪崩のように流れてくる
「うわあああ!!」
「きゃあああ!!」
一瞬で服の塊に埋もれてしまう
「プハッ!!」
何とか顔を出すことはできたけど
辺り一面服だらけ
それも尋常じゃない数だ
一体何着あるんだ?
よく見てみると
ワンピースやブラウス、スカートといった女性が着る服ばかり
さらには、デザインもどれも違う
花柄や星など様々
手作りとは思えないほどの手触り
と、感心している場合じゃない
とにかく、この家の人に挨拶しないと
中に入っても、どこもかしこも服、服、服
リビングはどうなってるんだよ?
「すみません!!」
大声で呼んでみる
「はいはい、どちら様?」
奥から女性の声
「あら、まあ可愛らしい女の子ねぇ」
30代と思われる黒髪でセミロングの女性
「私の服、着てみない?」
「いえ、あの・・・」
「恥ずかしがらなくていいのよ。さ、こっちへいらっしゃいな」
僕の話を聞かずに、グイグイと引っ張られる
というか、シーナさん、シュルスター
助けてよ!
「いってらっしゃい」
「楽しんでこい」
おいいいいいい!!!
何でそうなる!!?
神獣たちは
「マスター、せっかくなんだからよ」
「慣れた方がいいですぜ」
裏切り者〜〜〜!!!
それからというもの
僕は数えきれないほどの女服を着せられ
シーナさんに限ってはよだれを滴ながら
ずっと見ていた
最後にこれかよ・・・
「いやあ、あなたって、私が作った服のサイズにぴったりね。今後もお願いしていいかしら?」
「もう、勘弁してください・・・」
挨拶する気力すら消えかけている
でも、領主としてみっともない姿は見せられない
「ゴホン、挨拶が遅れました。公爵様から、この地の領主として務めることになりました、リーヴェル・ジェスナーです。以後、お見知りおきを」
「えっ?リーヴェルって・・・」
女性はすぐさまに土下座
「先程は、大変失礼なことをして申し訳ありません!」
「い、いや、お気になさらないでください」
「ですが・・・」
「僕の紹介は終わりましたから、あなたの名前をお聞かせ願いますか?」
「セルドア・ランページです」
どうも、茂美坂 時治です
今回は前後編に分けての話です




