第59話 来客、次々と
新しい家での生活で、まずは自分の部屋を決めなければならない
数は18もあるため、どの部屋がいいのか迷ってしまう
シーナさんやシュルスターは即決したみたいだけど、僕は一応この家の主という事で、なるべく来客のためにも1階の応接室や台所から一番近い部屋という事にした
中は一人では、でかすぎるほどの広さ
ベッドもダブル仕様で、枕はフカフカ
でも、もう一つ大事なことに気付いた
それは、服をあまり持っていないことだ
今までは、シーナさんたちにコーディネートしてもらう事がしばしばだったけど、今後は自分で決めなければいけない
今日は、家で少しゆっくりしてから、ザーク地区で買い物しよう
そう決めた時、オルスさんがノックしてきて
「だんな様、ヘリッツ子爵様とケイトさんがいらっしゃいました」
「すぐに行く、応接室に通して」
「かしこまりました」
早速、この家での来客第1号が来た
「子爵にケイトさん、お久しぶりです」
「やあ、リーヴェル君。まさか、君がこんな立派な家を持つことになるとはね」
「いえいえ、これは陛下からいただいた土地ですから」
「あら、ヘリッツさんじゃない」
「お、シーナちゃん。君もここに住むのかい?」
「ええ、私はベル君のパーティーの一員ですから」
「そうか。でも、もう一人いるって聞いたけど…」
「呼んだか?」
後ろから、シュルスターが声を掛ける
「うわ、びっくりした!」
椅子から飛び上がる子爵
「驚かさないでくれよ、心臓止まるかと思ったじゃないか」
「悪い悪い」
「あの、シュルスター?この方は、貴族という事を忘れないで?」
「…え?」
きょとんとしている
おいおい、知らずに声を掛けたのか?
「これは、とんだご無礼を!」
勢いよく土下座をする
魔族でも土下座するんだね
「いやいや、楽しそうでいいじゃないか」
「あの、それよりも、僕に用があって来たんじゃないですか?」
「そうだった。実は、私とケイト、結婚することにしたんだ」
「…へ?」
結婚?
数年ぶりの再会でいきなり結婚ですか?
いや、それよりもまずは
「「おめでとうございます!!」」
タイミングよく、シーナさんとハモる
「ありがとう」
「ありがとうございます」
「なあ、話が分からねえんだけど…」
そうか、シュルスターは知らないんだったな
この二人がどんな関係かを
事情を話して
「それはめでたいな。でもよ、わざわざリーヴェルに言うってのも不思議だな」
「それはどういう事だい?」
「だってよ、普通は国王に一番に報告すべきじゃないのかって俺は思うぜ」
言ってることは正しいのに、半魔族が言うのもおかしな話だな
「君の意見は正しい。でも、私からすれば、彼に一番に伝えたかったんだよ。リーヴェル君には恩があるからね」
「そういうもんかね?」
またまたオルスさんが入ってきて
「だんな様、カヴェリア様がいらっしゃいました」
「え、父さんが?通して」
そういえば、ムーリット公爵の姿がない
もしかして、わざわざ父さんの迎えに行ったのか?
「よお、リーヴェル。元気そうじゃないか」
「父さん、今までどこをほっつき歩いてたんだ?」
「ひどい言い方だな、おい。俺はちゃんと警備局の仕事してたぜ」
「なら、いいけど」
「それにしてもよ、お前、大活躍じゃないか!しかも、準貴族にまで成り上がって!お前は、ジェスナー家、いや、サイロン村の誇りだ!」
それだけのために、来たっていうのか?
何か進展があったのかと期待してたんだけどな
いや、期待し過ぎか…
「カヴェリアさん、ご無沙汰してます」
「これは、ヘリッツ子爵様。お変わりないようで。ところで、そちらの女性は?」
「幼馴染のケイトで、この度私と結婚することになりました」
「おめでとうございます!」
と、父さんが肩をトントンしてきて
「何だよ、リーヴェル。こんなめでたい報告があるってのに、祝いもしないのか?」
「したいけど、突然の事で、それどころじゃないよ」
「水臭ぇ事言ってるんじゃないよ。ここは、父さんに任せろ!」
「へ?いや、あの…」
あれ?
いつの間にか父さんが主導権を握っている…
「シーナ、酒飲むか?」
「父さん、シーナさんに飲ませない方がいいよ?」
「何でだよ?」
「一杯目でべろんべろんになるから…」
「うぅ…、我ながら恥ずかしいわ」
「まあ、リーヴェルや子爵と飲めりゃ、それでもいい。んじゃ、俺はそこの街で買い出ししてくるわ」
と、家を飛び出す
あーあ、これは…
小一時間して、父さんやムーリット公爵、他の警備局の人も集まり
「それでは、ヘリッツ子爵様とケイトさんの結婚を祝って…乾杯!!」
「「「「「「「乾杯!!」」」」」」」
机にはズラッと、料理と酒が並んでいる
完全に居酒屋状態
そういえば、家に入ってまず服を買うって決めたことはどこへ行ったのやら…
そんな考えは、今日は無駄だな
明日、できれば行きたい
そんな思考を巡らせている時に
「えい!」
「むぐっ!?」
いきなり、ビール瓶を突っ込まされる
相手は、シーナさんだ
「ゲホゲホ、な、何するんだよ!?そんなもの一気に飲むと、悪酔いするよ?」
「リーヴェル君なら、平気でしょ?」
何を根拠に!?
「それより、シーナさんは大丈夫?お酒は?」
「ああ、私は水で十分だから」
成程ね
「リーヴェル君」
子爵が僕に近づいて
「君に報告すると決めていたんだが、こんな騒がしい事になってしまって」
「何だか、すみません。うちの親父が…」
「いやいや、こういう宴は初めてだよ。君がいた村でもこんな感じなのかい?」
「ええ、まあ。サイロン村の火酒をがぶがぶ飲む人が多いですから、加減というものを知らないんですよ。そのせいで、二日酔いになることもしょっちゅう」
「はは、にぎやかでいいじゃないか。私は、こういうのは嫌いじゃない」
「おい、リーヴェル!お前もこっちに来い!」
「すみません」
「楽しんで来い」
この宴は夜遅くまで続いた
どうも、茂美坂 時治です
今回は割と日常的な内容です




