第35話 叙勲式
4月28日
「・・・ああ、緊張してきた」
王宮の控室には僕とシーナさん、ベイデルさん、ヘリッツ子爵の4人
僕はこういう式は初めてで心臓がバクバクして気持ちが落ち着けない
「まあ、最初はそういうものさ。式が続いていくうちにだんだんと落ち着いてくるよ」
慣れた感じで話すヘリッツ子爵
「私はリーヴェル君のドレス姿見てみたかったなぁ」
シーナさんが何だかうっとりした表情で妄想を始める
別にあなたのために女装するわけじゃないんですからね
むしろ、女装自体が嫌だ
「私は皆さんの正装はかっこいいと思います」
よかった、ベイデルさんは普通の人だ
「でも、私もリーヴェルさんのドレス姿見てみたいですね。それに、普段着も」
・・・あ、この人も僕の女装姿を見たいんだ
これ以上女装したら僕の貞操どころか心が壊れそう・・・
ちなみに、僕とヘリッツ子爵はタキシード姿
うん、ばっちり決まってる
こういう男物はいいな
「リーヴェル君が着ると男装した女性とも間違われそうだね」
うっ、せっかくいい感じだったのに・・・
ヘリッツ子爵、笑いながら余計な事言わないでください
シーナさんとベイデルさんは白のドレス
二人とも美しい
「そろそろ、お時間です」
控室の警備兵がそう告げる
「行きますか」
僕たち一行は謁見の間へと向かう
中を覗くと貴族や関係者等でいっぱいだ
「すごい、これだけの人が来てるんだ」
「そりゃ、叙勲式ともなればこの目で見ておきたいという人が多いわよ」
すると、音楽隊による演奏が始まる
いよいよ始まるんだな
・・・ああ、さらに緊張が増してくる
「リーヴェル君、一度深呼吸して」
シーナさんが小声で言う
すぅ・・・、はぁ・・・
すぅ・・・、はぁ・・・
さっきの緊張が嘘みたいにほぐれた
「どう、落ち着いた?」
「うん、少し落ち着いたよ。ありがとう」
謁見の間の扉が開き、僕たちはゆっくりでしっかりとした歩きで進む
入っていくと同時に大きな拍手で出迎えられる
なんだか照れくさい
王座の目の前まで歩き
演奏が終わり
「国王陛下のおなりである!!」
王国兵隊長 ラシュコスが大きな声で場内に響かせる
同時に僕たちだけじゃなく参加している貴族の人たちも跪く
赤いマントに王様を象徴する冠を被った国王陛下が登場する
後ろから王妃様も
今までとは違う雰囲気を漂わせている
「面を上げよ」
静かに顔を上げる
「皆、忙しい中集まってもらい感謝する。これより、叙勲式をはじめる」
誰から呼ばれるのかな
「まずは、ベイデル・アスター」
「は、はい・・・」
おや?
彼女も少し緊張しているようだ
「まずは一つ詫びさせてくれ」
「は、はい?」
「お前の父の事だ。王宮使用人だったにもかかわらず、ギャンブルなどという馬鹿げた遊びをしていたことに気付けなかった。もっと早く気づいていれば・・・」
「へ、陛下」
「それでもお前は、父の罪を暴き、立ち向かった。その勇気は、素晴らしい。その勇気を称賛し、これよりお前には勇気を意味するセイドリアルの称号を与え、ならびに王宮使用人として使えることを命ずる」
「なっ!?」
思ってもみなかったっことのようにベイデルさんは驚きの表情を見せる
「元をたどれば、我が王族の失態でもあるのだ。せめてもの罪滅ぼしということでお前をここで働かせてやりたいのだ」
ベイデルさんは涙を流しながら
「謹んで・・・お受けいたします・・・」
次に呼ばれたのはシーナさん
「お前は、今回の件でまた金の流れの不正を暴いてくれた。しかし、今回ばかりはリーヴェルがいたからこそ成し遂げられたことだ。そこで、お前には正義を意味するキュルワーレの称号を与え、リーヴェルと共に冒険者パーティーとして行動することを命ずる」
シーナさんの目はキラキラ光り
「はい、喜んでお受けいたします」
今までにないテンションで言う
貴族たちからも
「あんなシーナちゃん、初めて見た」
「驚いたよ」
次はヘリッツ子爵
「ヘリッツ。お前には苦労を掛けてしまったな。たった一人の薬師として十数年間自らの道を歩み続け、そのたゆまぬ努力の結晶が先の魔物襲撃事件でも大いに役に立った。そこにいた人たちからも、薬師を増やしてほしいとの声が相次いだのだ。よって、新たに薬師の育成学校を設け、お前はそこの校長になるのだ。そして、薬師の試験内容が難しすぎるとの指摘もあり、内容の改善にも取り組んでもらいたい」
ついに、ヘリッツ子爵長年夢見てきたことが実現するのだ
「このヘリッツ・フェン・ノバリスト。国王陛下からの命に恥じぬ働きをお約束します」
「そして、最後にリーヴェル・ジェスナー」
僕の番が来た
でも、シーナの深呼吸しての進言もあって落ち着いている
「リーヴェル、まず謝らせてくれ」
と、陛下は僕に向かって頭を下げる
「ちょっ!?陛下、頭をお上げください」
「先日の襲撃事件、本来であれば我が国の兵隊を向かわせるのが筋だが、情報が遅れてお前に任せっきりになってしまった」
「突然のことでしたので、僕たちだけで何とかしようと必死でした」
「僕たち・・・?お前ひとりではないのか?」
「はい」
僕がパンパンと手を鳴らすと
扉の向こうから犬と猫、フィーナ
「ま、まさか、このどこにでもいる動物たちと戦ったのか?」
「どこにでもいる動物ではありません」
僕が指をパチンと鳴らすと
彼らは本来の姿に戻る
それを見た陛下は驚愕する
「・・・な、なんということだ。リーヴェル、お前はこれだけの神獣の主を務めているのか?」
「僕も未だに信じられません。ですが、彼らは信頼できる仲間です」
「ああ、何たること。何たる幸運・・・。私は・・・、神と話している・・・」
突然、陛下の様子がおかしくなる
「あの・・・、僕ただの人間ですけど?」
そういっても、ずっとあの調子だ
ここは強硬手段
陛下、ごめんなさい
陛下の頬をパンと叩く
「はっ・・・、わ、私は・・・何を・・・?」
すぐに我に戻った
「す、すまない。見苦しいところを見せてしまった」
赤面を抑えようと、深呼吸する
「さて、襲撃の件の続きだったな。ギルドのランクでいえばSランク以上のレベルだ。お前は仲間と共に戦ってくれて、被害を最小限に抑えることが出来た。国を代表して礼を言う」
陛下がまた頭を下げる
「しかし、当初は称号と報酬を当てる段取りだったのだが、こういう襲撃を抑えてくれたことも考慮し、お前には新たな領地を与える」
「領地、ですか」
「そうだ、王宮からもそう遠くはない領地だ。そこは、ザーク地区の目と鼻の先にある」
ザーク地区の目と鼻の先か
「お前にはそこの領主として勤めてもらいたい。しかし、爵位は我が国の法に基づき平民には与えることが出来ないのだ。それだけは許してほしい」
「お気になさらないでください。僕は民を束ねる力など持っていません」
「しかし、領主はそれも一つの務めだ。少しずつでもいいから、身に付けていってくれ」
いきなりできるわけではないが、少しずつ領地に住む人たちとの信頼を得ることが出来ればいい
陛下はそう考えてるわけだ
「かしこまりました。陛下からの命を忠実に遂行いたしますことをここにお約束します」
これでやっと終わったと思いきや
「実は・・・、もう一つ言わなければならないことがあるのだ」
「は、はい・・・?」
「襲撃事件の際、お前はある女の子を助けただろ?」
女の子・・・
ああ、路地裏で小さな子供3人をかばいながら魔物に襲われかけた・・・
え?
その子が陛下と何の関係が?
「その子は、私の娘なのだ・・・」
な、な、なんですとおおおおおぉおぉぉぉおおお!!!????
すると、陛下が通った道から女の子、いや、姫様が現れる
「この子が私の娘、ジュリアナ・フォン・ディーレストだ」
あの時とは格別な美しさだ
思わず見とれてしまう
姫様は僕の方へと歩みより
「立ってください」
へ?
僕から挨拶するのが筋じゃないのか?
しかし、姫様から言われたことなのですぐに立ち上がる
「ジュリアナ・フォン・ディーレストと申します。あの時は助けていただき、ありがとうございました。そういえば、お名前を聞いていませんでしたね」
「リーヴェル・ジェスナーです。あの時は必死だったもので、名前を告げず申し訳ありませんでした」
「いいえ、あなたが謝ることではありません。私は襲われないように子供たちと路地裏に隠れていましたが、魔物が来たことにも気付けず子供たちだけは何としても守らなければと必死でした。そんな時に、あなたが一瞬で魔物を退治してくださいました。そして、優しい言葉で私たちを安全な場所へ行くように言ってくださったこと、今でも思い出します。でも、2週間も会えなかったのが寂しかった。もう一度、あなたの顔が見たかったのです」
と、姫様は僕の両頬を優しく包み
「これは私からのお礼です」
姫様は自分の唇と僕の唇に合わせる
つまりこれは・・・
キス・・・されているという状態だ
その瞬間、誰もが驚きの表情を見せ
場内は静まり返っていた
どうも、茂美坂 時治です
お姫様が登場しました




