第20話 王宮にて
翌日、大通りに出るとたくさんの馬車が並んでいて
「これ、全部公爵様のかな・・・?」
「あ、リーヴェル君。こっちこっち」
シーナさんが大きく手を振る
隣にはヘリッツ子爵も
「おはようございます、もう体は大丈夫なんですか?」
「うん、あれから何の支障もなく生活できてる。リーヴェル君のおかげだよ」
「いえいえ、僕一人の力じゃないですよ。シーナさんやベイデルさんの協力があったからこそできたことなんです」
「そうだね」
「そろそろ出発するわ」
3人は馬車に乗る
王宮に着く前に確認しておきたいことがある
「その会議にはどれほどの人数が集まるんだ?」
「30人ほどね、あとは国王陛下や王妃様も参加されるから32~3人といったところかしら」
もっと多いのかと思っていたけど
王宮へ着いてすぐに警備兵に止められ
「こら、そこの赤髪の子。誰の許可で来たんだ?」
ほら、またこのパターンだ
「その人は私が連れてきた」
ムーリットさんが説明する
「これは失礼しました」と敬礼
もうこの光景を見るのはうんざりだ
謁見の間に集まった貴族たちは
「おい、見ろよ。赤髪の女の子が来てるぞ」
「しかも、ムーリット公爵と来てるじゃないか」
「もしかして、隠し子?」
ひそひそ話してるが断じて違います!
しばらくして国王陛下と王妃様も来られ
「皆、忙しい中集まってもらい感謝する。早速なんだが、議題を変更させてもらいたい」
「変更と申しますと?」
一人の貴族が問う
「我が国の予算についてという議題だったが、治癒魔法に関する議題へと変更することになった」
貴族たちはざわめく
「静かに!!!」
国王の大きな声が響き渡る
「実はここに、その治癒魔法に関して大発見した者がいる。リーヴェル・ジェスナーよ、前へ」
国王陛下から名前を呼ばれてビクッっとするが、
「はっ!」
「あの子、あのリーヴェル・ジェスナーか?」
「ほんと、女の子と間違われても仕方ないわね」
またまたひそひそ話
聞こえてますよ
国王の前まで来て片膝をついて、かしこまる
「お初にお目にかかります、国王陛下。リーヴェル・ジェスナーでございます」
「うむ、話は聞き及んでいる。さて、リーヴェルよ。そなたに質問させてもらいたい。治癒魔法に新たな道が見えたというのは誠か?」
「はい。しかし、それは私だけじゃなく、治癒魔法が使える方にも先にお伝えしなければいけないのですが、治癒魔法だけでは怪我や病気は治りません」
ここでもまたざわつき始める
「何を証拠にそんなことが言えるんだ?」
名乗り出たのは、治癒魔法使いの第一人者、ブラルト・フェン・ジュリアリス伯爵だ
「その前に、一つ聞いておきたいことがあるのですが。治癒魔法に関する魔導書はお読みになりましたか?」
「勿論だが、あのワイアット・アスターがさらなる可能性を見出してくれたおかげで私たち治癒魔法に長けた者が飛躍的に有名になった。そんなことも知らん平民の貴様に、治癒魔法のどこに欠点があると言えるのだ?」
「確かに、治癒魔法は怪我や病気を治すといわれてますが、それは完治するまでにするんでしょうか?」
「何が言いたいんだ?」
すると
「会議中失礼いたします」
一人の警備兵が慌てた様子で入ってきて
「何だ?」
「高熱の子供を抱えた母親がブラルト伯爵に治癒魔法をかけてほしいと言ってるのですが・・・」
「だそうだが、ブラルトどうする?」
「ちょうどいい機会です、私が治しましょう」
「では、通せ」
「いいか、リーヴェル。こういうのは治癒魔法だけで十分なんだ。それを今から証明してやる」
余裕の顔をしてるな
「すみません、伯爵。こんなところまで来てしまって。子供の熱を・・・」
「分かってる。では、始めようか」
高熱の子供の胸に手を当て、治癒魔法をかける伯爵
その時間はわずか10秒ほどだ
「よし、これでいいだろう」
「ありがとうございます」
「これで分かったか?」
「ちょっと、お母さんに聞きたいことがあります」
「何ですか?」
「お子さんが熱を出したのはいつ頃ですか?」
「1週間くらい前です」
「その間に何回治癒魔法をかけてもらいましたか?」
「ええと、10回ほどです」
「かけてもらったはいいが、熱は下がらないと」
「はい、でもそれが普通だと伯爵も仰ってました」
これは明らかに変だ
「伯爵、今までに何人に治癒魔法掛けたか覚えてますか?」
「何だ、いきなり」
「質問に答えてください」
「そんなに把握はしていないが、100人ほどはいたと思うが」
「その100人はこの子と同様の処置をしたんですか?」
「ああ」
「それで、完治した人はいましたか?」
「・・・・・・」
「何故、黙るんですか?」
「ブラルト、答えよ!」
「1割ほどだ・・・」
それを聞いた母親は青ざめて
「伯爵、私たちを騙していたんですか・・・?」
「ち、違う。私は、ワイアットと同じように研究をしていた」
「何で過去の話をしようとするんですか?」
「お前、何を隠してるんだ?」
伯爵の顔が大量の汗まみれになって
「申し訳ございません」
と土下座
「私は、治癒魔法には限界があると気付いてんですが、ヘリッツの薬は頼りにならないから治癒魔法だけでもなんとかしないとと思ってました」
「それで、思いついたのがこの方法だったんですか?」
「ああ、それでも効果はなかった」
「何故、話してくれなかったんですか?」
「言えるわけないじゃないか、治癒魔法には限界があるとは」
「それはつまり、自分の立場を守るためだったと?」
「・・・っ」
「馬鹿者!!」
国王が怒鳴る
「5年もの間、そうしてお前は人の命を無駄にしたのか!?」
「も、申し訳ございません」
涙目で土下座
そして、僕の膝にしがみついて
「頼む、リーヴェル。この私を助けてくれ!」
「では、これから治癒魔法とヘリッツ子爵の薬を使ってこの子の熱を下げたいと思います」
「子爵の薬?」
「先ほどブラルト伯爵が治癒魔法をかけてくれたので、ここは省略します。次に、子爵の薬を飲ませます。子爵、解熱剤はありますか?」
「ああ、この薬鞄の中に」
「使用量は?」
「1日3粒、朝・昼・晩に1粒ずつでいい」
「了解です。それと、水の入ったグラスもお願いします」
子供の左手に薬一粒で、グラスは僕が持って
「飲める?」
「うん・・・」
高熱ではあるが、意識ははっきりしているようだ
子供はグイっと薬を飲んで、僕がゆっくりとその子の口に水を含ませごっくんさせる
「これで、10分ほど安静にして」
10分後
子供の容態は少し回復していた
熱もわずかだが下がった
「ありがとうございます。あの、これをどれくらい続ければいいんでしょうか?」
子爵が母親の前まで来て
「3日ほど続けてください。ただ、治癒魔法をかけてもらう必要はありませんので、薬だけで大丈夫ですよ。それでも熱が下がらないというのであれば、先ほど方法で続けましょう」
「はい」
子爵は母親に3日分の解熱剤を渡す
「治癒魔法は毎日かけなくてもいいのか?」
まだ伯爵は疑問に思ってるみたいだ
「子爵が襲われた話はご存じですよね?あの後、僕が治癒魔法をかけて翌日に薬を飲んで、子爵の体は動けるようになったんです」
「1日置いても、いいのか?」
「はい、それで。治癒魔法の仕組みが分かりました」
「教えてくれ!」
「結論から言わせていただきますと、治癒魔法は応急処置に過ぎません」
「何?」
「順を追って説明します。まず、治癒魔法の魔導書には『切り傷やかすり傷程度であれば簡単に処置でき、病も罹り初めで効果がある』とあるんです。ですが、あの子の場合はそうではなかった。治癒魔法だけでは治りませんでした。では、何故薬を飲んだら10分ほどで効果が現れるのか?子爵、治癒魔法をかけずに薬を飲んだら効果はどれくらいの時間を置けば現れますか?」
「だいたい、5~6時間後だね」
「そんなに違うのか!?」
「そう、治癒魔法は薬の効果を驚異的なスピードで促してくれるものだったんです」
「そんなことに気付かなかったとは・・・」
伯爵はがっくりと床に膝をつく
「では何故、あの子の熱が下がったのかはご存じですか?」
「い、いや・・・。それは、わからない・・・」
「実は、熱が出ているのは自分の体の中で起こっている異常を現してるんです。要するに、あの子の体の中の戦争と思ってください」
「せ、戦争!?」
「僕たち人間の中には、赤血球や白血球といった目に見えない細胞が数え切れないほどいます。そして、菌やウイルスといった体の中には存在しないものが入ってきたら、異常事態となり、戦争が起こるんです」
「それは、熱が出るのと関係してるのか?」
「勿論です、人間の平均的な体温は36度ほどです。しかし、先ほどの菌やウイルスが体内に侵入したら
熱が上がるんです。実は、白血球たちが活発になるのは40度ほどなんです。だから、あの子の体温も40度近くまであった」
「それで、その子の体の戦争の真っ只中だった」
「おっしゃる通りです。しかし、同時に体力や水分も失ってしまいます。すると、中の白血球たちの活動も鈍くなって、命の危険にさらされてしまいます。伯爵が見落としていたのはこの事だと思います」
「そうか・・・」
「ですが、子爵の解熱剤があれば体力や水分はある程度保たれます」
「それを続ければ、助かる見込みあると」
「十分あるでしょう。あとは様子を見ながら、結果を待ちましょう」
「じゃあ、リーヴェル君。私が薬を飲んだら動けるようになったのはどうしてだい?」
今度は子爵が質問してくる
「そうですね、子爵はSランク冒険者パーティーに肩と足をナイフで刺されましたね?」
「ああ、そうだが」
「治癒魔法をかけて傷口は塞がったものの、足や肩を動かすことはできませんでした」
「だから、それがどうして薬を飲んだだけで動けるようになったのかを聞きたいんだ」
「焦らないでください。まず、人間の体には神経が通っています。この神経が手や足、目や口を動かす大元なんです。しかし、ナイフで刺されたら、神経は切られてしまい、治癒魔法をかけても神経は元には戻らないことも分かりました。ですが、子爵の薬リチェリトを飲んだら、その神経は回復し動けるようになった。この事から、治癒魔法をかけた後薬を飲めば効果は早く現れるとなるんです」
「しかし、薬を飲んでから治癒魔法をかけても一緒じゃないのか?」
「そう思って、昨日子爵の屋敷でネズミを使って試しました。が、効果が現れたのは6時間くらい経ったころです」
「そうだったのか・・・」
「では、伯爵。この方法で子爵とも協力して病気やけがで苦しんでる人たちを救ってあげてください」
「貴様に言われるのは癪だが、分かった」
こうして、治癒魔法後に薬を服用する方法が決まった
その後、国王陛下が子爵のところに来て
「ヘリッツ、まずは私を許してほしい」
深々と頭を下げる
「こ、国王陛下。顔をお上げください」
「私は、お前にひどいことをしてしまった。私はワイアットに騙されていたんだ。だからその・・・、罪滅ぼしに、再びお前の元に使用人を雇ってほしいんだ」
「へ、陛下?」
「これからは、一人でしようとするな。使用人とともに薬を作って、伯爵たちと共にこの国の発展に貢献してくれ。それと、お前しかいない薬師も増やしていかなければならない。だから、薬師育成機関を設ける。そこで、お前が所長となって育成に尽力してくれ」
思ってもみなかったことだろう
子爵は大粒の涙を流し、
「わかり・・・ました・・・。この、ヘリッツ・フェン・ノバリスト・・・、全力で・・・取り組ませていただきます・・・」
「ブラルトもお願いできるか」
「勿論でございます、陛下」
よかった
子爵はこれからすごい人になっていくんだろうなと心からそう思った
「と、もう一つ確かめたいことがあった」
すると、国王は僕を見つめ
「リーヴェルよ、先ほどお前が話していた中で“神経”や“赤血球”といった聞きなれない単語が出て来たんだが・・・。ヘリッツは分かったか?」
「いえ・・・、私も初めて聞きました・・・」
「となれば、お前は何故我々が知らないような言葉も知っているのだ?」
あ、これはバレてしまったな
「答えよ、お前は何者なんだ?」
どうも、茂美坂 時治です
20話到達です
せめて、100話まではいきたいな




