第19話 解決
妖精たちが飛び立ってから1分も経たないうちに
「戻りました」のエフィリアの一言
「「「「「早っ!!?」」」」」
「もう見つかったのか?」
「はい、ここから1km先の小さな小屋にいました」
一分もしないうちに1kmまで飛べるのか
恐るべき飛行能力だな
「では、皆さん。私の近くまで寄ってください」
何をするんだろうと不思議そうな顔をする
「これからその小屋まで転移します。ただ、これだけの人数だと私の魔力では足りないので、主の魔力も使わせていただきたいのですが」
「僕は構わないよ」
「ありがとうございます。早速転移します」
床に巨大な魔法陣が現れ、光に包まれる
光が無くなると、その小屋の前まで転移していることが分かる
「ここに、お父様が・・・」
「あの、私は一度警備局に戻っていいかしら?」
シーナさんが手を挙げて言う
「それは、局長に報告するという事かな?」
「さすが、リーヴェル君。話が早いわね、ここからなら5分ほどで着くと思うから」
「僕たちはその捜査結果を言うと同時に彼の足止めをすればいいんだね?」
「その通りよ。私が言うのもなんだけど、気を付けてね」
シーナさんは駆け足で警備局へ向かう
「さてと、僕たちも行きましょうか」
みんなは何かと不安と緊張の顔をしている
ドアをゆっくりと開け、中を覗く
しかし、誰の姿もない
ここで魔力探知を発動
中にワイアットさんの魔力反応があるのは確かだ
が、その肝心の姿が見えない
これはもしかすると、隠蔽魔法を使っているのかもしれない
隠蔽魔法は、文字通り自分の姿を周りには見えないようにするために使われる魔法
透明人間のような魔法だ
ならば、もう一つの魔法をかける
無属性魔法の一つ、解除だ
「お・・・、おとう・・・様・・・」
ワイアットさんの姿を見たベイデルさんが震える
「なっ、俺は隠蔽を掛けたはずだぞ!」
「残念ですが、それは解除させてもらいました」
「どうしてここが分かった?」
「僕が使役している妖精たちが探してくれたんです。手間が省けました」
「妖精を・・・使役・・・だと?そんなの、有り得ん!」
「だったら、呼んでみましょうか?エフィリア」
すぐに飛んできてくれる
「何ですか、主?」
「いや、ワイアットさんが僕が妖精を使役してることを疑ってたから呼んでみただけだ」
「失礼な方ですね、主とは本契約も結んでますからね」
プンプンに起こる
「で、俺に何の用だ?」
「しらばっくれるつもりですか?もうあなたの逃げ場はないんですよ?」
「逃げようが逃げまいが、こっちの自由だろうが。それにここは俺の家だ。不法侵入罪で警備局に通報するぞ」
「どうぞ、したければ」
「随分と余裕なんだな」
「ま、そのうちに分かりますよ」
「さて、単刀直入に言わせていただきます。今回の子爵が襲撃された事件の犯人はあなたですね?」
「はっ、何を言い出すのかと思えば。くだらん妄言はやめな。なあ、アリアス。こいつが言ってることは嘘だよな?」
「兄さん・・・」
「どうなんだ?」
アリアスさんは黙り込むが
「も・・・」
「も?」
「もう、いい加減してくれ!!兄さん、いやクソ兄貴!!」
「テメ、もう一度言ってみろ」
「もうこんなことはやめてくれって言ってるんだよ、クソ兄貴!」
「この兄、いや立場的に上なこの俺に向かってそんなことを言うとは、やっぱテメェの母親とそっくりだな」
「母と一緒にするな。俺はその状況に苦しんでたんだ」
「知ったことか!大体、半分が使用人の血で半分が殺人鬼の血を引いてるテメェがギルドマスターしてるくせにそんな事が世間が知られたらどうすんだ?」
「知られてもいい。いや、俺としてはもうどうでもいいんだ。この件が片付いたら、マスターをやめて親が背負った罪と向き合って償うと決めたんだ」
「きれいごとばっかり言いやがって!テメェにそんな自信はねぇだろ」
「ギャンブルで借金ばかり背負うあんたに言われたくないな」
「やんのか、コラ!」
「本性を現したな!」
兄弟げんかを始めようとしたとき
ドアが勢いよく開き
「そこまでだ!!」
ムーリットさんの威勢のいい声が響く
「なっ、あんたは・・・」
「久しぶりですね、ワイアットさん。いつぶりでしょうかね」
「何でこんなところに?」
「お前を逮捕しに来たんだよ」
「な、なにを証拠に?」
「知らないとは言わせないぞ。この王都にあるすべてのカジノの支配人たちを連れてきた。それに、言い訳ができないようにいかさま防止用の水晶も持ってきてもらった」
「何でそんなに手際よくいくんだ!?」
「何だ、知らないのか?うちの娘が知らせてくれたぞ」
「ま、まさか・・・」
「そう、そのまさかよ」
ムーリットさんの後ろからシーナさんがひょこっと顔を出す
「こんなの・・・、何かの間違いだ・・・」
「この期に及んで、まだそんなくだらないことを言うんですか?元王宮使用人とは思えない言動ですね」
すると、ベイデルさんが近寄り彼の右頬を思いっきりたたく
「な・・・、何をするんだ・・・ベイデル?」
「お父様、私失望しました。お父様がこんな穢れた方法で借金を帳消ししようなんて・・・」
「違う、私はそんなことはしていない」
「はい、言い訳は結構。詳しい事は警備局で話そうじゃないか」
膝をついてがっくりと落とす
しかし、まだこれでは終わってない
ワイアットが連行された後、
「あの、支配人さん。良ければ、その水晶見させていただいてもいいですか?」
「あの男の行動をかい?もちろん」
天井に映し出されたのは、ブラックジャックやポーカーで負けまくっているワイアットの姿
で、内ポケットから金貨50枚ほどの量を出してきてさらに賭けを行う
これを何度も繰り返していたと話す
となれば借金は大王金貨1枚分ではないだろうな
それよりも多くの額だろう
それともう一つ、僕はマスターに聞いておくべきことがある
「マスター、まだ隠してることがあるでしょ?」
「なんだ、リーヴェル。突然に・・・」
「ギャンブルで遊んでいたワイアットの身代わりをしたんですよね?あなたは、そのために変身魔法を習得、いや強制的にさせられたというのがいいですかね?」
「・・・もう、言い逃れは出来ないな。その通りだ、俺はあの男に身代わりを要求されたんだ。変身魔法を覚えろって」
「しかし、変身魔法はかなり高度な技術が必要な魔法のはずですが」
「母の魔力を受け継いだのかな・・・。母は犯罪者であり同時に魔法使いでもあった。当然、魔力量も他の人とは比べ物にならないほどだ。でも、リーヴェル。変身魔法は母から教えられたものだ。俺は、あの男に悟られないように隠していたんだ。でも、うまくはいかず、結局あの男のいいなりになっていた」
「協力したとなれば、あなたも彼と同様の罪を背負う事になります」
「そうだな、俺は共犯したんだ。なら、母の罪だけじゃなく兄との罪も向き合ってって、これじゃ同じ言葉を繰り返すな・・・」
「罪は罪です。償って次の道へと進んでください。この僕が言うのもなんですが」
「ハハッ、言ってくれるね。それじゃ、俺も警備局へ行くよ」
翌日、シーナさんが取り調べた情報を持ってきてくれた
まず、アスター家が借金を背負うようになったのは先々代の使用人、エリオット・アスターから始まった。彼は、酒と金だけに生きていたいわゆる欲の塊だ。休みをもらっては1日中ギャンブルに明け暮れていた。そして、先代ギャロット・アスターもまたカジノで借金を背負うように、ワイアットも同様だった。これに疑問を抱いた財務局は徹底的に調べて、アスター家が背負っている借金の総額は大王金貨30枚分、30億円相当だという
しかし、これほどの金はどこから調達したのか?
これも調べた結果、地方の銀行がアスター家に毎月金貨500枚分、500万円ほど不正融資していたことが判明
そして、それに気付いた銀行員たちは財務局や警備局へ通報する前に銀行の頭取とエリオットやギャロット、ワイアットたちに口封じのために殺害されたことも分かった
さらなる余罪が出てきたため、ワイアットは裁判にかけられることなく犯罪者奴隷として一生暮らすことが決まった
同情の余地もない
もう一つ分からなかったのが、なぜ治癒魔法が専念されるようになったのか
実は、これもワイアットが仕組んだことだ
ワイアットは、子爵の財産は借金の帳消しができる額があると見込んで5年前から密かに薬だけじゃなく治癒魔法でも治せないのかと研究を重ねていったが、うまくいかなかった。ならば、薬師の地位を落とせばいいと思いついた彼は、最愛の娘でヘリッツ子爵の婚約者であったシェリアを利用しようと、猛毒のキノコを使ったスープを飲ませ、病だと嘘を言って薬ではどうにもならないことが分かり、結果として彼女は帰らぬ人となり、彼もまた薬師の地位を落としていた。これで終わりかと思えば彼の行動はまだ続いた。今度は、ベイデルさんや執事たちが交わしていた王族たちの情報を手に入れ、不利な情報にでっち上げ国王陛下に提供
それは瞬く間に王宮に広がり、国王に仕えていた王宮使用人たちは全員解雇
これもワイアットの作戦通りだった
彼らに、自分がやったことを知られたくないために行ったことだ
「結局は自分の立場を守るためにやったと。何とも大馬鹿な男だ」
「聞いててあきれたわ、こっちも」
「で、そのあとの治癒魔法の事はどうなったの?」
「一応あの男が書いたメモが王都中に広まって、治癒魔法の専念が開始されて、今では誰でも治せるようになったと誰もが思ってるはずよ。でも、それは真っ赤なウソだった。リーヴェル君が見つけてくれたもんね」
「いや、魔導書を読んでいれば誰でもわかるはずだよ?」
「多分、そういう人たちはそこまで目を通してなかったんでしょうね。ま、私も含めてだけど」
「・・・」
「勿論、これはリーヴェル君にお願いするわ。国王陛下の前で実際にね」
「は?」
「あら、聞いてないかしら?明日、貴族たちが王宮に召集されて、月に一度の会議が開かれるの。そこにリーヴェル君にも同行してもらおうと思ってるんだけど。お父様からの許可ももらってるし」
「ちょっ!!?何でそんなに話が進んでるんだ?僕に何をしろっていうんだよ?」
「決まってるでしょ?あなたの治癒魔法と子爵の薬の組み合わせが一番適してると証明するためよ」
「何で僕にそんなことを押し付けるんだよ?」
「自分が発見しておいて、それを言う?」
「うっ・・・」
結局、またシーナさん一行と王宮へ行く手筈となった
どうも、茂美坂 時治です
今回はちょっと長めの話となりました




