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失恋した俺は俺にだけ弱い内面を見せてくれるクラスのマドンナと同居をする――これは完璧な彼女を救うための物語  作者: 有原優


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第47話 実家

 僕たちはその翌日。新幹線に乗って行った。


 母さんたちに会うのだ。

 母さんたちの引っ越し先は遠い。神奈川だ。

 大阪まで行ってそこから新幹線で二時間半以上だ。

 だけど、会わなくてはならない。


 それに会いたい気持ちもあぅた。

 俺は母さんから急に夢子の家に行くことを命じられた。

 そのため、母さんたちにあまりおわかれの挨拶なんてできていなかった。

 そもそも、あれから母さんともあまり連絡を取り合っていなかった。


「楽しみだね」


 そう、ミラが笑顔で言った。


「なんだか久しぶりな気がする」

「そうだなあ」


 ミラもたまに俺の家に来ることがあった。だけど、高校に上がってからはあまりなくなったはずだ。

 そのため、ミラも俺の両親に会うのは久しぶりなはずだ。



 それにしてもさ」


 そう、ミラが言って俺の手を掴む。


「新幹線、二人きりだね」


 そう言って笑う。


「まさか」

「勿論」


 ミラは俺の膝の上に頭を乗せる。


「危ないぞ」


 今も新幹線は走り続けている。

 新幹線は普通の電車よりも遥に早い。そのため、車内が揺れるのだ。

 ガタガタガタガタと走っていく車内。


 その中でミラの体もまた揺れている。

 もし仮に今ミラが体勢を崩して床に転がってしまったら大変なことになる。

 俺は、ミラの頭を軽く撫で、


「起き上がりなさい」


 と言った。流石に危なすぎる。


「えーいいじゃん」

「駄目です」


 俺がそう言うと、不機嫌そうに頬を膨らませながら、


「分かったよ……」


 と言って起き上がった。


「仕方ないなー」といって俺に抱き着こうとしたので必死に引きはがした。


 不満そうにはしていたがそれ以上、俺にいちゃついてくることはなかった。

 その代わりに、


「これ、見よ」


 と言ってきた。


 それはアニメだった。

 最近話題のアニメ。

 かなり有名なものだ。


 数年前大ブームを起こし、客員動員数を更新したほどの名作アニメの映画だ。


「これ、当時見てたよね」

「うん」


 俺とミラは二人でこの映画を見に行ったことがある。

 その時楽しかったはずだ。


「それを今」

「だって、懐かしいじゃなん」

「確かに」


 俺はあの時以来この映画を見ていない。だから、今見ても構わないのだ。


「じゃあ、見よう!!」


 そして、そうミラが言うと、イヤホンを持ち出した。


「まさか」

「そのまさか」


 基本一台のアイパッドにイヤホンは一本しかさせない。

 そしてイヤホンからつながるのは二本の耳だけだ。

 という事は。


「そう言う事」


 そう言って右のイヤホンを俺の左耳に、左のイヤホンを自身の右耳に入れた。


 これは俗にいう、カップルイヤホンだ。


「お、おい」


「いいじゃん」


 そう言ってミラは笑う。俺はそれに息をそっと吐いた。



 ★



「どうしよう」


 その頃家で夢子は、ため息をついていた。

 二人だけで智也の実家に帰り、自分はハブられている。

 これは、もうそういう事なのだろう。

 何もかも自分を通さずに話が進んでいく。

 それに一種の危機感を覚えて言っている。


 返ってきた後、智也がミラと恋人になっていたら全てがおしまいだ。


「駄目だわ、私」


 そう、暗い部屋で一人呟く。智也がいない昼なんていつぶりだろう。

 一人でご飯を食べる。

 虚しすぎて、涙が出そうになる。


 自分がもっと欲を見せないといけない。もっとアプローチをかけないといけない。

 それを知っていながら、全く行動が出来ないのが今の自分だ。

 情けない。

 本当に情けなさすぎる。


 多分、以前の自分が見ればがっかりとするだろう。


 それだけ今の自分は惨めでみっともない存在だ。

 夢子はぎゅっとカバンを抱きしめる。

 自分も智也の実家に向かおうか。

 否、それはおそらく不可能だ。智也たちの乗る新幹線は既にそれなりの速度で走り続けているだろう。

 それにその終着点についたとしても、そこから智也の家まで向かわなくてはならない。


 ミラが夢子の家までたどり着けたのとは、わけが違うのだ。


 夢子にはミラの家にたどり着くこと等不可能に近い。

 困難を極めてしまうのだ。


 それを感じ、夢子は膝を抱える。

 そして、カップラーメンを口にした。


 カップラーメンを食べるなんて久しぶりな事だ。

 普段は健康に気を使い、そんな物食べないのに。

 自分で料理をしているのに。


 ただ、好きな人。そこから自分の中で大分感情が動き出している。

 そんな中、やはり思いを封じ込め続けるのは不可能だと感じた。

 智也が好き、なのにその気持ちを外に出せない。


 そんな無力な自分に腹が立つのだ。



 夢子は自分の拳をただ、まっすぐに握った。

 そして、近くのソファを叩く。


「っ何で」


 夢子は叫ぶ。


「っ何で」



 さらに強く。

 だが、ソファは、その拳に乗せたストレスとは裏腹にダメージを受けていない。


「あ、はは」


 夢子の口から乾いた笑い声が響く。


 だめだ。駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ。


 ほんとうに自分の無力さが嫌になる。

 夢子はそのままソファに寝転がり、腕で目をこする。


「駄目だ、私」


 そう言って手のひらを額の上に乗せ、


 ただただ、泣いた。

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