家族編
「春ちゃん、高校はどうするの?」
なんというタイミングだ。聞き出そうとした瞬間お母さんから言われるとは恐れ入る。
「うぇ?こ、高校?」
「ふふふ、春くん、そろそろ聞いてくる頃だと思ったから先に聞いてみちゃった!」
ウィンクして舌をちょっとだす。
可愛いから許せるがこれがブスなら懲罰物だ。
「高校ってどんなところなの?」
「んー、そうねぇ春くんの行く高校は黒薔薇高校よ。所謂、男子高校ね。」
「だ、男子高...」
「あら?記憶がなくなる前はそこに行くと言って合格したのだけど変えたくなっちゃった?」
「う、うん、なんか嫌だ。他の高校に行くこと出来る?」
「できるわよ。男性の願いだものこれくらいは通るわ。ただし編入試験を受けないといけないけれど」
「うん、わかった!頑張る!!」
「ええ、頑張ってね!お母さんも何か困ったことあったら手伝うから。それとどういう高校に行きたいの?」
「共学がいい。そして偏差値が高いところ」
「そうねぇ、ここら辺だと白鷹学園かな。ここは名門も名門よ。男子生徒は少ないけれど数人はいるらしいの。ここら辺の男子は薔薇高に行くのだけどなんとか引き抜きできているらしいわね」
「そうなんだ...。編入試験はいつ受けないといけないのかな?」
「ちょっと待ってね。確認するから」
お母さんはテーブルに置いてある携帯で誰かに電話をかけている。数十秒で話が終わったようで、携帯を切る
「2日後の土曜日からなら可能だって、どうする?受ける?」
「2日後...名門だから難しいよね...でもやってるみる!受けるよお母さん!」
「よしよし!いい子ね春くんわ!もし落ちてたら私に任せてね!絶対入学できるようにするから」
ニッコニコの顔でそう言うお母さんに若干引いてしまうがなんとも心強い。権力の強そうな家に生まれて良かったと改めて思う。生まれも才能のうちだと言うがその才能はこの世界の俺もあったようだ。
「夕飯食べたら白鷹の過去問だとか勉強するね!
薔薇高辞める手続きお母さんやってくれる?」
「ええ、任せてちょうだい!春くん頑張ってね!」
「あと聞きたいことふたつあるんだけどいい?」
「...えぇ...何かな?」
「なんで入院してたの?記憶が亡くなる前の俺はどんなだったの?」
「やっぱり気になるよね...うん、記憶のなくなる前の春くんは世にも珍しく優しい男の子だったの。男性は物心が着くと女性を軽蔑し奴隷のように扱うのよ。でも春くんはそうはならなかった。多分、そう思っていたのだろうけど顔に出さずにしていたのよ。会話はだいたい、「うん」とか「ああ」とかの簡単な返事しか無かったけどね。とにかく世の男性よりは圧倒的に優しかったわ。でも今の春くんは天使ね熾天使。ここまで会話をしたのは春くんが7歳の時以来ね。今の春くんなら世界取れるわよ!」
「取らないよ!!」
「でも優しすぎるのはダメよ!頭のおかしい女は沢山いるのだから気をつけてね!」
「うん、わかったよ。それで入院については...」
「ふー、正直に言えばいいのか迷うけど言うわ。少しショッキングだけど我慢してね。あれは春くんが近くのコンビニに行くと言って出かけた時だった
辺りはもう暗くて危ないからお母さんがついて行くと言ったのだけれど『いい』って断られちゃって...20分経っても春くん帰ってこなくてね。1時間経ったくらいから不安で不安で警察に電話しようとしたら電話がかかってきてね。春くんが事故にあったって...お母さんそれ聞いて失神しちゃったの。夏希のおかげで病院まで行けたのだけど春くんは意識不明の状態だったの。病院の先生がいつ目覚めるかは分からないって、お母さん生きた心地しなかったわ...でも数日前に春くんが目を覚ましたって連絡が来て急いで仕事終えて来たの。そういう理由なの」
「そうなんだ、教えてくれてありがとう!」
「春くん辛くないの?」
「辛くないよ?だって今こうしてピンピンだしね!迷惑かけたのはごめんなさいだけど...」
「春くんは強い子なのね...。いいの無事だったのだから!もうほんとに春くんは天使ね」
そう言いながらお母さんの腕に包まれた。
ものすごく安心出来る。幸福感に包まれた。
「ちょっとお母さん!!お兄ちゃんに抱きついてないで準備手伝って!!!」
「あらあら、幸せなのを邪魔されたわ。春くんはゆっくりしていてね?」
そう言いながらお母さんは秋香の元に向かって晩御飯の用意を手伝いにいった。
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目の前には豪華な晩御飯が用意されていた。
寿司にフライドチキン、アボガドシュリンプサラダに蟹やら貝類やらと春の好物ばかりが並べられていた。
「どーう?春くん?春くんの好きな物ばかり用意したわ!!お母さんのこと褒めて!!」
「嬉しいよ!!お母さんありがとう!」
エンジェルスマイルをお母さんに繰り出す。
天使天使いわれて吹っ切れたのでポジティブに捉えるようにした。
「明日からの業務完遂できそう...天使すぎる」
「お兄ちゃん!お母さんのこと甘やかさないでね!!用意したのほとんど私なんだからね!」
ちょっとツンツンしたように妹の秋香が言う。
「うん、秋香もありがとう。とっても美味しそうだよ!!」
そう言いながら秋香の頭を撫でる
撫でられた秋香は顔を赤くして下を俯いたままになった。
そんなことをしていると姉が隣で...
「ふむ、この蟹はとても美味だ!ほら春、あーんだ」
「ん?あーん」
夏希お姉ちゃんがカニを片手に春の口に持っていく。春はそれをパクリと口の中に運んだ。
「ふっふっふ、この中で一番進展しいるのはどうやら私のようだな...!!」
「夏希お姉ちゃんありがと!こっちの貝も美味しいよ!あーん」
「な、な、どこでそんなこと覚えてきたんだ春!!魔性か!魔性なのか!」
「魔性って何?いいから食べて!ほらあーん!」
「う、うむ。あーん、ふむ、これもなかなかいける!」
夏希お姉ちゃんは誤魔化したいのだろうけど顔がりんごのように真っ赤だった。
その光景を黙って見ていた母と妹は...
「ちょっと春くん何してるの!!!そんなこと外でしたらダメだからね!!!」
「お兄ちゃん!!!!私にも私にも!!」
「お母さんにもやって!!!!」
その日の晩御飯はいつもより長い晩御飯になったのは言うまでもなかった。




