三年後ダストグラス
ダストテンダーから三十分かけて歩いて移動して、マユは公園前にいた。
トケルンから、設定、時間移動を呼びだし、デバイス指輪二号のニッコと予備、キーホルダーと設定をおこなう。
改めて公園をながめてみるけど、ひとはまばらで、いまの時間は子どもと遊んでいる親子連れが少しいるだけだ。
トケルンの表示、移動時間をDT01_0711の十二時にセットする。
一年後の同日、同じ時間に移動できるだろうか。
「トケルン、頼りにしてるからね」
返事が返ってくる。
「OK頼り!」
音声認識の声が返ってくる。
音声認識のテンションはこういうものかなと、理解している。
けど、少しだけ楽しくなる。
頭痛薬も持っているし、あとはサークルゲートに飛びこむだけだ。
いそぐ前に、手順を確認しようと思う。
一年ごとに、移動先でカラトさんにメッセージを残す。
お店にいけるようなら、お店にキーホルダーをおく。
不安定ならば、次には彼女の部屋の調査にいく。
このように、昨日の手帳には書きこんだ。
「さぁ、いくかな」
サークルが発生するベンチのすぐ近くまでいき、ひとつ深呼吸をした。
そして、一歩踏み出していくと、サークルが出現して、周りの風景が変わっていく。
バシバシッ、電流が走ったような音がする。
目眩や頭痛がしだして、半ば意識がとぶ。
倒れこむように、公園のベンチに座りこむ。
まだ、頭痛がそれほどにはひどくない。
トケルンの表示をみる。
移動には成功しているようだ。
表示は設定通りの時間DT01、一年あとだ。
周りを見回してみるも、あまり移動前の風景と変わっているところはない、メッセージも今度はこない。
ナガランのスクリーンから、カラトを検索して、電話を選ぶ。
「トケルン、スピーカー」
表示がスピーカーモードになる。
「もしもし」
「カラトさん、わたしです」
「カラトということは、移動時間のきみだね」
「無事かい、いまの状態は」
「異常にはなっていません。定期連絡です」
「わかった。三回めに気をつけて。たぶん、異常が起こりやすいだろう」
「わかりました」
「通話終了っと」
次の移動は、また一年後、いまの話しからもたぶん、異常がでてくるのは三年めなのだろう。
でも作戦通りに進めるため、移動はまた一年だ。
先ほどから、五分くらいは経っただろうか。
「トケルン、設定を変更」
設定画面からDT02_0711として、次の移動先には、十二時十五分とした。
こうしておけば、移動での時間のズレを確認しやすくなる。
再び深呼吸をして。
公園サークルに二度めの飛び込みをする。
バシバシッと音がする。
目眩がひどくなる、周りの景色が歪む。
瞬間的にトケルンエラーの表示をみて、意識がとんだ。
ベンチに横たわりながら、頭を抑える。
やはり、この前よりも頭痛はひどい。
トケルンの表示をみると、さらに一年先に移動できたようだ。
DT02時間にいる。
二年後の公園の風景も、そんなには変わることはない。
天気の様子が違うくらいだろうか。
一度、自販機を探して、飲みものを購入する。
冷たい飲みものを購入して、ベンチに戻る。
バックから頭痛薬をとりだして、飲む。
再びナガランのスクリーンから、カラトを検索して、通話にする。
今度の設定はスピーカーのままだ。
「もしもし」
「あ、カラトさん」
「きみは二年前のきみかい」
「そうです。時間は十二時二十分で、あってますよね」
「そうか、公園サークルの調査だね」
「まだ、キーホルダーは持っているかい」
「大丈夫です」
「あと変化はなにかある」
「メッセージもなし、まぁ順調です」
「定期ありがとう」
「はい、ではまた」
「通話終了ーと」
トケルンの表示をDT03_0711の十二時三十分に設定する。
これで三年後だ。
何が起こるのだろう、また過去だろうか。
「とにかく、調査だよね」
「よし」
ひとりで気合いをいれて、ゴミ箱に空きの容器を捨てて戻る。
そして、三年後となる時間移動に挑戦をする。
サークルに飛び込み、そして、トケルンはエラーとなる。
バシバシッと音がする。
目が回る。
目眩に、頭痛がひどくなる。
フラフラして、意識も途切れてしまう。
ベンチに横たわっている。
少し小雨が降っているようだ。
顔に雨があたる。
トケルンを慌ててみると、まだエラーの表示。
いまが、いつなのか不明だ。
とにかく雨よけになる場所を探して歩く。
頭痛は薬を飲んだばかりで、あまり効いていない。
幸い、マンションの階段部分が雨避けになりそうなため、階段のなかがわに、雨宿りする。
「うう、頭痛い」
「トケルン、時計オン」
「エラー」
「トケルン、検索カラト」
「検索、不明エラー」
「まだ戻らないの」
これは、いつなのだろうか。
スマホをとりだしてみるけど、スマホの表示をみても、エラーがでている。
錆びはひどくないから、一時的なエラーかもしれない。
仕方ない、小雨でこの時期なら、走れるかな。
コンビニにいくか、迷うが、ダストテンダーまで走ることにする。
早くカラトさんと話しが、したい。
走ることで、二十分の道のりになった。
幸いダストテンダーの前は、軒先があるため、玄関部分は雨にあたらない。
古い看板の前、入ろうと扉を開く動作をするが、扉は開かない。
仕方ない。
キーホルダーを看板のところにかけて、目印にする。
このあとの予定は、彼女の部屋にいくことだ。
でも、スマホもトケルンも直らないと、移動もろくにできない。
雨は少し止んできた。
近くのコンビニまで、日付を確認しにいこう。
今度は歩いて、十五分のコンビニにいく。
中にはいり、新聞コーナーから、新聞をみる。
すると、移動は成功したようだった。
DT03、三年後の7月11日に移動できた。
良かった。
でも、トケルンのエラーが直らないことには、今度は戻れない。
ダストテンダー前にいき、夜までそこで過ごそうか。
そこで昼間にもらった、ダストグラスのことを思い出した。
たしか、地図を確認した。
このコンビニから四十分くらいだ。
試しに、ダストグラスにいき、直せるのかきいてみよう。
コンビニの時計は十四時近くになっている。
こうして、雨がやんだなかコンビニから外にでる。
外を歩いていても、三年後とは思えないくらいに、街は変わっていないように思える。
四十分街なかを散策しながら、ダストグラスの前についた。
すると、驚いた。
着いてみたら、そこは喫茶店だった。
看板はたしかにダストグラスとなっている。
まさか、喫茶店をしながら鑑定屋もしているのか。
とにかく、お店に入ってみる。
「いらっしゃいませ」
「喫茶コーナーですか、錆びつき修理ですか」
「喫茶にもよりたいけど、これ直せますか」
鑑定屋とでているカウンター前までいき、トケルンとスマホをみせる。
「表示エラーだね」
「なんとかなりますか」
「まぁ、みてみよう」
「喫茶のコーナーにどうぞ。コーヒーでも入れましょう」
「では、温かい紅茶をください」
「わかりました。あとタオルもお持ちしますね」
「わ、ありがとうございます」
少し待ってみると、お店のご主人が、タオルを先に持ってきてくれる。
そのあと、椅子に座っていると、テーブルに暖かい紅茶を持ってきてくれた。
店内には、ほどよくBGMが流れていて、気分も落ちついてくる。
「紅茶ありがとうございます」
「あのメニューとかは」
「メニューはカウンターにかいてあるやつだけ」
「そうなんですね」
「あと鑑定依頼人の場合は、飲みものは無料だよ」
「そんな」
「それより、時間迷子かい」
「よくわかりますね」
紅茶を一口飲む。
なかなかに暖まる。
「この時計デバイスは、錆びつきで移動用だろう。未来デバイスなんて、わけがあるのさ」
「なるほど」
「はいよ」
みると先にスマホの画面をみせられた。
充電もしてくれているみたいだが、表示が直っている。
「電源を入れなおして、修理用アプリを使ったよ」
「自動ダウンロードだから、気になるなら、あとで削除してだな」
「いいえ、ありがとうございます」
「トケルンのほうは」
「こちらは、少しかかるね。まぁゆっくりしなよ」
「わかりました」
「電話大丈夫ですか」
「あ、どうぞ」
スマホが手元にきたため、カラトと電話帳を呼びだして、電話をかける。
しかし、留守電にかかってしまう。
「あ、もしもし。カラトさん」
「DT00のわたしです」
「三年後ですが、トケルンがエラーです」
「キーホルダーお願いします」
電話を終了する。
「キーホルダー、気づいてくれるかな」
「お嬢さんは、カラト店長とは、知り合いかい」
「いま従業員で、調査をうけてます」
「そうか、いつも拾いもの屋から、情報は仕入れているよ」
そうか、拾いものやさんは、情報通でもあったことを思い出した。
「拾いもの屋さんって、どの辺りのエリアまでカバーするんですかね」
前から気になることをきいてみた。
「けっこう拾いもの屋は、足自慢で、自転車に乗りながら遠くまでいくみたいだよ」
「この前は、ダストドレスもいっていたみたい」
「ダストドレスですか」
「そう駅からは、けっこう離れてるけど、大きい規模のお店だよ」
そうか、ダストのつくお店はここ以外にもあるのか。
「ダストテンダーは、規模って小さいですか」
「店長主体だけ、は珍しいかな。でも、大体のダスト屋は小規模だよ」
なるほど、そういう形態らしい。
「トケルン、時計デバイスなんですけど、どう直すのですか」
気になっているため、聞いてしまう。
「時間かかるかもしれないなぁ」
「電源エラーやアプリを使った自動修復なら、かからないけど、それ以上だとバラすことになるかもしれないし、やってみないとね」
「解体して、修理とかですか」
「修理パーツはあるけど、それで解決するかどうかだね」
どうやら、けっこう困った状況らしい。
「カラトさん、電話にでないしどうしよう……」
キーホルダーは看板においた。
お店に戻れば、気づく。
けれど、休みだったら、早くて明日になる。
「わたしの部屋って、三年契約してあるのかなぁ」
「もしかして、泊まるところもない」
「そうなんです。テンダーのお店からの連絡待ちで、なければ、漫喫かなぁ」
「わかった。とりあえず、スマホで連絡交換しておこうか」
スマホから、連絡交換アプリで、お互いに連絡先交換しあった。
「しばらくは、喫茶店でゆっくりしていてね」
「もし、用事できたら、連絡するよ」
「わかりました」
けれど、時間移動をした先で、どう動き回ればいいのだろうか。
「考えまとめたいから、紙とペンいいですか?」
鑑定のカウンターから、ご主人が両方をもってきてくれた。
「ありがとうございます」
スマホの表示をみながら、書き込みをする。
七月十一日の三年後、ダストグラス。
トケルン修理。
カラトさん、電話でない。
キーホルダー預ける。
紅茶を一口飲む。
まだ温かい。
「いらっしゃいませ」
お客様が入ってきたようだ。
「喫茶コーナーですか。錆びつき修理ですか」
「喫茶で、お願いします」
「こちらへどうぞ」
わたしからは、少し離れた席に通されたらしい。
また紅茶を飲む。
頭痛は少し収まってきたが、今度は眠気が強くなってきた。
身体が暖かい。
テーブルに腕をのせて、頭をもたせて、考え事をしていると、急に眠たくなってきて、気づくともう眠っていた。




