家族の食卓
「お嬢様、お嬢様、起きてくださいませ」
「ぅうーん…。おはようございます。レリア、起こしてくれてありがとう」
「おはようございます。お嬢様。ディナーに向かわれる前に、お召換えをしなくてはなりませんよ」
メイド数人がかりで、着ていたネグリジェ脱がしてもらい、Theロリータなフリフリドレスに着替える。
……このお洋服可愛い。今までは大して気にもしていなかったが気に入った。
眠ったせいで少し崩れた髪も、セットし直してもらう。
両サイドの髪を三つ編みのハーフアップにしてもらう。ふわりと薄桃色の髪が揺れた。
眠る時に炊いてくれていたアロマの香りがほのかに漂う。ほんのり甘いお花の香り。私の好きな香りだ。
「さぁお嬢様、お乗りくださいませ。途中まで歩いて、疲れてしまって食欲が落ちたら困りますので、車椅子で参りますよ」
「ありがとう」
車椅子に乗り、膝にブランケットを掛けてもらう。これも少女趣味な可愛らしいものである。可愛いに囲まれたこの空間、幸せだ。
「さぁ、参りましょう」
食堂に付くと、既に両親と兄、そしてアンジィが揃っていた。
「フィオ!! 一緒に食べれるのね! 嬉しいわ!! 」
瞳を輝かせたアンジィが駆け寄ってくる。
「ええ。これからは毎日一緒に食べようと思っているわ」
「嬉しいわ!! 特別な日でもないのにフィオと一緒に食べられるだなんて! 」
「フィオ、お部屋から出られるんだね。一緒に食事ができるなんて僕も嬉しいよ」
兄のエルネストが、近くに来て優しく微笑む。
ふわりと柔らかい、色素の薄いミルクティー色の髪の毛に、長いまつ毛に縁取られた優しげな金色の瞳。透明感のある肌。女の子に間違えられることもある兄は、大変な美少年だ。王子だと言われても疑わないレベルである。
「はい。お兄様。わたくし、体を少しでも強くしようと思いまして…。ほんの少しでも動くようにしますの。これからは毎日お散歩にも行く予定なのですわよ」
「それはいい。そうだ。是非僕も、お散歩に同行させて貰えないかな? お姫様」
おどけたように差し出された手にそっと自分の手を重ねる。
「ええ。もちろんですわ。わたくし、歩くのも遅いし、あまり長い間は居られないけれど、是非ご一緒してくださいませ」
にっこりと微笑んで、兄のエスコートを受ける。車椅子から立ち上がって、自分の椅子に着くと、アンジィが身を乗り出してくる。
「お兄様、ずるいですわ。あたくしもフィオとお散歩がしたいのですわ! 」
「アンジィも一緒に、三人でお散歩致しましょう? きっと楽しいですわ」
「……フィオがそう言うなら、3人でも宜しくてよ」
頬を赤くしながら強がるアンジィ。ツンデレさんだ。可愛い。
「うふふ。フィオったら大人気ね。もちろん私達も一緒に食事が出来て嬉しいわ」
ラベンダー色の瞳で優しく微笑む母は、私と兄の髪色を足したようなピンクグレーの髪の毛を、ゆったりと編み込んで肩に垂らしている。
可愛い系が八割の美人さんだ。
「今日のディナーの主菜はフィオが考えたらしいね。とても楽しみだよ」
母の隣で微笑むのは父だ。アンジィに似た、少しキツめな顔立ちだが、性格はとても優しい。
アンジィより少し濃い蒼色の髪に、クリーム色の瞳がよく映えている。
意図せず目の奥が熱くなる。こんな素敵な家族に囲まれて、私は幸せ者だ。
看護師さんとれなが来る時以外、ずっと静かだった病室を思い出す。飾り気のない、白い静かな部屋。
私は目を閉じると、苦い記憶をそっと打ち消した。
私はここの家の子だ。この家族と幸せになるのだ。前世の記憶など必要ない。
だからこそ生きなければ。この優しい家族は、こんな私でも死んだら悲しむだろう。何より、私がこの人達の笑顔を見ていたいと思った。生きなければ。ううん。生きよう。
微笑んだ顔は崩さずに、テーブルクロスの下で、そっと拳を握りしめた。
毎日更新じゃなくて、一つ一つのお話をもっと長くしようか悩んでいる雨月 桜姫です。
毎度おなじみ、反応頂けるとケーキ焼きます。そしてそれを皆さんに届け〜と願っておきます。(届くとは言っていない)という訳で、いつも読んでくださっている方、反応くださる方本当にありがとうございます。




