みっしょんその1
料理長の元へ着いた。
私は歩くのも相当遅かったらしい。たかが十数メートルよりも、車椅子に乗ってから数百メートルの時間の方が短かった。解せぬ。
「マルク、調子はどうかしら」
「お、お嬢様!? なぜこのような場所に……」
素晴らしく驚かれた。確かに厨房に赴く貴族はあまりいないだろう。だが、マルクが驚いているのは恐らくそこじゃない。
『よくお部屋からこんな所まで! 』というのが彼の本心だろう。顔にしっかりと出ている。
「実はマルクにお願いがあって」
「お嬢様のお願い……でございますか。何でございましょう」
私は先程の紙を差し出す。
「わたくし、お肉が食べられないでしょう。調理法を工夫すれば食べられないかと思って、書き出してみましたの」
「主菜や副菜になるものから、スープに入るお肉まで……。しかも具合が悪い時でもなかなか食べやすそうな…。これ、お嬢様が考えられたのですか? 」
「ええ。そうですわ。健康のためには食事から…と思いまして。マルク達、うちの料理人はとても腕がよろしいので、少し難しいものもあるかと思いますけれど、ついつい書き出してしまいましたわ」
「お嬢様のご期待に添えるよう、お嬢様の健康のために、料理人一同精進致します」
「まぁ。ありがとう。楽しみにしているわ」
取り敢えずミッション達成だろう。腕のいい料理人のマルクなら、きっと更に美味しいものを作ってくれるに違いない。
それよりも本日のミッションをひとつ達成したのだ。だいぶ嬉しい。
レリアに車椅子を押してもらって部屋に戻る。
お姫様抱っこでベッドに戻された。
疲れた。ほぼ寝たきり生活だった4歳児には、ベッドから起き上がるだけで大変なのだ。
しかし、今日の目標はもうひとつある。ディナーを家族と一緒に取る事だ。いつも部屋に運んでもらって食べていたが、どうせ車椅子だ。食堂に行って食べる事くらい出来るだろう。
これからはよっぽど具合が悪くて起き上がれない時以外、家族と食べるようにしようと思う。少しでも動かなければ。
「レリア、ディナーは食堂へ行くわ。少し疲れたから仮眠を取ろうと思うのだけれど、ディナーに向かう前に起こしてくださる?」
「まぁ。お嬢様がご自分からこんなにも動こうとなさるなんて……。もちろんでございます。お嬢様、おやすみなさいませ」
何やら瞳を潤ませて感動していた。これからはちゃんと動きます。なんかすみませんでした。
「ふわぁぁ」
優しい光の中で、抵抗することなく、私はゆっくりと眠りに落ちていった。
作者も学校で3階まで階段登ると息切れ酷いです。強くなります。
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