状況整理
私の名前はフィオラレーヌ・ステュアート。ステュアート公爵令嬢だ。もうすぐ5歳になる。
天蓋の中に置いてあった、豪華だかいかにもお姫様な可愛らしい鏡を手に取り、覗き込んだ。
薄桃色の絹のようなウェーブロングヘアがふわりと揺れる。同じく薄桃色の、長くくるんと上を向いたまつ毛に縁どられる、濡れたようなラズベリー色の瞳。
熱のせいもあってほんのりと上気した桜色の頬に、瞳と同じラズベリー色をした花びらのような唇。陶器のような美しい肌は、病的なまでに白い……大変な美幼女が見つめ返してくる。
肌の行き過ぎた白さによって作り物めいて見えなくもないが、さっきの美少女とはまた違うテイストの、儚げな美少女だ。
取り敢えず微笑んでみる。鏡の中の美少女も、控えめに微笑む。首を傾げて見れば、鏡の中の美少女も……現実逃避はやめましょう。
あら? もしかして私ってこの子? ……いやいやいや、今までだって自分の外見なんて気にせずに約5年生きてきたけれど…自分が美少女だったなんて知らなかったわ。
と言っても、実は精神年齢はもっと高い。先程の夢……あれはただの夢ではなかった。私の前世だ。
熱を出す度に、具合が悪くなる度に、数え切れないほどに感じて来た既視感。自分の顔色を見てそっと息を吐く。今世もまた、自由に動く事は出来ないのかしら。
前世も病弱だった私は、外で遊ぶこともままならないまま、最期を病院で過ごした。
両親にも悪い事をしてしまったし…悔いしか残らない人生だったわ。
今世も同じことを繰り返していいの? 否、いいはずがない。絶対に絶対に……私は今度こそ悔いなく生きるのだ!
病み上がりなのにテンションを上げすぎたのだろう。バランスが崩れて、糸が切れたように、ぽてんとベッドに倒れ込んでしまった。
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