表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
さよならを、先に言われた  作者: ニィギンヤ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/5

君は、初対面のはずなのに

出会いは、だいたい唐突だ。



 少なくとも俺の場合はそうだった。



 その日、空はやけに青くて。



 風は少しだけ強くて。



 どうでもいいくらい平和で。



 そして——



「やっと見つけた」



 知らない少女に、声をかけられた。



 ……いや、本当に知らない。



 見覚えもないし、記憶にもない。



 でも。



 少女は、まるで当然のように。



 そこにいた。



「えっと……誰?」



 正直な疑問をそのまま口にする。



 すると少女は、一瞬だけきょとんとして。



 それから、少しだけ困ったように笑った。



「ああ、そっか。まだか」



「まだ?」



 何が?



 というか、この会話、成立しているのか?



 俺は完全に置いていかれている。



 精神的に。



「うん、気にしないで」



 気にするなと言われて気にしない人間はいない。



 いたら会ってみたい。



 たぶん尊敬する。



「じゃあ改めて。はじめまして」



 少女は、少しだけ姿勢を正して。



 丁寧に、頭を下げた。



「——はじめまして」



 そう言った。



 ……遅い。



 順番が完全に逆である。



「いや、さっき“見つけた”って言ってたよな?」



「言ったね」



「初対面だよな?」



「うん」



「……どういうこと?」



 俺は混乱している。



 かなり。



 しかし少女は、まったく気にした様子もなく。



 どこか楽しそうに、俺を見ていた。



「まあ、そういう日もあるよ」



 ない。



 断言できる。



 そんな日は存在しない。



 少なくとも俺の人生にはなかった。



 そしてこれからも、あってほしくない。



「名前は?」



 少女が聞く。



「いや、そっちが先だろ」



 当然のツッコミである。



 順序は大事だ。



 人として。



「私はいいの」



「よくないだろ」



「あとで分かるから」



 出た。



 “あとで分かる”という最も信用できない言葉ランキング上位のやつ。



 だいたい分からない。



 もしくは分かる頃には手遅れである。



 今回はどっちだろうか。



 できれば前者であってほしい。



「……で、名前は?」



 もう一度聞かれる。



 仕方ないので答える。



「……悠斗」



「悠斗、ね」



 少女は、小さく繰り返す。



 その言い方が、妙に引っかかった。



 まるで。



 何度も呼んだことがあるみたいに。



 いや、気のせいだ。



 そういうことにしておく。



 その方が楽だ。



「うん、やっぱり悠斗だ」



 何が“やっぱり”なのかは分からない。



 分からないが。



 聞かない方がいい気がした。



 直感である。



 こういう時の直感は、だいたい当たる。



 嫌な方向に。



「じゃあ、悠斗」



 少女が言う。



 少しだけ、真面目な顔で。



「今日、暇?」



 急である。



 話の展開が急すぎる。



 だが。



 考えてみれば。



 俺は今、特に予定はない。



 そして。



 目の前には、よく分からないが放っておくと後悔しそうな存在がいる。



 これはもう。



 選択肢は一つだ。



「……まあ、暇だけど」



 答える。



 半分は好奇心。



 もう半分は——



 たぶん、流れだ。



「よかった」



 少女は、ほっとしたように笑った。



 本当に、嬉しそうに。



 その顔を見て。



 なぜか分からないが。



 少しだけ。



 胸がざわついた。



「じゃあさ」



 少女は、くるりと背を向けて。



 歩き出す。



「一緒に来て」



「どこに?」



 聞く。



 当然の疑問だ。



 すると少女は、振り返らずに。



 軽い調子で言った。



「思い出になるとこ」



 ——意味が分からない。



 意味が分からないが。



 その言葉は、不思議と耳に残った。



 そして俺は。



 結局、その後を追いかけた。



 理由は分からない。



 ただ一つ、言えることがあるとすれば。



 この時の俺は、まだ知らなかった。



 この出会いが。



 いずれ、どうしようもない別れに繋がることを。



 そして何より——



 この“出会い”そのものが、すでに一度終わっている関係の続きだったことを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ