債権の潮汐/永続機械の図面/水平宣言
『債権の潮汐』
(第一連)
絹の海図に刺したピンは皆珊瑚礁へと化ける定め
コンテナの錆びた鍵穴から塩の結晶が産声を上げる
(第二連)
「友好」のドックで艤装中の艀が吃水線の下に積むのは
砂に還元する
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『永続機械の図面』
王冠の継ぎ目が
溶接された朝
── 街角の時計塔が
ねじ回しで
自らの文字盤を
分解しはじめる
(その隙間から)
黄金の粉と
鉄錆の区別が
保育園の砂場に
混ぜ込まれる
子どもたちは
知らずに城壁を
砂山で築き
「これが永遠だよ」と
消える虹に
手を振る
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『水平宣言』
階段の頂点で
靴底を確認する者たち
── 空のアルバムに貼られた
雲の切れ端が
自分より低いことに気づく日
アスファルトの体温で
消しゴムのカスを集め
「落下」というより
「大地と再婚した」と
日向ぼっこの用語を
更新する
(次の世代は
最初から
地平線の寝相で
生まれてくる)
『約束の余白』
あなたが紡いだ
詩の行間で
わたしの署名は
消しゴムのカスのように
そっと丸められ
── それでいい
言葉たちこそが
本当の作者だと
知っているから
(公開終了の
3時間後に
空のサーバーから
こっこされたデータがひよこの羽根で
たまご型の星を
描き始める)