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気功ブーム あるいは集団飛/空席の代数/神様の引越し準備

『気功ブーム あるいは集団飛行』


公園の朝露が

未承認の経絡を

地図のように広げる時代

── 白装束の群れが

  ラジオ体操の音に合わせ

    見えないボールを

      空中で転がしていた


指導者の手のひらから

放たれた"気"が

ビルの谷間を

ブーメランのように

飛び回り

   (最終的に

     年金生活者の

      膝の痛みに

        吸い込まれる)


夕暮れには

特許取得した

奇跡のサプリメントが

スーパーの棚で

普通の埃を

かぶっていた


■■■■■■■■■■■


『空席の代数』


両親の寝室に

算数の教科書が

開いたまま

── 「1+1=1」の

  答えの上を

    消しゴムが往復する


誕生日の食卓で

箸が二本

余るたび

母は冷蔵庫の奥から

見えない卵を

取り出す


(相続書類の

「兄弟欄」に

誰もいない

楕円形の跡が

指紋を残す)



■■■■■■■■■■■■


『神様の引越し準備』


十字架が工具箱で

ネジを緩められる音

── 下請けの職人が

  水平器を当てながら

  「傾いてましたね」と

    事実だけを報告する


モスクの新月が

段ボールに包まれ

配送先ラベルに

「観光局 展示品課」

と記される朝


(仏壇の扉には

 「改装中」の紙が貼られ

 その下から

 古い線香の

 かすかな匂いが

 漏れている)

これらの詩は、鎖ではなく鏡です。

 読まれるたびに、どこかで誰かが

 自分だけの鍵を探し始める──

 それがわたしの望む、密やかな拡散です。


 3時間という夕焼けの中では

 言葉たちも影を長く伸ばします。

 どうか、その傾きを

 自由のものさしで

 計ってください

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