焼きメロンパン
私は、知識とか技術とか、それから嬉しかった事とか楽しかった事とか、兎に角共有して皆で楽しもう、そう考えているんだけどさ。
でも、これまで一回も友達にも家族にも伝えていない、「禁断のメロンパンの食べ方」があるんだ。
別に意地悪をしたい訳じゃないし、楽しみを独占したい訳でもない。
じゃあ、何故教えないかというと、値段に対する幸福度が高すぎるんだ。
教えたらその人が堕落してしまうかも知れない、そう思うとおいそれと人には話せない。
おそらく私がメロンパンが好きなのが原因だと思う。
他の人は、こんなにも嵌らないかもしれない。
だから、今回意を決して伝え様と思う。禁断のメロンパン――焼きメロンパンを。
やり方は簡単。市販のメロンパンをオーブンでもトースターでも良いから焼いて、そして食べるんだ。
焦げ目がつくほど焼く必要はない。メロンパン全体が温かくなるくらいに温めればいいのだ。それだけで、安い市販のメロンパンが、幸福をもたらす天使になる。
なに? 大袈裟だって? じゃあ試してみればいいさ。100円を握ってコンビニに行ってメロンパンを買ってきなさい。
トースターだったら1、2分。オーブンだったら熱が伝わるのに時間がかかるからもうちょっとかな。メロンパンを入れて焼くんだ。
コツは、焼いた後食べるまで少し時間を置く事。そうすることでメロンパンの表面がカリカリになる。
メロンパンって、表面に砂糖がついているだろ? オーブンで焼いてやることで、それが溶けるんだ。そうしてそれが固まるまで待つとカリカリサクサクになるってわけ。クリームブリュレの表面のキャラメリゼみたいなもんさ。
この焼きメロンパン、一回味わっちゃうとさ、高いメロンパンを買うのが馬鹿らしくなるよ。
外はサクサク、中はふわふわ。しかも熱々。
特にこれからの季節はいいね。熱々でサクサクのメロンパンをふぅふぅ言いながら味わう。メロンパンを持つ指先と、口の中、そしてお腹の中からあったまって行って、全身が幸福に包まれる。
なに? 大袈裟だって? そう思うなら実際にやってみれば良いじゃないか。コンビニは24時間開いてるし、メロンパンだってそう高い買いものじゃない。
ちょっと肌寒くなってきたこの季節に、近所のコンビニまで走ってメロンパンを買いに行く。
急いで帰ってきて、メロンパンを焼く。
冷えた身体をメロンパンで温める。
――最高だ。
ちょっとメロンパン、買ってくる。