使い魔の憂鬱
「ところでお前の頭はなんだ?」
と始祖様は尋ねた。
「はい。これはリーゼントという髪型です」
と俺は答えた。
「それは今流行っているのか?」
と始祖様は言った。
「いえ。昔は流行っていましたが、今は流行ではありません」
と俺は答えた。
「流行りは気にならないのか?」
と始祖様は言った。
「気にならないと言えば、ウソになりますし、たまに時代から取り残された気分になります。それはこの頭だけじゃなく、デコトラもです。両方とも50年くらい前の文化です」
と俺は笑った。
「ずいぶん最近だな」
と始祖様は不思議そうな顔をした。
たしかに始祖様からすれば、50年など最近の話だ。
「そうですね。始祖様からすれば最近の話です。そう言われたら、時代から取り残された気分になっていた俺が変でした」
と俺は言った。
「そうか。私も変なことを言ってるかもしれないが」
と始祖様は言った。
「いいえ。始祖様が正解です。どうも人間との付き合いが長くなると、毒されて、いけません。俺は自分の好きな道を行きます」
と俺は言った。
「うむ。それが良い。励め」
と始祖様は少し微笑んだ。
「ありがとうございます」
と俺は頭を下げた。
「ところで、お前たち、使い魔はおらぬのか?全然見ないのだが」
と始祖様は言った。
「使い魔。蝙蝠ですよね」
と俺は尋ねた。
「それ以外何がおる?」
と始祖様は言った。
「蝙蝠なんですが、なぁ」
と俺は喜羅羅を見た。
「どうしたんだ?」
と始祖様は言った。
「……、
なんていうのかな。パワー不足?」
と喜羅羅は目をそらして天使を見る。
「……、
環境に適応できないというか……、
おい兄貴なんか言ってくれ」
と天使は言った。
「カラスが……」
と羅刹は目を伏せた。
「カラスがどうした」
と始祖様の目は怒っている。
「いじめられちゃうんだよね」
と喜羅羅は寂しそうに言った。
「そうなんです。蝙蝠はカラスから攻撃を受けるのです」
と天使は言った。
「ちょっと待て。カラスはそんなに強かったか?」
と始祖様は尋ねた。
「夜なら負けることがないのですが、昼間に遭遇すると、追いかけ回されます」
と俺は言った。
「それに猫にも追いかけ回されるし」
と喜羅羅は呟いた。
「ちょっと待て。猫なんてそんなにいないだろう」
と始祖様は尋ねた。
「あぁ始祖様の時代は、猫はネズミ退治用だったと思いますが、今はネズミ退治はあんまりしていなくて、愛玩動物になっています。そして数はめちゃくちゃ増えてます」
と天使は答えた。
「そうか……、しかし使い魔がいなくては、不便だろう。連絡とかはどうしている?」
と始祖様は言った。
「連絡はね。メッセージアプリでスグに連絡を取れるよ」
と喜羅羅はスマホを見せた。
「なんと!その板のようなもので、連絡が取れるのか?これはどこに使い魔が仕込まれておる?」
と始祖様はじろじろスマホを見る。
「それはスマートフォンという機械で、インターネットという全世界とつながる通信網で連絡が取れる仕組みになっているんです。
もう蝙蝠も使い魔も使いません」
と天使は目を伏せた。
俺は内心びくびくしていた。
使い魔である蝙蝠が使われていない現状に、始祖様は不満を爆発されるのではないかと。
「うん?じゃあ今蝙蝠たちは何をしている?」
と始祖様は呟いた。
「そうだね。ペットとか?」
と喜羅羅は言った。
「ペットが一番多いですね」
と天使は答えた。
何か、うまいことを言わなければ、始祖様の機嫌を損なう。
「俺は夜間トラックの運転をするので、トラックの外に待機させ、超音波で道に何かないか探らせています」
と俺は言った。
「ほう。それはなかなか面白い発想だ。それで効果はどうだ?」
と始祖様は尋ねた。
「動物をはねることはなくなりました」
と俺は言った。
「それは良い。トラックにはねられると痛いからな」
と始祖様は呟いた。
「そりゃそうだよねって、始祖ちゃんトラックにはねられたことあるの?」
と喜羅羅は目を見開いた。
「あぁ。あぁ……」
と始祖様は目を伏せた。
なに?
始祖様がトラックにはねられたって。
めっちゃトラックのイメージ悪いじゃんか。
どうしよう。
どう挽回する。
「世の中のトラックすべてが事故を起こすわけではございません」
と俺は言った。
「あぁ気にするな。昔のことだ」
と始祖様は笑った。
「始祖様、昔って600年前トラックとかなかったでしょ」
と喜羅羅は不思議そうな顔をした。
たしかに、
始祖様はいったい……。
……
その頃、
蝙蝠使い魔協会では、緊急会合が開かれていた。
議題は、
「始祖様御光臨。我々はこれからどうする」
だった。
会場はとある洞窟の中で行われた。
(きーきーきーきーきーきーきーきー)
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(きーきーきーきーきーきーきーきー)
会合は紛糾していた。
(きーきーきーきーきーきーきーきー)
(きーきーきーきーきーきーきーきー)
会長が挙手する。
(きーきーきーきーきーきーきーきー)
副会長も挙手する。
(きーきーきーきーきーきーきーきー)
一同騒然。
(きーきーきーきーきーきーきーきー)
何者かが現れた。
(きーきーきーきーきーきーきーきー)
会長が激怒する。
(きーきーきーきーきーきーきーきー)
ばた……。
会長が倒れた。
(きーきーきーきーきーきーきーきー)
側近たちがかけよる。
(きーきーきーきーきーきーきーきー)
側近たちは叫んだ。
(きーきーきーきーきーきーきーきー)
……
(ぴろぴろり)
喜羅羅のスマホが鳴った。
「なんかね。蝙蝠使い魔協会でクーデターが起きて、会長が殺されたって」
と喜羅羅は言った。
いったい何が起こっているのだ。




