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VTuber事務所《FMK》 ~宝くじで10億当たったからVTuber事務所作ったらやべえ奴らが集まってきた~  作者: へいん
Chapter 2 "My Own Rainbow"

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ストームレディ・ストリームレディー

「――とまあ、ギャンブルは代表さんに却下されたから、1ヶ月記念配信の内容はプランBで行くことにするわ!」


 ちょっとの強風でも倒壊してしまいそうなオンボロアパートの一室。

 そのど真ん中で拳をグッと握る一鶴は、誰にともなくプランの変更を宣言する。

 画策していたギャンブル配信(プランA)は、事務所の圧力によって封殺されてしまった。

 なので、1ヶ月記念にオンラインカジノやってみた配信は没として、こんなこともあろうかと用意しておいた代案で勝負することにする。


「ナンネ、プランBって」


 唯一の傍聴人にして、一鶴の名誉マネージャーである蘭月は、くぁあっと欠伸をしながら心底どうでもよさそうに問いを投げてきた。

 一鶴のやろうとすることに1から100まで全部文句を付けてくる姑みたいに口うるさいマネージャーに、自分の配信のパーフェクトプランを説明してやるのは非常に億劫だ。

 しかし今回用意したプランBは、どこに出しても恥ずかしくないような無難なプロットである。

 これならば文句の付けようはないだろうって感じだ。


「困った時の雑談配信よ。これまでの1ヶ月を振り返りつつ、リスナーと触れ合い、そして未来への展望を語っていくの」


「オモンナ」


「じゃあギャンブルやらせなさいよ!」


「ソレとコレとは話が別アルヨ」


 配信の面白さという根本的な部分で文句を付けられてしまった。

 アレもダメ、コレもダメとケチを付けられ続けたのでは流石の一鶴も面白くない。

 文句ばかりの暴力マネージャーを睨み付け、


「じゃあ、どうやったら記念配信が面白くなるのか案を出しなさいよ。仮にもマネージャーなんでしょ? 配信者のマネなんだからそれくらい出来なきゃダメよねぇ~~~~??????」


 と、まるでチンピラみたいなポーズと首の角度で凄みを利かせた。

 暴の力が上である蘭月に凄んでみせたところで、あっちからすればゴジラがアンギラスに絡まれたくらいの感覚でしかないだろうことは重々承知の助だ。

 だがここで不満があるということをしっかりアピールしておくことが、後々の展開への布石と繋がる。


 一鶴の狙いは蘭月がマネージャーとしていかに無能であるかを証明して、自分の担当から外させることにある。

 まずは態度でそれをハッキリと示し、そして実務面でも頼りにならなかったという事実を積み立てに行く。

 多少気の長い作戦になるだろうが、蘭月が一筋縄でいかない相手だということは一鶴が一番良く分かっている。

 小さなことからコツコツとだ。


「フム、ソウネ……例えばダケド、ハイシン中に他のVTuberと通話をツナイデ、お祝いのコメントをモラウというのはドウアルカ?」


  しかし蘭月は涼しい顔で――クーラーもなく、梅雨でジメジメしていて蒸し暑いのに汗一つ掻かず――あっさりと代案を出してくる。


「ぐっ、な、なるほど、記念配信で凸や逆凸をして他のVから祝ってもらうってのは、割と常套手段よね」


「ぐっ、て本当にイウヤツ初めて見たヨ」


 言いたくなるのも無理はない。

 蘭月は普段VTuberの配信など絶対に見ないタイプの人間だ。

 それがいとも簡単に改善案を出して来るとは。

 蘭月の無能を証明する作戦はまた次回ということにしなくてはならない。


「ちっ……悔しいけどこの案は採用ね」


「ダケド、オマエVTuberとやらの知り合いがあまりイナイんじゃナカッタカ?」


「そうなのよね」


 一鶴が連絡を取れるVはFMKの幽名、☆、ナキ。

 それとこの間コラボした楼龍とツンくらいだ。


「小さい箱ってこういう時不便ね。自分から外に向けて積極的に顔を広げていかなきゃならない」


「FMKだって、ソノウチもっと増えるんじゃナイカ?」


「大事なのは今よ」


 今一鶴が使える駒はそう多くない。

 なので使える駒をフルに使える状態にしておくため、準備をする必要があるだろう。


「今繋がりのあるVには全員出演して欲しいから、予め連絡を取って予定を空けておいてもらうことにするわ」


「凸とか逆凸でアポ取ってオクノッテ、有りナノカ?」


「有りでしょ。まあ、アポ無しの方がスリリングで面白いけど、今回ばかりは堅実に攻めるわ!」


 むしろ逆にここでアポを取っておくことにより、アポ無しへの危機意識を薄れさせておく作戦だ。

 FMKのメンバーにメッセージを送ると、全員暇だったのか直ぐにOKの返事が返ってきた。

 なんて良い奴らなんだろうか。


「仲間って素晴らしいわね」


「でもオマエって真っ先にナカマを裏切るタイプネ」

 

「まあね」


 そこは否定しない。

 さておき、あとは楼龍とツンだけだ。


「えーっと……兎斗乃依っちへ、先日はどうもありがとうございました、と……もし時間があれば、あたしの1ヶ月記念配信にゲスト出演してもらっていいですか? よしこれでオーケー」


 まずは楼龍に打診してみる。

 数分ほど間を置いてから、スマホにメッセージが戻って来た。


『ごめん、今はそういう気分になれない』


 楼龍からのメッセージは、文章媒体でも賑やかな彼女にしては珍しく、短くてどことなくネガティブなお断りの内容が書かれていた。

 違和感を覚えながらも一鶴はしつこく粘ってみるが『ごめん』『無理』『しつこい』と短文だけしか返って来ない。

 これはもしや……。


「え? あたしもしかして嫌われた?」


『あーあ、ヤッチまったアルネ。ドンマイ』


「ええー」


 嫌われるような理由はない……でもないが、ここまで拒否られたのでは諦めるしかない。

 釈然としなかったが、一鶴は楼龍とのやり取りを打ち切って、直ぐにツンとの交渉に入った。


『仕方ないわね! どうしてもって言うなら出てあげるわよ! なんなら毎回出てあげてもいいわよ!』


 即決OKだった。

 流石はVTuber界一の都合の良い女だ。

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