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第123話 過去の事件

 無事に『停戦合議』が終わり、各部族がひとつにまとまった。エクランドからのメンバーと、一部のエイサム騎士団のメンバーは、一先ず安堵していた。


 しかし、エクランド側アレックス、ロアン、そしてワシと、エイサム側は副長は、逆に緊張が高まりつつあった。何故なら、安堵した連中とのパーティに、エイサム騎士団長だけが不在だったから…。副長にしてみれば、団長がバカなこと(謀反)を起こしたら、自分にも類が及ぶ。気が気ではないだろう。一応確認だけでもいておくか…?


「エイサムの副長さん、団長が行きそうなところに心当たりはあるかい?」


「団長が何かことを起こすとお思いなんですか?」


「そうだ…。今だから言うが、ミーシャたちはそう思って、ワシらのところに助けを求めてきた。だから今、ワシらがここにいるんだ。何か知ってること、心当たりなどあれば、教えて欲しい」


「あの人が何を考えているのか、私たちにもわかりません。ただ…」


「ただ、なんだ?」


「いつからだったかは定かではないですが、人が変わったように荒くなりました。時折、部下に暴力を振るうことも…」


人が変わった。部下への暴力…。何かが取り憑いたな?


「変わったと思うタイミングで、何かヤツか、ヤツの周りに変化はなかったか?」


「変わったこと…。ある部族の男が酒場で暴れたんです。我々が鎮圧に向かったのですが、団長は、その男を見た途端に斬りつけて、殺したんです。ただ暴れていただけの人間を…。とてもそんなことをする人ではなかったんです。だから私たちもただ呆然としてしまって…」


「他には、何かないか?」


「その後、10日くらい後ですか、騎士団所属の女性団員の1人が、惨殺体で見つかりました。犯されて斬られたんです。第一発見者は団長でした。衣服に血が付いていましたが、その時は、見つけた直後に抱きかかえでもして付いたのだろうと思っていましたが、今考えると、死体からの付着ではなく、『返り血』だったんではないかと思います。それほどおびただしい血だったので…」


「その一連の事件は、いつ頃のことだ?」


「領主様が毒殺される一月ほど前ですね」


「その領主毒殺の実行犯は、他国からの流れ者の『踊り子の女』で、その後に自分も毒を煽って自害したと聞いたが?」


「その通りです。1つ付け加えるなら、その女が来てから、団長と一緒にいるところを見た者がかなりの数います」


ふむ、女が本命、団長は捨て駒…。その捨て駒が暴走寸前…。いや、今となっては本命と捨て駒が入れ替わったか…?いずれにせよ、状況はかなりヤバいかな…。


「こういう仮説は成り立たんか?酒場の一件の少し前に、いきなり人が変わった。この時に『何かに取り憑かれた』とは…?その後、自分の部下を犯して殺した。その『取り憑いた何か』のせいで、血を見たい、或いは女を犯す・暴力を振るうことで、恐怖に慄く姿が見たい。だから人を殺す、女を犯す。その後、似たようなことはなかったか?」


「数件、起きています…。それらにつながりがあるとは思っていませんでした」


「『取り憑かれた』って、何にですか?」


「確証があるわけではないけど…。聞いたことはないか?『魔族』の存在」


「魔族って…、伝説の中のモノ、お伽話ですよ⁉︎ いないでしょう…」


「本当にそうか?お伽話の中だけか?人を誑かす、洗脳する、人間でもするヤツはいるが、魔族にはお手の物だと思うが…。実際この世に魔族である『悪魔』がいても不思議ではないよ」


「『悪魔』って、いわゆる『堕天使』ですよね⁉︎」


「エイサムの古い伝説に、『山を越えて悪魔が人を喰らう』という話があります。あくまでも伝説だとばかり…」


「マジか…」


ロアンは少々パニックになり始めた。


「そういう話が残っているということは、それに近しい何かがいた、もしくは、近しい何かがあったんだ、だから伝説・伝承が後世に伝わる。一概にお伽話とは片付けられんぞ?」


実際に、神使がいるしな…。言えんけど…。そういえば、ミーシャたちと団長の関係性は?


「ミーシャたちはどこ行った?団長とどんな関係があるか、副長は知ってるのか?」


「ミーシャたちは、さっきパーティにいましたけど…?」


「ミーシャたちと団長の関係ですか…?直接の関係はないですが、殺された団員は、ミーシャたちと同じ部族です」


ミーシャたちが危ない!


「ロアン、アレックスに伝えて人員集めろ!急いでミーシャたちを探すんだ!」


「承知!」


ロアンが走り出す。ワシはエイサムの副長とミーシャたちの立ち寄りそうな場所を当たることにした。ワシらがいなくても、アレックスにはロアンという参謀がいる。ワシらの行動を読むだろう。


◇◇◇◇◇


 ミーシャとカレンは、墓地にいた。そばにはマルタとその弟子、チャッキーとコーダもいた。ある墓石の前で花を手向けていた。おそらく、エイサムの団長に殺されたであろう女性団員の墓だ。おそらく、首長たちの会議のこと、内乱は起きなかったこと、そして仇を討つとの決意を伝えに来たのだろう。ワシらはその姿を、まだ遠い丘の上から見つけた。無事を確認したのも束の間、彼女らの背後の林の中に、エイサムの団長の姿があった!


「いかん!林の中にヤツがいる!クソッ、間に合えぇ!」


と猛ダッシュで丘を駆け下りる。その間にクロスボウに矢をつがえた。一応、木製の矢だ。相手は取り憑かれているとはいえ、生身の人間の姿だ。金属の矢を打ち込んだらどうなるか…?


 走りながらでは狙いなんて定まらない。威嚇でもいいと、先ずは一矢を放った。ものすごいスピードで矢が飛んで行く。前方にしか意識が向いていなかったのだろう、矢は相手の太腿に当たり、深くめり込んだ。


「グァ‼︎」


人のものとは思えない呻き声。それにミーシャやマルタが反応した。さすが男の子、コーダは女性陣を守るため、前に踏み出し、剣を抜いた。しかし、技量の差は大きい。


「コーダ!無理だ!彼女たちと急いで逃げろ!」


声の限りに叫んだ。マルタと弟子が魔法障壁を展開、一時的にバリアを張る。そこに、足を引きずりながらも斬りつけようとするエイサムの団長。もはやその姿は人ではなく、『魔族』の姿になっていた。


 クロスボウから2射目を放つ。今度は金属製にした。左肩に突き刺さり、左の腕は半壊だが、『魔族』は手を緩めない。3射目と同時に、魔法障壁が破られた。3本目の矢は『魔族』の脇腹に刺さった。それでも前に進み、斬りつける。その刃がコーダを捉えた。


「ぐうぅ!」


「コーダぁ!くッ、ヤロウ!」


クロスボウを捨てて、刀を抜いた。2本とも。ワシの目の前で、マルタに向かって剣が振り下ろされる。マルタを突き飛ばし、右手の刀で相手の剣を受け流す。左手の刀を下から斬り上げた。『魔族』の右腕が切り落とされる。声ならない悲鳴があがる。が、いつの間にか左腕は蘇生されており、その片腕で、今度はワシに斬りかかる。


「マルタ!この隙にコーダを頼む!」


相手は片腕のはずが、かなりの力があり、若干押され気味だ。ワシも深傷ではないものの、若干手傷を負わされた。そんな中、相手の背後から、エイサムの副長が剣で背中を突いた。身体の表面が硬いのか、大した深傷にはなっていない。


「グァッ‼︎」


それでも相手の動きが鈍る。その瞬間、ワシは相手を交わしてジャンプし、左手の刀を首筋に向けて振り下ろした。


「スパッ!」


硬いはずの相手の身体が2つに分かれる。地面に首が転がった。ミーシャが


「やった‼︎」


「いや、まだだ!近寄るな!マルタ!コーダの状態は⁉︎」


「大丈夫!出血は止まった!死なせないから心配しないで!」


魔族に成り果てた男の身体が頭を探している。普通の人間なら死んでる状態だ。それが動く。なんともおぞましい光景だな。エイサムの副長が歩み寄り、


「私が始末します」


と言いながら、魔族に成り果てた団長の頭を踏みつけ、同時に剣を突き立てた。断末魔の叫びとともに、頭と身体が灰になっていった。

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