7話 僕の勇者様
オレはなんとか
空を飛びながら
城壁にたどり着く。
魔物達は撤退を始めたようだった。
地面に降り立つと
アンナが駆け寄ってくる。
「ザムザ国王陛下!!!!
ご無事でしたか!!!」
「ああ……魔王軍は
撤退を始めたみたいだね」
「魔王軍で
何かあったのですか?」
「ああ、敵の指揮官を
撃ち殺した」
兵士達はざわつく。
驚きと歓喜の声に
溢れかえる。
「旗印からすると
あのメイビスを討ち取ったと?」
「知らん、なんか一つ目の
女の魔物だ」
「そうですか…
大戦果ですね……」
どことなく少し残念そうだった。
「それより陛下、一緒に向かった者達は
どうなりましたか」
そうだ。
喜んでばかりもいられないのだった。
オレが命令した以上、戦死の報告は
しなくてはならない。
オレは頭を下げる。
「すまない、オレ以外の者は
全員戦死した。
立派な最後だった。」
オレは頭を上げると
その瞬間アンナの平手打ちが
飛んでくる。
あまりの事でオレは困惑してしまう。
理解が追いつかない。
周囲もざわついている。
「陛下、アナタは許されたいのですか?」
異常な重圧にオレは何も答えられない。
「陛下、私が職を辞す事になっても
進言しなければならない事が
あります。」
オレはコクリと縦に頭を振る。
「甘えるな!!!
あなたが命令し
実行させた事に対して
許されようと思うな!!!」
「一生背負って生きろ!!!!」
わかってる……
わかってるよ……
痛いくらい理解してるよ…
オレは……
アンナの言葉が
心にズサズサと音を立てて
突き刺さる。
アンナは後ろを向き、すたすたと
遠ざかっていく。
ピタリと足を止める。
「陛下、私は陛下が生きていてくれて
良かったと思っております。」
そして少しだけ
こちらを向いた。
「あなたは我々軍人にとって
希望なのですから」
「私は復旧作業が
ありますのでこれで」
アンナは去っていく。
仕方ない
自分の部下を殺されたのだ。
怒って当然だ。
『おや、ヒメジマちゃんは知らないみたいだねぇ
君を守って死んだコンラッドは
アンナの旦那さんだよ?』
なんだよ、それ?
軍のトップだろ?
なんでアンナは身内を
無謀な作戦に入れたんだよ?
『君を信頼してたからでしょ。
だからアンナは自分が一番信頼した人を
君に預けたんだよ』
『その結果が戦死した上に
許しを乞うように謝られたんじゃあ
ひっぱたかれてもしょうがないんじゃない?』
ーーーーッ
コンラッドの言葉を思い出す。
家族を頼むと言って死んでいった
その顔を。
じゃあ、どうすればよかったんだ。
最善手も打った。
敵だって追い返した。
実績だってあげた。
勝ったじゃないか
やれる事はやったんだ!!
十分だろ!!!!!!
オレは、どうすればよかったんだ!!!!!
『ふふふふふふ♡』
▼
ああ、何もやる気が起きない。
防衛戦から数日が経ち、
オレは王宮の自室に戻ってきていた。
オレの活躍は国中に響き渡っていた。
民衆や軍人の熱狂は凄まじいものだった。
「ザムザ国王陛下、万歳!!!!!」
「凄まじい活躍だったそうですね!!
我々の希望だ!!!」
「まさしく、英雄だ!!!
魔王軍なんて怖くないぞ!!!」
違う、オレはそんなんじゃない。
勝手にお前らの願望を押し付けるな!!!!
コンラッドが死んだ事で
オレとアンナ元帥との
信頼関係にヒビが入ってしまった気がした。
内政官に嫌われ無視されている今
オレの軍との関係性は生命線だ。
なんて事はない。
オレが自分の出した犠牲を甘く見た結果だ。
その事がオレの胸にズシリと乗っかっていた。
『うるさいなぁーーーもう』
ん?どうしたピノ?
『あーーーー、まあいいっか
ザムザがヒメジマちゃんに会いたがってる』
ザムザが…会いたいんだな。
珍しく、ピノが深いため息をつく。
『はー、わかりましたぁ
目を閉じて』
オレは目を閉じると精神世界に入る。
相変わらずの毒々しい空間だが
心なしか茨の棘が小さくなっている
気がする。
「ヒメジマさん……」
そこにはザムザがいた。
「なんかオレを呼んでたみたいだな
どうした?」
「なんか、落ち込んでたみたいだから
その……励ましたくて」
なんだ、心配してくれてたのか…
「少しは理解してくれたかな?
僕の痛みは?」
オレはザムザの言葉を思い出す。
((父様は死んで、勝手に国王に
祭り上げられて民衆は勝手に偶像を作って
貴族達は僕を好き勝手に利用して))
((僕の大切な人も僕の名前を使って
殺されていく。
もう嫌なんだよ!!!!!!!!))
「そう…か、お前は…
今のオレの苦しみを何度も
味わってきたのか……」
「ヒメジマさん
ずっと、ここから見てたよ」
「すごいじゃない!
僕にはきっとあんな選択はできないよ!」
「あ…あ……ああ」
「あなたは間違ってない」
「皆、好き勝手に言う。
自分の都合で。
人の事なんてわからないだから」
「だから、受け入れたい言葉だけ
受け入れて進んでいけばいい」
「立ち止まってるのなんて
あなたに似合わないよ。
ヒメジマさん」
オレの心の氷がザムザの
言葉で溶けていく。
「優しくて、暴虐非道で
正義感が強くて熱血漢で
決断力と行動で現実をぶち壊していく」
「ヒメジマさんはそんな人でしょ?」
「は、何だよ、オレのお前からの
評価、無茶苦茶じゃねぇか」
「けど、それでこそ僕の勇者様だ」
「……そうだったな」
オレは踵を返す。
「戻るよ、やらなきゃいけない事が
山ほどあるんだ」
「ありがとうよ」
ザムザはニコリと笑う。
「最後にひとつだけ。」
「ピノには気をつけて。
彼女はヒメジマさんを不幸にする」
「えっ」
その瞬間オレは
元の部屋に戻された。
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