ジョルダーノ山
サージュとイーシャは港町ルッカ(Lukka)を訪れた。
すぐにでも船に乗りたかったが、まずは旅の資金を稼ぐべく、冒険者協会にやって来た。
久しぶりの協会だった。
依頼票を見ると、「ヒノカの花」を採集する仕事があった。
「これにするか……ヒノカの花採集」
「ねえ、サージュ。ジョルダーノ山の頂に生えているって書いてあるわね。それに魔獣がいるとも」
「ああ、俺たち向きの仕事だな。これにしよう」
「あの……」
「? どうかしましたか?」
「ヒノカの花の採集をしていただけるんですか?」
「はい、そうですけれど……」
そこには黒く長い髪をし、緑のドレスを着た女性が立っていた。
年齢は20歳くらいだろうか。
「よかったです。その依頼の主は私なんです。私はエリザベッタ(Elisabetta)といいます。ルッカの町で教師をしています」
「俺はサージュです。はじめまして」
「私はイーシャです。はじめまして」
「そんなにこの依頼は人気がなかったんですか?」
「はい、危険なあげく、山の頂上にあるようでは……ましてや魔物と100パーセント遭遇するような依頼は誰も受けたがらなくて……お願いします。ぜひともこの依頼を受けてくださいませんか?」
エリザベッタはすがるように。
「はい、いいですよ。でもどうしてこの花を? 別な花じゃダメなんですか?」
「それは……故人の好きだった花なんです……私の恋人だった人の……」
「そうなんですか……暗いことを聞いてしまいましたね……」
「いえ、お気になさらずに。それではお願いします」
そう言うとエリザベッタは去っていった。
「ねえ、サージュ。ぜひともこの依頼を受けましょう!」
「そうだな。俺もそう思ったところだ」
ジョルダーノ山――
ジョルダーノ山はルッカ近郊の山である。
標高は千メートルで山道はけわしかった。
「ふいー! けわしい道だな! イーシャ、大丈夫か?」
「ええ、私は大丈夫よ!」
「これは明日、足腰が痛くなりそうだな。ほら、イーシャ!」
サージュがイーシャの前に手を出した。
イーシャはほおを赤らめつつ。
「ありがとう、サージュ」
二人はやっとのことで山頂に到着した。
「ふうううう! 山頂は涼しいわね。それに空気が澄んでいるわ」
イーシャがのびをした。
サージュはヒノカの花を見つけた。
「あれは花が黄色い……それに五角形の形をしている。間違いない。依頼票にあった情報と一致する! あれがヒノカの花だ!」
サージュが花を取りに行こうとすると、一匹の大型モンスターが現れた。
「サージュ、敵よ!」
「ああ! こいつが依頼票に書かれていた魔獣オージュ(Oojhu)に違いない。どうやら植物系モンスターのようだな」
サージュは剣を構えた。
イーシャはワンドを出した。
「イーシャ、俺がおとりにいなるから氷の魔法でオージュを攻撃してくれ!」
「わかったわ!」
イーシャは魔法の詠唱に入った。
サージュは剣でオージュを攻撃した。
「くうっ! 硬いな!」
オージュは鞭のような両腕でサージュを攻撃してきた。
腕の先には爪がついていた。
当たったら痛そうだ。
サージュは剣でそれを払いのける。
「はっ!」
サージュは剣でさらにオージュを斬りつける。
オージュに傷がついた。
オージュは怒り狂った。
両手を交差させ、かぎづめで攻撃してくる。
「おっと!」
サージュは後退した。
オージュが攻撃をすかる。
「いいわ! サージュ、離れて!」
サージュはイーシャの隣まで下がった。
「くらいなさい! 多連・氷結槍!」
氷の槍が次々とオージュに突き刺さる。
オージュの体から緑の血が流れた。
「今だ! 決める!」
サージュは聖剣シャイネードに魔力を注ぎ込み、切れ味を鋭くした。
そして、強力な斬撃を放った。
オージュは一刀両断にされた。
「グギョオオオオオオオオ!?」
オージュは絶命した。
「よし、討伐できたな!」
「じゃあ、サージュ、お花を包みましょうか」
「そうだな」
サージュは慎重に花を根元から引き抜いた。
サージュとイーシャはルッカに戻った。